『どついたるねん』インタビュー
どついたるねんが語る、ロックバンドとしての独自のあり方「僕ら全員、過剰なものが好きなんです」
異常性がいい(先輩)
ーー浜さんは、大学でジャズをやられていたんですよね。そういう人が、銀杏BOYZやハードコアを聴いてきた人と一緒にバンドをやる。それって、傍目から見たら珍しいことだったりもすると思うんですけど。
浜 公氣:僕は、ジャズ研にいたときはジャズのプレイリストを聴くか、ラッパーの5lackを聴くか、みたいな感じで、偏って音楽を聴いていたんですけど、そのときにたまたまYouTubeで、どつのライブ動画を見たんですよね。そこで、歌詞もなに言っているかわからなったけど、かっこいいなと。僕は服も好きだったので、服装も奇抜で、めちゃくちゃお洒落だなって思ったんです。それで、SUMMIT(SIMI LAB、PUNPEEら所属のレーベル)のイベントに行ったときに、たまたまお二人(ワトソンと先輩)がいたので、勇気を出して話しかけたら、「1週間後のライブでドラムやってください」って言われて(笑)。
ーーははははは(笑)。
浜 公氣:まぁ、きっかけはそんな感じだったんですけど、感覚としては、普遍的なものだったと思うんですよね。面白いと思った人のことを知りたいと思ったし、近づきたいと思ったっていう。
ーー先ほどワトソンさんは「ずっとお茶している感覚」とおっしゃっていましたけど、どついたるねんは結成からすでに10年の月日が流れているわけですよね。10年間、友達とお茶をし続けるっていうのも、すごく難しいことのように思えるのですが。
先輩:さすがに10年間、お茶だけ飲んでいたらヤバいですよね(笑)。
DaBass:まぁ、合間合間にドーピングを打ってきた感覚もあるんですよね。ずっとお茶だけし続けるのは、それはそれでキツいから、時々、注射も一緒にやっている、というか(笑)。
先輩:そうだね。全国ツアーとか、アメリカツアーとか。あれは注射ですね。
ワトソン:この間のBLITZワンマンもデカい注射だったから、その注射に耐えられる体を作るために、毎日練習に入ったし。でも、お茶感覚で注射打っていたら、体がヤラれちゃうから。
先輩:活動期間が短いバンドは毎日注射でもいいのかもしれないけど、僕らはそうではないので。
ーードーピングをしてまで、皆さんがバンドを長く続けたいと思うのは何故なんですか?
先輩:さすがにこの歳で、6人の男ががん首揃えて一緒にいるって、あんまりないじゃないですか。その異常性がいいんじゃないですか(笑)。
ワトソン:その異常さを示したくて、今回のアルバムは、このジャケットにしたっていうのもあるんですよ。本当は、女性メンバーが一人くらいいたほうがまろやかになるだろうし、そういうバンドも多いと思うんですけど、俺らは男同士で10年間、毎日、お茶し続けてきたっていう。「これ、ヤベぇだろ?」っていう感じは出したかった。
山ちゃん:初期の頃は、全員下手くそなのに1時間ぐらいずっとセッションして、それで「さぁ、呑みに行くか」みたいなことを繰り返していましたからね。そこから始まったものが、10年間続いているっていう(笑)。
DaBass:最初にベースで呼ばれたとき、「なにこれ?」とは思いましたからね(笑)。ウエストポーチにドバドバと日本酒入れられたりして。それで、下北沢のヴィレバンの前でジーパン脱がされて、全裸で寝たり。
先輩:全裸で「雨に唄えば」踊ったり(笑)。
ーーその状況は、どれだけ言語化しても読者には伝わらない気がします……。
ワトソン:まぁ、それもセッションのうちなんです。
ーー……なるほど。たとえば、NEU!やCanのように、一定のビートやフレーズを反復してくことによって、異様なカタルシスをもたらす音楽ってあるじゃないですか。ああいうクラウトロックが持つ「反復」の作用って、ロックンロールが辿り着いたひとつの彼岸だと思うんですよ。10年間、友達とお茶をし続けてきたどついたるねんというバンドは、それを存在そのもので体現しているような気も……なんとなくですけど、します。
山ちゃん:俺たちは彼岸から生まれたのか(笑)。
ワトソン:でも、わかりますよ。詳しくはないですけど、そういう音楽は好きですから。
先輩:This Heatとかね。
ーーあと、もうひとつ言うと、2003~2004年くらい、銀杏BOYZが活動を始めた頃、峯田(和伸)さんがブログでずっとメンバーとの日常を書き綴っていたじゃないですか。毎日レコーディングをして、くだらない罰ゲームをやって、レコード聴いてっていう。『恋と退屈』で書籍化された、あの頃の感覚を実践している感じもありますよね。
