>  >  > 第59回グラミー賞授賞式を観て

アデルは“無敗伝説”更新し、ビヨンセは“ディーバ”の実力見せたーーグラミー賞授賞式を観て

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 グラミー賞受賞式といえば豪華なパフォーマンス群も見どころの一つ。今年は冒頭からアデル、そしてThe Weekndとスペシャル・ゲストのDaft Punkが登場し、エド・シーランや、Lukas Graham&ケルシー・バレリーニのマッシュアップ・ステージなどが続く中、終盤に登壇したチャンス・ザ・ラッパーは、アルバムにも参加していた従姉妹のニコール、カーク・フランクリンやタメラ・マンといった本格ゴスペル・シンガーたち、そして地元シカゴの子供たちからなるシカゴ・チルドレン・クワイアとともに、彼のルーツとも言えるゴスペルの要素をふんだんに取り入れたステージを作り上げ、グラミーの会場、いや、中継を観ている我々すべてを教会へと連れて行き、歓喜の歌を聴かせてくれた。

 先日のスーパーボウルのハーフタイム・ショウでも圧倒的なパフォーマンスを披露してくれたレディ・ガガは、なんとMETALLICAとのコラボ・ステージを披露。自身もメタリカTシャツに身を包み、ロックな出で立ちで「Moth Into Flame」を熱唱した。ただ、METALLICAのボーカル、ジェイムズ・ヘットフィールドのマイクの電源が入っていないという痛恨のミスが起こり、ガガが自分のマイクを共有する場面も。

 加えて、グラミーならではのトリビュート・ステージも、今年はより盛大に行われた。デミ・ロヴァートやアンドラ・デイらによるThe Bee Geesのトリビュート、そして、The Timeの演奏にブルーノ・マーズが参加したプリンスのトリビュート・ステージでは、プリンスそっくりの衣装や髪型を模したブルーノがとにかく完璧でエネルギッシュなパフォーマンスを見せた。

 一方、盛大なプリンス・トリビュートのステージとは対照的だったのが、アデルによるジョージ・マイケルのトリビュート・パフォーマンスだ。オーケストラの演奏をバックに一人でマイクの前に立つアデル、歌い始めてからしばらくした後「TVで中継しているのは分かっているけれど、彼のためにもこのまま歌い続けられない。もう一度、最初からやらせて下さい」と自ら遮り、観客の喝采を浴びながら再度歌い直すという異例のパフォーマンスとなった。

 そして、ことさら強くメッセージ性が込められたパフォーマンスも。先日、双子を妊娠したことを明らかにしたビヨンセは、多くの女性ダンサーやホログラムなども駆使し、ポエトリー・リーディングも挟みながら壮大なパフォーマンスを披露した。金色の衣装に身を包み、お腹のふくらみを強調したビヨンセはさながら女神のようであり、多くの女性を勇気付けるステージでもあった。

 昨年、18年ぶりの新作アルバムを発表したヒップホップ・グループのA Tribe Called Questは、優秀新人賞にノミネートされたアンダーソン・パックらとともに急逝したメンバーのファイフ・ドッグを追悼しつつ、アメリカ合衆国憲法前文の書き出しと同じフレーズである「We The People」を披露。この楽曲、フックの部分ではムスリムやゲイ、黒人といったマイノリティらに向けた箇所があり、まさに団結を表現する歌となっている。パフォーマンスの途中、バスタ・ライムスがコンシークエンスとともに「エージェント・オレンジ大統領よ、お前のムスリム政策は失敗したが、俺たちはこうやって団結しているんだ」と登壇したほか(オレンジはトランプ大統領を揶揄する際に使用されるフレーズ)、ステージ上にはあらゆる人種・性別・宗教のバックグラウンドを持つエキストラも登壇し、拳を突き上げながら「Resiset(抵抗せよ)!」とシャウトを送り続け、この一夜の中でも最も政治的メッセージに溢れたステージとなった。また、新曲「Chained to the Rhythm」を初披露したケイティ・ペリーは「PERSIST(主張)」と書かれた腕章を付けてパフォームし、最後は背景にATCQと同じく「We The People」で始まる憲法の一部を映し出し、ステージを後にした。

 他、司会のジェームス・コーデンがオープニングのモノローグで「ドナルド・トランプが大統領だ、次に何が起こるが予測不能」とラップで発言したり、プレゼンターとして登場したジェニファー・ロペスが「これまで以上に声を上げることが必要」と前置きして黒人女性作家のトニ・モリスンの言葉を引用したり、さらには性同一性障害を乗り越えて女優として活躍するラヴァーン・コックスが、トランスジェンダーへの理解を深めるスピーチを披露したりと、中庸すぎる気もする受賞結果とは裏腹に、随所にそれぞれの“主張“が溢れるグラミー授賞式となったのだった。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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