渋谷の街で音楽とカルチャーはどう育まれる? 『TOKYO MUSIC ODYSSEY 』プロデューサーインタビュー

渋谷の街で音楽とカルチャーどう育つ?

 スペースシャワーTV主催の音楽とカルチャーの祭典『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』。「都市と音楽の未来」をテーマに掲げ、2016年に立ち上がった同企画が、今年も3月2日から渋谷で行なわれるイベントを中心に展開される。3月7日開催の『SPACE SHOWER MUSIC AWARDS』を軸に、ceroを始めとする“オルタナティブ”な感性を共有する気鋭のアーティストが出演する『ALTERNATIVE ACADEMY』、ニューカマーを紹介する『NEW FORCE』、音楽にまつわる映像作品を上映する『MOVIE CURATION』、そして今年から新たに加わり、音楽と映像とアートが一体となったライブイベント『SOUND & VISION』、次世代の街やカルチャーをつくるアーティスト、クリエイターに焦点を当てた『SHIBUYA POP UP STUDIO』。1週間にわたり、実に様々な形で音楽とカルチャーを体験することができる。

 今回、リアルサウンドでは、プロデューサーを務める株式会社スペースシャワーネットワークの沢田房江氏、大澤胤之氏、岡有子氏にインタビューを行なった。スペースシャワーTVは開局当時から独自の審美眼を光らせ、番組やイベントを新たに発案してきたが、今回の『TOKYO MUSIC ODYSSEY』は、東京・渋谷の街を巻き込んだイベントになりそうだ。同イベントの狙いや今後の構想について、三者にじっくりと語ってもらった。(編集部)

「街全体が音楽一色になるという形が理想」(大澤)

ーー今年で『TOKYO MUSIC ODYSSEY』は2回目になりますが、そもそも開催のきっかけは何だったんでしょうか?

沢田房江(以下、沢田):2014年にスペースシャワーTVが開局25周年を迎え、翌年にその次のフェーズに入るということで、何か新しいチャレンジをしていきたいと思いました。スペースシャワーTV自体、夏は『SWEET LOVE SHOWER』、冬は12月1日の開局記念日を盛り上げる『カーニバル ウィーク』があるので、春頃にも何か新しい企画があると1年を通して様々な形で音楽を提案できると思い、この『TOKYO MUSIC ODYSSEY』の開催が決まりました。

――「都市と音楽の未来」というテーマを掲げようと思ったのは?

大澤胤之(以下、大澤):開局以来ずっと東京から発信してきましたし、オリンピックも決まり、今ますます東京が世界から注目されているため、「都市」というテーマは重要だと思いました。また、フェスとは異なる形で音楽の魅力を伝えていきたいという思いもありましたね。2010年以降に、渋谷のオフィスでレーベルやマネジメントとしての機能も果たすSPACE SHOWER MUSICを始動したり、またスペイン坂でWWWとWWW Xというライブハウスの運営も始まりました。そう考えた時に、東京の中で自分たちが応援してきた音楽を伝えやすい街が渋谷でした。実は開局当時は、今の渋谷CLUB QUATTROの下のBOOKOFFがWAVEというレコード店で、1階にサテライトスタジオがあって毎日生放送をやってたんですよ。他にもタワーレコード渋谷店の地下で毎週ライブ番組をやったり。そういう意味でも渋谷は馴染みのある街でした。

ーー今年のイベント内容を見ても、より渋谷という街全体にコミットしている印象がありました。

大澤:そうですね。将来的には『SXSW(サウスバイサウスウエスト)』のように街全体が音楽一色になるという形が理想ですね。ライブハウスだけじゃなくて、周囲の飲食店やショップも含めて、どこに行ってもいい音楽が聴けるというイベントにちょっとずつ近づけていきたいと考えています。

沢田:2016年に初めて開催し、ひとつひとつのイベントは充実して盛況に終わったんですが、通してみた時に1カ月の中で断続的に開催したため、まとまった印象がなく『TOKYO MUSIC ODYSSEY』全体が伝わらなかったという反省点も浮き彫りになりました。ですので、今年は1週間に凝縮させ、連日行います。参加してくれた方々に各イベントだけではなく、『TOKYO MUSIC ODYSSEY』全体を体験してもらいたい、というのが今年一番のチャレンジかもしれません。

――渋谷という街とより密接に繋がる、町おこし的な側面もあるのかなと思いました。

沢田:そうですね。将来的には渋谷区全体を使ってさらに広げていけたらと思っています。今は弊社運営のライブハウスを中心に使いながら、渋谷区の自治体にもアプローチさせてもらったりしています。

岡有子(以下、岡):街のカルチャーの一部になるようなお祭りを作っていきたいという目標があるんです。今、再開発されて新しくなっていく渋谷の街に、音楽がどういうふうに根付き育っていくのか。音楽の現場と人と街とが重なって新しいカルチャーが生まれていく中に関われたらと思いますね。

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――GALLERY X BY PARCO(渋谷スペイン坂)での『SHIBUYA POP UP STUDIO』は今年新たに加わったイベントになります。

沢田:『POP UP STUDIO』には、『TOKYO MUSIC ODYSSEY』の「都市と音楽の未来」というテーマをより体現できるコンテンツを入れていこうと思っています。

岡:『POP UP STUDIO』の内容は、主にトークセッションとミニイベントです。トークセッションに関しては、国内外から高い評価があるメディアアーティスト真鍋大度さんと演出振付家MIKIKOさん、東京音楽シーンの真ん中にいるZeebraさんとオカモトレイジ(OKAMOTO’S)さん、気鋭の映像作家dutch_tokyo(山田健人/yahyel)さんたちにご出演いただきます。身体表現やテクノロジー、街や映像など音楽と関わりの深い最先端のカルチャーをつくっている方々のメッセージを届けたいと思っています。また、ランニングイベント(『渋谷を走ろう! TMOラン!』)やキッズイベント(『スペシャキッズミーティング〜音と木のおもちゃで遊ぼう〜』)、ワークショップ(未来の演奏体験)に関しては、身近な日常の中にある「音楽と都市」「音楽の未来」を体験してもらえたらいいなと。

大澤:音楽を中心に、それと親和性の高いカルチャーが繋がっていくイメージですね。

ーー音楽ファンだけじゃなくて、家族連れだったり小さい子どもだったり、より広い層に向けてアプローチされている印象を受けました。

沢田:そうですね。ランニングに関しては、ランニングカルチャー雑誌『走るひと』と一緒にやらせていただいています。『走るひと』のチームは、『AIR JAM』や『FUJI ROCK FESTIVAL』などのフェスでランニングイベントをプロデュースしています。最近はアーティストやカメラマンもInstagramやTwitterのハッシュタグで繋がってみんなで走っている。そういう取り組みを、渋谷という街で試みるのも面白いんじゃないかと思いました。

岡:『SWEET LOVE SHOWER』や他の音楽イベントでも、最近はお子様連れで来てくださるお客さんが増えてきて、いろんな楽しみ方をしているんです。子供にとって音楽や歌って一番最初の遊び道具でもあり、彼ら自身が街や音楽シーンの未来なので、キッズイベントとしても何かできないかと思いました。

沢田:2016年は『MUSIC ART EXHIBITION』という展覧会を開催していて、そこで音楽にまつわるカルチャーとして写真や衣装、MVの絵コンテを展示しました。『POP UP STUDIO』はそれがベースとなりながらも、さらに発展させ、「都市と音楽の未来」というテーマをより様々な切り口で提示しています。2018年以降も、ライブハウスやギャラリー以外の場所でも展開できたらいいなと思っています。

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