中川悠介が語る、10周年迎えたアソビシステムへの危機感と“変化の重要性”

中川悠介が語る、10周年迎えたアソビシステムへの危機感と“変化の重要性”

 音楽文化を取り巻く環境についてフォーカスし、キーパーソンに今後のあり方を聞くインタビューシリーズ。第8回目に登場するのは、アソビシステム株式会社 代表取締役社長 中川悠介氏。中川氏は学生時代からイベント運営に携わり、2007年にアソビシステムを設立。原宿を拠点とする青文字系カルチャーの生みの親であり、KAWAiiカルチャーのアイコン、きゃりーぱみゅぱみゅを中田ヤスタカとともに世に送り出した。海外戦略にも積極的であり、『もしもしにっぽん』プロジェクトでは、日本のポップカルチャーを世界へ向け発信すると同時に、国内におけるインバウンド施策も精力的に行っている。近年、青文字ファッション誌の相次ぐ休刊、CDからストリーミングへ音楽シーンのインフラが変わろうとしているなか、初のオーディションを開催するなど、次の10年に向けて攻めの姿勢を見せるアソビシステムのマネジメント運営の理念と方法論を訊いた。(ふくりゅう)

「自分たちが思っている自分たちじゃなくなった」

――アソビシステムが昨年創立10周年を迎えました。時代の流れも変わりつつある中で、原宿カルチャーの中心にいる中川さんは、昨今のティーンカルチャーをどう見ていますか?

中川悠介(以下、中川):そうですね。少し前ってマスメディアが強くて、雑誌も100万部、CDも100万枚売れるのががあたりまえだったじゃないですか。でも、今は変わってきていて。ヒットの指標が数じゃなくなってきてると思うんですね。僕らが目指してるのは、質の高いマイクロコミュニティ。ちっちゃいカルチャーをいかにたくさん作っていけるかがテーマだと思っていて。ちなみに、この雑誌『NIL』ってうちが出してるんですよ。(参考:http://nil-mag.com )

 表紙もなんですけど、登場しているのっていわゆるアソビシステム所属の子ばかりではなくて。なんのためにやってるかって言われたら、マイクロカルチャーを作っていくための雑誌なんです。そういうオープンな感覚って大事で。「『Zipper』が休刊になったら青文字系って下火だよね」っていうのが世間一般のご意見だと思うんですよ。でも、『Zipper』がなくなっても原宿はあるし、原宿カルチャーは続いているし。そこには人がいるのは変わらなくて。

――確かにそうですよね。そもそも、ユースカルチャーは変わり続けていくものだと思います。

中川:音楽もそうだと思っていて。ヒットソングの定義としても、別に国民の9割が知ってる曲でなくてもいいじゃないですか。音楽でもカルチャーでも、そんな時代になってきていると思うんです。マイクロコミュニティの中で生まれる多様性あるカルチャーを作って、それを広げていけばいいんじゃないかなって。でも、形に残る雑誌やCDは大事だと思っていて。無くしちゃいけないなって思うんですよ。

――10周年を迎えて、会社はどのように変わったと感じますか。

中川:今までのアソビシステムは、自然発生的に集まった人たちで運営してきました。中田ヤスタカともクラブで出会って、呑みながらイベントを作ったり、ご飯を食べながら仕事の話をしたりしてきました。きゃりー(ぱみゅぱみゅ)も、うちのイベントに出ていた流れですから。そんな10年だったんです。でも、10年経って気づいたら自分たちが若手じゃなくなったという。自分たちが思っている自分たちじゃなくなったなと感じていて。

――10周年を祝うというよりも、危機感が先に立っていたんですね。

中川:会社の規模もそんなに大きくないし、変わらずワイワイやってるんですけど。周りからの評価や見られ方には変化があるのかなって思うようになりましたね。

――なるほど。現在開催中のアソビシステム初の試みとなる全国オーディション『ASOBISYSTEM THE AUDITION 2018』は、どんなイメージなんですか?

中川:いままでアソビシステムとして、オーディションをやってこなかったんです。それもあって、どんな人が集まるんだろうっていうのが楽しみで。「こういう子が欲しい!」じゃなくて、集まってきた子たちから何か新しいことが生まれたら楽しいぞって。だから、きゃりーみたいな子じゃなくていいんです。よく妹分コンテストとかあるじゃないですか。そういうのはまったく興味なくて。

――では、どんな人に来てほしいんですか?

中川:ふわっとしています(笑)。たとえば要項で「こんな子を募集!」っていうのはないんです。アソビシステムのオーディションを気にしてくれた、アーティスト、モデル、ダンサー、トラックメーカーなどなら誰でも、みたいな。今ってマルチSNS対応な時代じゃないですか。インスタも動画メディアも、どこで何がくるかなんてわからないですから。なので、YouTuberを集めたいわけじゃないけど、オーディションで入ってくれた子がたとえばYouTuberになってもいいと思うし。そんな感覚ですね。

――あらゆる時代の動きに対応できるように、ということですね。

中川:そうですね、ゴールを作らないようにはしたいです。たぶん、きゃりーだってそうだったと思うんですよ。いわゆるYouTuberっていう言葉が生まれる前にYouTubeでヒットして。しかも、海外への窓口も生まれて。それは、すごく大きな経験だったなと思っています。

――2010年代を代表するアーティストとなりましたからね。

中川:自然発生的にやってきたことなんですよ。狙ってできたことじゃないと思っていて。きゃりーの新たなシングルである「きみのみかた」のリリースだって、大人っぽくなったことを狙っているわけではないんです。きゃりーはアイドルじゃないですし、本人がそういう趣向になってきただけなんで。きゃりーは“アイコン”なんですよ。僕らとしても、本人の意見を大事にしている、パートナーみたいな存在になれたらと思っていて。それもあって、今回のオーディションも自然発生的という要素にはこだわってますね。

きゃりーぱみゅぱみゅ – きみのみかた , KYARY PAMYU PAMYU – Kimino Mikata

――場を自分たちで率先して作っていくことって大事ですよね。

中川:そうですね。結局、リアルな体験と場所だと思うんですよ。そこが一番大事だと僕たちは思っていて。雑誌もイベントも発信の場所として大事で。人っていうものもある意味発信の場所だと思うんですよ。そういうのを大切にサポートしていくのがアソビシステムにとって大切だと思っています。

――それこそ体験でいうと、設立10周年を記念した全国クラブツアー『ASOBITOURS!!!』もありますよね。地方在住であっても、そこから刺激を受けたり自己表現を広げていく子もいそうですよね。

中川:そうですね。ちょうど先日、7年ぶりに香川県のクラブnudeに行ったんです。かつて、CAPSULEのツアーで行ったところで。そこのオーナーと喋ったんですけど、自分たちがやり続けるべきことと、新しく進化するべきことはあるなと感じて。自分たちがいる場所、クラブも原宿も音楽もファッションも好きなんで。好きなことを体現していったアソビシステムなんです。自分たちの成長を喜んでくれる方が全国にいて嬉しかったんです。イベント文化は、自分たちの原点だし。全国を回れるのはありがたいことだなって思ってます。イベントは自分たちの原点なので。

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