爆弾ジョニー、全て出しきった全21本全国ツアー追加公演「うんこ」 石井恵梨子が渾身のレポート

爆弾ジョニー全部出し切った追加公演

 飛んだ。まるで漫画の世界から飛び出してくるみたいに。

 フロアとステージの差は約1メートル。ステージ上に置かれたモニタースピーカーが約30センチ。その高低差に躊躇することなく、りょーめー(Vo&Gt)は鮮やかなジャンプを繰り返していた。冷静に考えれば130センチで怪我をする人は少なく、慎重にやれば誰でもできることだと思う。だけどライブ中の突発的な跳躍は、まったくもってミラクル! ……のように見えた。

 そして今、私の手元には奇妙なアルミ缶が残されている。ビールの空き缶を潰して切断し、中に豆だかビーズだかを詰め、怪我のないよう切り口を派手なガムテープで巻いたもの。帰宅した部屋ではゴミと化しているが、ステージ上からばらまかれた時、それは素敵なマラカスのように見えた。全員で手製のマラカスを振りながら音楽に酔いしれた時間もまた、ミラクルのひとつだった。

 全国21箇所を回るツアー『太陽はまた昇るか。』の追加公演「うんこ」。ネーミングの馬鹿馬鹿しさもさることながら、でっかいうんこの絵がステージ後幕に掲げられているアホらしさはどうだ。これ、真面目に作ったのか。そしてまた、フロアの真ん中に柵が組まれ、ドラムセットが鎮座しているセッティングも変。なぜかといえば、まぁチケットが完売しなかった、このままじゃフロアが寂しく見えてしまうという理由なのだろうが、そのセットに「タイチサンダー・3Dフォーメーション」と大層な名前をつけてしまうセンスが最高だ。苦肉の策をかっこよさげに見せちゃうのか。これもたぶん広義でミラクル。そう、「ミラクル」という言葉には、奇跡だけでなく、驚くべきもの、不思議なもの、という意味がある。

 天才的な技術や常人離れした肉体があるわけじゃない。ちょっと気合を入れればできること。もしくは皆でアイデアを出し合えば可能なこと。「これ意味あんの?」と言い出す人が一人でもいたら即座に白けてしまうが、全員が「マジで楽しいんじゃね?」と熱中しているうちは最高の充実感が得られる。下手すりゃ一生の思い出にもなるだろう。世の中の学園祭とはそういうものだと思うが、爆弾ジョニーがやっているのはまさにそれ。昔が高校のおバカな学園祭。今は大人の、本気の学園祭である。

 活動休止からの復活。しばらくは音楽的な充実を求め、学祭ノリから遠ざかっていた彼らのことは以前の記事で書いた。昨年の12月には一度キャンセルしたZepp Tokyoのステージに立ち、新作EP『クレイジービートラリアット』の収録曲、さらには未発表の新曲も披露。今後は安定した活動が続くのだと思っていた。実際、彼らの2018年はバンド史上最長のワンマンツアーから始まったのだが、どこで何がひっくり返ったのだろう。学祭エンジンがフルスロットルで回っていた。昔に戻るのではなく、2018年仕様に進化した状態で。

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