北野創の新譜キュレーション 第4回
新田目翔、ハヤシケイ、タナカ零、sajou no hana…2018年夏クール注目のアニソン作家4名
次にピックアップするのは、可愛らしい絵柄に反したシュールなギャグセンスで注目を集める今期のダークホース的アニメ『あそびあそばせ』(TOKYO MXほか)のOPテーマ「スリピス」を制作したタナカ零です。と言いつつ、正直この作家がどういった人物なのかは、調べてみてもわからなかったのですが……。ただ、過去の仕事ぶりを含め、並々ならぬ才能と異質感を感じるので、とりあえず自分が知ってる限りのことを紹介します。自分が彼の楽曲に最初に触れたのは、花谷麻妃が2016年に発表したシングル『だって、ギュってして。』(『くまみこ』OPテーマ)のカップリング曲にて。本作には当時14歳だった花谷に合わせてか、森昌子のヒット曲「中学三年生」のカバーが収録されているのですが、タナカはこの楽曲をなんとフォークトロニカ調にアレンジ。もう1曲のオリジナル曲「梔子リアリー」も作詞/作曲/編曲してるのですが、こちらもALI PROJECT的なセンスを感じさせるプログレッシブな電子ゴシック曲でインパクト大でした。
その次に彼の名前を見たのは、同じく2016年のこと。TVアニメ『ブブキ・ブランキ 星の巨人』より種臣静流(CV:小松未可子)が歌うEDテーマ「so beautiful ;- )」に作詞家としてクレジットされていました(作曲/編曲を手がけたのはfu_mou)。ですが、その異才ぶりを改めて感じたのは、同シングルのカップリングに収められた「流路」。かつてのニルス・ペッター・モルヴェル周辺を想起させるエレクトロニックなジャズアンサンブルが次々と変幻していくサウンドに、小松の凛とした声が泳ぐ様子には衝撃を覚えたものです。
そして今回の『あそびあそばせ』のOPテーマ「スリピス」。本田華子(CV:木野日菜)、オリヴィア(CV:長江里加)、野村香純(CV:小原好美)のメインキャラ3人が歌うこの楽曲、前述のワークスとは趣きを変えて、室内楽的なアンサンブルをメインに据えた流麗なサウンドで構築されていますが、陽だまりのように眩いイントロからAメロで急激にトーンを落とす展開は、まるで主人公の少女たちの気まぐれ具合を表すかのよう。ポストロックとオーケストラルポップを融合したような異色のキャラクターソングに仕上がっています。タナカ零、何者なのかはよくわかりませんが要チェックです。