ROTH BART BARONがUKの音楽文化にふれて手にしたもの 「チャンネルが一つ増えた感覚」

ROTH BART BARON、UKの体験

「大きいところでも届くような音にしようという意識がより強くなった」(中原)

ーーそして新曲の「dying for」。これはUK行きが決まってから作った曲なのでしょうか。

三船:曲は結構前からピアノのフレーズだけがありました。今回は1ヶ月くらい向こうにいたんですけど、そのなかでやっぱり新しい曲もレコーディングしたいと思って。スタッフが気を利かせてくれて、自宅スタジオを持っているThe HEAVYのトビー・マクラレン(Key)を紹介してくれたんです。偶然フジロックでThe Heavyのライブを見ていたこともあって意気投合して。トビーとはスタジオの前のカフェで「こんな曲が作りたいんだよね」と話して、実際にスタジオで聴いてもらったり、一緒にセッションしながらレコーディングしたり。横にはDaughterが録ったもう少し大きいスタジオもあったんですけど、「予約していた若いバンドがドラッグのやり過ぎでキャンセルになったから貸してあげる」と言われて急遽使えるようになったのもラッキーでした。そのなかでこの曲ができあがって、実際にイギリスでトライするビジョンが見えたような気がしたんです。

三船(左)、中原(右)とトビー・マクラレン(写真中央)(撮影=SLEEPERS FILM)。

ーー音色はUKっぽいというよりは、もっとワールドワイドな印象です。良い意味でポップスとしての完成度を持った、大きなスケールの楽曲というか。最初に目指していたところと実際に出来た曲には、どれだけ差がありましたか?

三船:自分一人で完結しないで、色んな人のアイデアを聞きながら予想外のところに転がるのって、バンドをやっている醍醐味だと思うんですよ。僕自身も自分自身を信用しない所があるから、ビジョンがあってたどり着きたいことがあっても、人の手を介して広がるものになっていくほうが好きなんです。日本でデモを作っているころは『セサミ・ストリート』みたいな曲だと思っていたんですけど、UKに持っていくことになって「全然『セサミ・ストリート』じゃないじゃん」と(笑)。幸いトビーも鍵盤奏者だったから、この音色にハマってくれて、おもちゃ箱をひっくり返した感じでレイヤーが重なって、エレクトリックなものと有機的なものがバランス良く保たれた音になって。最終的にそれをブラッドリーがミックスしたら、もっと違うものに化けました。

中原:トビーもアイデアをどんどん出してくれて。いい意味で自分で想像していたものからはどんどん離れていって、目まぐるしく変化したという印象です。

レコーディング中の三船(左)とトビー・マクラレン(右)(撮影=SLEEPERS FILM)。

ーー結果的に、色んな人の視点を介するからこそ、多くの人に響くものになっていると思いますよ。

三船:シンプルだけど情報量が多い曲になっていると思います。あと、1曲のためだけに何かをするというのも良い経験でした。

ーー今回のUK行きを通して、それぞれの価値感に変化はありましたか?

中原:6月に帰国してから、音源を踏まえてライブでの意識は大きく変化しました。ロンドンで実際にライブをやって、視野が広くなったというか。大きいところでも届くような音にしようという意識がより強くなりましたね。フジロックみたいな場所もそうですし、見せ方も含め一番後ろの人まで届くにはどうしたらいいかを考えるようになったんです。

レコーディング中の中原(撮影=SLEEPERS FILM)。

三船:僕は……何かが変わったなんてまだ言えなくて。まだ実感が湧いてないというか。何かは変わっているはずで、バンドをやっているなかでアメリカもカナダもイギリスにも行けたし、そこでいろんな刺激を受けたけど、自分そのものはあまり変わってないというか。色んなアングルで自分を見ることで、自分というものを理解できたり、日本人であることを意識せざるを得なくなってきたりとか、多様性が進んでいるイギリスのロンドンで音を鳴らしていることも大きく影響は受けているとは思います。チャンネルが一つ増えたという感覚かもしれません。

ーーチャンネルが増えた?

三船:自分の中にテレビがあるとして、アメリカチャンネルや日本チャンネルとか今まで作ってきた音楽が流れているチャンネルが延々と再生されているんですけど、そこにUKというチャンネルが加わった感じ。それが同時に10本くらいの映像として流れているというか。次に僕らが作品を出すまでに、ヨーロッパだけ知らないというのは嫌だったし、そのチャンネルを増やしてからじゃないと次に踏み出せないという気持ちがあったので、変わるつもりで行ってはいるんですよね。そこが根本にはあったかもしれない。

レコーディング中の三船(撮影=SLEEPERS FILM)。

ーー「そこがターニングポイントになって180度人生が変わりました」じゃなくても良くて、今回の旅を通して選択肢が増えたという、言葉にしてしまえばそれだけではあるけど大きな変化なわけで。

三船:「イギリスの人たちはこうやったら喜んでくれる」というのがわかるようになったというか。実際に行ったし、会ったし、壁に触ったし、歩いて空気の匂いも知っている。僕は自分が体験したことと、空想上のものという両方の感覚を持っていたいんです。妄想だけでなんとかするのも格好いいと思うんですけど、ずっと知らないものがあってほしいですし。

(撮影=林直幸)

ーー11月9日には新代田FEVERでの単独公演『dying for』も開催されます。先日の『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』ではバンド史上初の10人編成を経験済ですが、今回のライブはどうなる予定ですか?

三船:ライジングサンでは光栄にもBOHEMIAN GARDENステージの最後を任せていただいて。悪天候もあって電池が切れそうになりながらみんな踊っていて、僕らもそれに対して全力を出し切った感覚がありました。演奏したメンバーもいい顔をしていたのは印象的だし、すごく特別なステージだったと思います。11月9日の『dying for』では、元・森は生きているの岡田拓郎くんが参加してくれることにもなっています。向こうで経験したことを踏まえて、新しいアイデアも色々取り入れたいし、今、絶賛作っている新しい曲も何曲か演奏したいなあ、と。自分でもどうなるのか予想ができなくてワクワクしています。

(取材・文=中村拓海)

■リリース情報
『ATOM(UK mix)』 『Demian(UK mix)』『dying for』
Apple Music、Spotifyほかで配信中

■ライブ情報
『ROTH BART BARON EP release party "dying for”』
日程:11月9日(木)
会場:新代田FEVER
開場:18時30分 開演:19時30分
チケット:前売り ¥3,000(別途ドリンク代)
ゲストメンバー:岡田拓郎 (ex : 森は生きている)

詳細はこちら

■イベント出演
『朝霧 JAM』@富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
日程:10月8日(日)
詳細はこちら

『noid presents "Magical Colors Night in Tokyo”』@新代田FEVER
10月21日(土)
開場:16時30分 開演:17時
チケット:前売り ¥3,000(別途ドリンク代)
出演:noid、UQiYO、王舟
詳細はこちら

■関連リンク
ROTH BART BARON オフィシャルサイト
ROTH BART BARON Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる