米津玄師、ソフトバンクCM起用でさらに国民的アーティストへ 「Lemon」に宿る普遍性と新しさ

 「Lemon」を聴くと、その質の高さに改めて驚かされる。豊かな叙情性と憂いを感じさせるメロディライン、一瞬のギターカッティングの直後に放たれるサビの解放感。生々しいバンドグルーヴ、壮大なストリングスサウンドを軸にしながら、現行のR&B、ヒップホップの要素を隠し味的に加えたアレンジ、そして、大切な人との悲しい別れを“今でもあなたはわたしの光”というラインに結びつけた歌詞。「傷ついた人たちを優しく包み込むような曲」(YouTubeで公開された特別ネット番組『米津玄師と、Lemon。』の発言)をテーマに制作され、幅広いポップネスとディープな音楽性がひとつになった「Lemon」が老若男女のリスナーに受け入れられたことは、きわめて当然のことだったのだろう。蛇足かもしれないが、カッティングエッジな才能を持ったアーティストが大衆性を獲得したという意味で、米津のキャリアにおいて「Lemon」は、サザンオールスターズの「いとしのエリー」と同じような役割を果たすと思う。

 10月27〜28日には初の幕張メッセ公演『米津玄師 2018 LIVE / Flamingo』を開催する米津玄師。最近はテレビで取り上げられることも増えており、その知名度はさらに上がっている。YouTuberに夢中になっている世代からコアな洋楽を追いかけている音楽ファン、ごく一般的なJ-POPユーザー、40代以上の(新しい音楽に疎くなっている)リスナーまでを巻き込でいる米津はここから、国民的なアーティストになっていくはず。エッジの効いた表現を追求しつつ、お茶の間レベルにまで届けることを諦めない米津の存在は、やはり特別だ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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