向井太一 × iriが語る、ポップスとR&B/HIPHOPが接近した世代観「フロウの感覚に近さがある」

向井太一 × iriが語る、音楽との出会い

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「言葉遊びが面白いと思ったのは、七尾旅人さんや向井秀徳さんがきっかけ」(iri)

――2人は物心がついた頃からヒップホップやR&Bがポップ・シーンの中で大きな存在感を持っていた世代でもありますよね。R&Bはポップ・ミュージックの中でも近い存在という感覚だったと思いますか? 

向井:でも、僕が学生のときはロック・バンドの方が圧倒的に人気がありました。ただ、J-POPの中にもR&Bの要素が入っているものが多かったような気がします。日本でもヒップホップやR&Bをやられてきた方がすでに沢山いて、その要素がJ-POPにもどんどん入っていったというか。

iri:R&Bを聴いている子は、私の周りにもあまりいなかったです。やっぱりロックやJ-POPを聴いている子の方が多かったし。それに私の場合、別にソウルやR&Bを目指していたわけではなかったんです。PUSHIMさんやCOMA-CHIさん、男性だったら久保田利伸さんのようなJ-POPも聴いたりしていたので。

向井:やっぱり、iriちゃんは根本的にブラック・ミュージックの要素があるものが好きなんですね。僕で言うと、ポップ・ミュージックといえば坂本九さんのような音楽も好きで聴いていました。でも、日本のアーティストで一番影響を受けたのは宇多田ヒカルさん。僕は初期のファストなR&Bも好きですが、「光」のように別のジャンルの要素も混ざっているタイプの曲が特に好きで、宇多田さんからは言葉の使い方も影響を受けました。最新EPの『24』は、意識的に日本語詞の魅力を追究した部分もあるんです。(答えをはっきりと言わずに)聴き手が汲み取るという、日本人独特の感覚を大切にしました。

――iriさんも言葉の響きにこだわって作詞をしている印象がありますね。狙っているのかどうかは分かりませんが、たとえば、<夜が迫る/夜が迫る>という歌詞に続いてクラブでの一夜が歌われる「半疑じゃない」では、サビの<半疑じゃない>という歌詞が「hanging out at night」に聞こえたりと、どこか英語っぽい雰囲気の言い回しが多く出てきます。

iri:あっ、英語っぽく聞こえますか?(笑)。私は曲を作るときはギターで作ることが多いんですけど、即興でループを作って、そこに適当に乗せたフレーズをそのまま残したりするんです。それが英語っぽく聴こえる理由なのかもしれないですね。自分でも「半疑じゃない」ってどういうことか分からないんですよ。でも、なんか「いいな」って。

――2人はどんなときに曲ができることが多いんですか?

iri:それは自分でもすごく不思議なんです。「あっ、書ける」と思っていきなりパッとできるときもあるし、そうじゃないときもあるし。

向井:僕はレコーディングの途中でメロディがガラッと変わったりもします。

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iri:すごい。私はメロディは最初に思いついたものから変わらないことが多いですね。

向井:ラッパーの人はリリックとメロディが一緒に出てくることがありますけど、iriちゃんの場合はその感覚に近いんですかね?

iri:そうなんですかね? でも私の場合、最初に言葉遊びが面白いと思ったのは、七尾旅人さんや向井秀徳さんなんです。ギターを片手に淡々と語るように歌うスタイルに憧れて、その頃から弾き語りで歌うことをはじめたぐらいで。歌詞については、私はしゃべるのが苦手なので、曲の中で自分が伝えたいことを表現することが多いです。自分でも歌詞カードを見ながら「これって私が書いたんだ」ってビックリすることがあるんですよ(笑)。

――お互いに作詞作曲を担当しつつ、それをトラックメイカーと楽曲に仕上げていますが、この作業はどんな風に進んでいくんですか? 向井さんはyahyelやstarRoさん、grooveman Spotさんと、iriさんはケンモチヒデフミさん(水曜日のカンパネラ)やmabanuaさん、Drianさんと共作しています。

向井:僕は音楽的な専門用語にそれほど詳しくないので、自分でベースを作った後に、トラックを作ってくれる方々にものすごくアバウトな形で伝えていくんです。本当に大変だと思うんですけど、たとえば、『24』に入っている「SLOW DOWN」のサビ前のリフでは「風呂場で桶を落としたような音を入れてほしい」とか、そんな風に伝えて作業を進めていく感じなんです。

iri:私も近い感覚ですね。最初のベースを用意して、「ここに『シャシャシャシャ』っていう音を入れてください」という感じで(笑)。

向井:僕は最初、iriちゃんは弾き語りの人だというイメージだったので、『Groove it』(1stアルバム)を聴いたときは度肝を抜かれました。クレジットを見たら参加メンバーも「うわぁ!」と思って。

iri:ケンモチヒデフミさんなどはそのタイミングで紹介していただき、残りの半分の曲はもとからの知り合いにお願いしました。たとえば「ナイトグルーヴ」は、曲が出来た時点で「この曲はmabanuaさんにお願いしたい」と思ったり。曲のイメージに合う人に、トラックをお願いさせていただきました。

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向井:僕は、yahyelはライブを観て「いいな」と思ってすぐにオファーをしたんですが、そうやって「自分の好きな人たち」にお願いしました。starRoさんはLAに住んでいるので、日本に来ているときにセッションをして、その後はデータでやりとりをするという進め方です。僕の場合は「空間が作れる」「立体感のあるサウンドを鳴らせる」人を探していたと思います。yahyelのトラックなんて、まさにそうですよね。ライブでもみんなが息を呑むのが分かる。もちろん歌が第一で、歌モノを作りたいという気持ちは強いんですけど、僕は好きなものがどんどん変わっていく人間なんです。だから、音楽面では常に自由でありつつ、「伝える」ことを考えていきます。トラック以外にも、MVやアートワークを考えて、トータルで表現したいという気持ちは強いかもしれないです。

iri:へえ、私は歌うこと以外はあまり考えてないかもしれないですね。

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