『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』特集第3弾
向井太一 × iriが語る、ポップスとR&B/HIPHOPが接近した世代観「フロウの感覚に近さがある」
「自分が作る音楽もひとつのジャンルには当てはまらない」(iri)
――向井さんのトラックはどこかジェイムス・ブレイクやFKAツイッグス的というか、かなり奇抜なプロダクションに仕上がっている印象がありますね。一方のiriさんは、向井さんに比べるとよりグルーヴを重視している印象で。ちなみに、お互いに聞いてみたいことはありますか?
向井:今ハマっている曲は何ですか?
iri:それ絶対訊かれると思いました(笑)。最近はソン(SOHN)の新作『Rennen』を聴いていましたね。すごくよかったです。
向井:ああ、最高ですよね。僕はファーストの『Tremors』もすごく好きです。でも、iriちゃんが好きなのはちょっと意外な感じもする。
iri:(笑)。あと、この間改めて聴いていいなと思ったのはベン・ハワードとか。弾き語りですけどね。
――向井さんが最近聴いている音楽というと?
向井:以前はFKAツイッグスのようなものを聴いていましたけど、最近はよりブラック・ミュージックの王道に戻ってきているんです。たとえば、ケラーニのアルバムはよく聴いていますね。トラップの要素もあって、でもどこか懐かしい王道のR&Bの雰囲気もある。歌の力がある作品だと思うんです。それにビジュアルもすごく好きですね。今一番来日してほしいアーティストです。以前FKAツイッグスにハマっていたのはちょうど自分が作詞作曲をはじめた頃で、「プロダクションをどんな風にしよう?」ということにアンテナを張っていた部分もあったと思います。でも今は、もっと歌に重きを置いた人を聴くようになっていますね。最近はエイミー・ワインハウスも改めて聴いていますし。
iri:エイミー・ワインハウスはいいですよね。私も大好きです。
向井:すごく好きそう(笑)。エイミー・ワインハウスもiriちゃんも、ジャズやヒップホップのテイストが共通しているし、何よりスモーキーな声が似ていると思います。僕の場合は、音楽だけじゃなくて「ビジュアルがいい」ということも重要です。ただ、僕自身はR&Bが好きだからといって、R&Bっぽいファッションをするわけではないんですけどね。
――実際、向井さんのファッションにはクロい要素がまったく感じられませんね。
向井:(笑)。たぶん、今ってどんどんそういう時代になっていると思うんです。昔はヒップホップならヒップホップっぽい恰好をしていたり、R&BならR&Bっぽい恰好をしていたと思うんですけど、今ってそれがないというか。
iri:すごく自由な感じがしますよね。ラッパーでも、カジュアルな人が多い。
向井:やっぱり、それってインターネットなどを通じて「クラブに行かなくてもヒップホップが聴ける/R&Bが聴ける」ようになったからかもしれないです。好きな曲を聴いて、好きな音楽を表現するときに、インターネットによって単純にその幅が広がっている人が増えたというか。「色んな音楽に触れようとしている」というより、時代の流れの中で「そういう人たちが沢山でてきている」という感覚なんじゃないかと思うんですよ。
――実際、向井さんやiriさんの世代の人たちは、小さい頃からインターネットを通して年代や国、ジャンルを問わない様々な情報に触れてきた人たちなんじゃないかと思います。
iri:そうですね。結局「いいものはいい」ということだと思うんですよ。たとえば、ひとつのアルバムでも「私はこの曲だけ好き」ということもあるし、好きな音楽は色々あってひとつには絞れないし。だから、自分が作る音楽も何かひとつのジャンルに当てはまるものではなくなっているのかなと思うんです。
――3月5日には渋谷WWW Xに向井さんとiriさん、そしてドミコ、For Tracy Hyde、The Wisely Brothersの5組が集まって『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017 NEW FORCE』が開催されます。2人がライブで大切にしているのはどんなことですか? また、当日に向けてどんなことを考えていますか。
向井:僕はライブでは「言葉を伝える」ということを大切にしています。『24』では王道のR&Bからは少し外れたことをやったので、逆に心に引っかかるような、突き刺さるようなものを表現したいと思うんです。昔は力を入れ過ぎていたんですが、ちょっと力が抜けるようになってきて今は楽しんでライブがやれていると思いますね。当日は僕のライブを観たことのない人も多いと思うので、自分のファンの人以外にも、何か印象に残って帰ってもらえるようなライブにしたい。そして作品の世界観をしっかりと届けたいです。
iri:私はもともと弾き語りでライブをしていたので、トラックに乗せてハンドマイクで歌うという意味ではライブのやり方が昔とは大きく変わりました。ライブでは、歌詞を書いたときにイメージしていた曲の世界観を、その場に持ってくることを意識していますね。今回はみんなニューカマーということで、初めて観てくれる人が多いと思うので、そういう人にも楽しんでもらえるようなライブができたらいいなと思っています。
(取材・文=杉山 仁/撮影=松木宏祐)
■『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』特集記事
・きゃりーぱみゅぱみゅ、Suchmos、平井堅ら出演 スペシャ主宰アワードに見る、音楽シーン充実の理由
・渋谷の街で音楽とカルチャーはどう育まれる? 『TOKYO MUSIC ODYSSEY 』プロデューサーインタビュー
■イベント情報
『SPACE SHOWER NEW FORCE』
2017年3月5日(日)東京都 WWW X
OPEN 17:00/START 18:00
<出演者>
iri、ドミコ、For Tracy Hyde、向井太一、The Wisely Brothers
<チケット>
¥1,000(NEW FORCE CDコンピレーション付、税込・ドリンク代別途)
■関連リンク
『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』オフィシャルサイト
向井太一オフィシャルサイト
iriオフィシャルサイト