レジーのJ−POP鳥瞰図 第10回
“テレビ×音楽”は新たな国民的ヒットソングを生むか? ceroの『SMAP×SMAP』出演の意義
『SMAP×SMAP』×ceroが意味するもの
鮮烈な“地上波初登場”だった。
3月7日の『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)において、これまでにも星野源など様々なアーティストが出演している「S-LIVE」に登場したceroの3人。SMAPの5人と「Summer Soul」を共演するとともに、演奏の前後には8人揃ってのトークが放送されるなど、まとまった形での露出を果たした。
“ブラックミュージックを日本のポップスに落とし込む”というトライを90年代から行っているSMAPにとって、比較的近しいコンセプトを背景に制作された『Obscure Ride』のリード曲を消化するのは、楽しい作業だったのかもしれない。SMAPの歌とダンスが融合した「Summer Soul」は、最近の彼らの曲で言えば「ココカラ」、少し遡れば「freebird」、大きく遡れば「胸さわぎを頼むよ」が発するような心地よさに溢れていた。
「僕らが90年代とかに聴いていた音楽ってあるじゃないですか、渋谷系と言われていたもの。コーネリアスさんとかオリジナルラブさんとか、そういう香りがちょっと懐かしいなと思って。僕はこの雰囲気は好き」とは、トークコーナーにおける稲垣吾郎の発言である。自らのソロ楽曲にフィッシュマンズの佐藤伸治を起用し(『SMAP 011 ス』収録の「それはただの気分さ」)、ライブではThe Cardigansの「Carnival」をカバーしたこともある彼らしい指摘だが、『Obscure Ride』の下敷きに小沢健二『Eclectic』があることを考えると、あながち的外れな話ではない(もっとも『Eclectic』は2002年のリリースだし、そもそもceroが「渋谷系」かということについては丁寧な議論が必要ではあるが)。中居正広が冗談っぽく口にした「(稲垣は)湘南乃風みたいなのがちょっと苦手で」というコメントも含めて、純粋な音楽番組ではない「SMAP×SMAP」において、ceroの立ち位置が正確に説明されていく一連の流れは、SMAPというグループの「目利き力」がふんだんに発揮されていた瞬間だったと言える。
今更具体例を挙げるまでもなく、SMAPは様々な形で若いアーティストをフックアップしてきた。そのパワーは楽曲制作においてだけでなく、自身の紅白歌合戦のステージでMIYAVIと共演するなどテレビの場にも及ぶ。自らの知名度をテコにして新しい才能を世間の目に触れさせるその様は、「アイドル」や「アーティスト」というよりも「メディア」という呼称がしっくりくる。今の芸能界・音楽界においてそんな役割を果たしている、そして果たせるのはSMAP以外に思い当たらない。
「バラエティ番組に進出してコントに取り組む」「ジャニーズの音楽をかっこいいものにする」など、局面局面で新しい価値を提示してきたSMAP。そんな彼らのDNAを改めて確認できたのが、先日のceroとの共演だった。SMAPを取り巻く状況はここ数カ月で一気に変わってしまったが(どうやらこの日の収録は件の報道よりも前だったようである)、今後も今のポジションを担ってくれることを願わずにはいられない。もしもそれが停滞するようなことがあれば、日本の大衆文化の硬直は免れないのではないだろうか。