『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』特集第6弾
ceroが考える“都市と音楽の未来” 「今は『オルタナティヴ』な音楽って成立しにくい」
「間違って買ったハズレのCDが、いい意味での『異物』になる」(荒内)
ーー3年後は東京オリンピックも開催されますけど、意識することはあります?
高城:2013年、開催地が東京になったという発表があり、そのすぐあとに僕らリキッドルームでライブがあって。確かMCで、オリンピックの話をしたんですよ。はっぴいえんどが『風街ろまん』を出した頃って、東京オリンピック前夜のムードを、音楽で立ち上らせるというテーマがあったらしく。それを今の気分と重ね合わせながら、「ここから東京はすごく変わっていくだろう」と思った。そんな中、自分たちはどんな風に音楽を鳴らすべきなのかを、より一層考えなきゃいけないみたいな。割と大きいことを言った覚えがあります(笑)。あれから4年が経ち、街を見渡してみるとやっぱり変わってきてる。いよいよ近づいてきてるんだなと思いますね。「待ち遠しい」というよりは危惧することのほうが多いですが。
ーー「音楽の未来」というテーマについては、何か思うところはありますか?
荒内:今の若いミュージシャン、それこそ昨年出演していたD.A.N.とかすごく早熟ですよね。色んなことを知ってる。それってインターネットの力がかなり大きいのかなって思います。例えば古着屋とか、俺らが10代の頃は、どの店がイケてて、どの店がダメか、行ってみないと分からなかったじゃないですか。「あ、ここダメだったな」とかそういう失敗の積み重ねで、だんだん経験値が上がっていくというか。でも彼らはSNSで情報を集めて、「あ、ここがイケてるんだな」みたいに効率よく情報を集めてる。そうやって、若いうちから良質なものをどんどん取り入れて作っていく音楽は、どうなっていくんだろう、と。
ーーなるほど。そういう意味では、若い世代の方がより「純化」しているというか、「結晶化」している気がしますよね。
荒内:そうですね。ただ、効率よく情報が集められる反面、みんなの持つ情報が似てきてしまう、という側面もある。間違って買っちゃったようなハズレのCDに、意外と俺たちは影響を受けていたりして、それがいい意味での「異物」になっていたりするじゃないですか。そういう感覚は、もしかしたら僕らの代で終わりかもしれない。
ーー「なんだこれ、全然良くないけど、買っちゃったからとりあえず聴くか」なんて思って聴いているうちに好きになっちゃって。
荒内:そうそう(笑)。知らないうちにそれに影響を受けていたりしますからね。もちろん、どちらの音楽が良い悪いじゃなくて、どんどん洗練されていく若い人たちが純化されていく先の音楽もとても楽しみですね。
高城:そういう意味でも今回のイベントは、すごくいいメンツですよね。直近で見たのはSTUTSかな。僕らが主催したイベント『cero presents "Traffic"』に呼ばせてもらいました。すごく好きですね。MPCプレイヤーとして登場したヒップホップのトラックメーカーなのに、例えばAlfred Beach Sandalのようなバンドをレコーディングに呼ぶ。ヒップホップとバンドの間にある架け橋を、意識せず軽やかに行き来できるんですよ。きっと、彼らが今後担うことってたくさんあるんだろうなと思います。
荒内:WONKもすごいですよね。ワールドスタンダードなことをやってる。現在進行形のジャズを、向こうのバンドにも引けを取らないレベルで奏でている。ほんと、若くて上手くてすごいなあと思います。
橋本:交流のある人たちが多いですね。Yogee New Wavesも、野音のイベントで一緒だったし。okadadaさんも『cero presents "Traffic"』の大阪公演でDJをやってもらって。まだライブをちゃんと見たことないバンドを見るのも楽しみだし、ここ最近はライブに行けてなかったバンドも、どんな風に成長しているか楽しみです。
(取材・文=黒田隆憲/撮影=小田部伶)
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■イベント情報
『ALTERNATIVE ACADEMY』
2017年3月4日(土)東京都 WWW X
OPEN 22:30/START 23:00
<LIVE ACT>
cero、Yogee New Waves、WONK
<DJ ACT>
okadada、サイトウ"JxJx"ジュン、STUTS、Licaxxx
■関連リンク
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