ワトソン:そうですね。ぶっちゃけ、あれをそのままやっているっていう感じはありますよ。峯田さんが「楽器ができなくてもバンドが組める」って言っていたのを、「そうなんだ!」って、若いから鵜呑みにして。100パーセント真実かどうかはわからないけど、それに影響されて、メンバーともそういうふうにコミュニケーションをしてきたっていう。でも、銀杏BOYZがアルバムを出さなくなった時期があったじゃないですか。
ーー2006~2013年くらいの間ですよね。
ワトソン:その間に、一緒に銀杏を好きだったはずの奴らも、急にオザケンみたいになったりして。オザケンはいいんですけど(笑)、でも、そういう変わっていった連中をサムいなって思って、キレていた時期もあって。俺は「まだまだ突き詰めるっしょ」って思っていました。
ーー銀杏BOYZの、あのモラトリアム的な部分を突き詰めようっていうのは、すごい覚悟のようにも思えるんですよね。実際、銀杏BOYZですら、そこに居続けることはできなかったわけだから。
ワトソン:まぁ、俺は峯田さんみたいに一人で何かできる人間ではないですからね。
ーー今回、「BOY」のサビで<子供じゃない 大人>と繰り返し歌いますよね。でも、そう歌う曲が「BOY」と名付けられているのは、とても象徴的だと思いました。大人だけど「BOY」で居続けるっていう。今回のアルバムって、そういう「BOY感」を、これまで以上に明確に打ち出している気がするんですよね。
山ちゃん:前に峯田さんに会ったとき、「中学生の股間に訴えかける曲を作れ」って言われたんですよね。俺は「そうですよね」って思ったんですけど、だから今回のアルバムはちょっと変わったのかなっていう気もします。
ーー銀杏BOYZって、若者をたぶらかすロックスターとしての役割も結果的に引き受けていた部分もあると思うんですよ。自分たちも同じように世の中を巻き込んでいきたい、という気持ちがそこにある、と言えますか?
先輩:それはないです。それは、僕らにはできないんじゃないですかね。
ワトソン:うん、それはおこがましいですね。もちろん、若いお客さんが来てくれたらめちゃくちゃ嬉しいですけど、でも俺たち自身は、仲いいやつらで楽しくやることで精一杯というか。
ーーじゃあ、いま、どついたるねんのライブに来たり、音源を手に取る人たちは何を求めているんだと、ご自分たちでは思いますか?
先輩:元気になりたいんじゃないですかね。だから……注射?
山ちゃん:音楽における、にんにく注射(笑)。
ーーこれ、締めでも大丈夫ですか?
先輩:はい、綺麗に締まりましたね。どついたるねんは、あなたのにんにく注射になりたい(笑)。
(取材・文=天野史彬)
■リリース情報『どついたるねん』
発売:2018年3月28日(水)
価格:¥2,500
〈収録曲〉
1.ストレッチ
2.精神
3.R☆
4.ポジ男
5.返信
6.danjil
7.BOY
8.ハッピーバースデー
9.I♡リーダー
10.アイスクリーム
11.口くさマシンガントーク
12.いきなり三男坊
13.救い主
14.さっきもいた人
15.若者のすべて
■ライブ情報
『どついたるねん 「ブリブリスプリングマウンテンツアー」』
5月24日(木) 宮城・仙台enn3rd
出演:どついたるねん / Alfred Beach Sandal
5月25日(金) 山形・山形RAF-REC
出演:どついたるねん / 原田晃行
5月26日(土) 青森・青森SUBLIME
出演:どついたるねん / 原田晃行
5月27日(日) 北海道・札幌SOUNDCRUE
出演:どついたるねん / 柴田聡子 in FIRE
6月8日(金) 新潟・新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
出演:どついたるねん / 台風クラブ
6月9日(土) 石川・金沢メロメロポッチ
出演:どついたるねん / 大野悠紀 / 台風クラブ
6月10日(日) 愛知・金山ブラジルコーヒー
出演:どついたるねん / 大野悠紀 / O.A.角田波健太
6月15日(金) 福岡・天神The Voodoo Lounge
出演:どついたるねん / Enjoy Music Club
6月16日(土) 島根・大根島HOME
出演:どついたるねん / ロンリー
6月17日(日) 岡山・岡山PEPPERLAND
出演:どついたるねん / ロンリー
6月29日(金) 大阪・十三FANDANGO
出演:どついたるねん / ザ・たこさん
6月30日(土) 長野・松本MOLE HALL
出演:どついたるねん / ミツメ
7月1日(日) 静岡・静岡Sunash
出演:どついたるねん / シャムキャッツ
7月19日(木) ファイナル at 代官山UNIT
出演:どついたるねん / 片想い / O.A.徳利 / DJトクマルシューゴ
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