今年のグラミー賞の見所は? 『2017 GRAMMY(R)ノミニーズ』収録曲からおさらい

 世界で最も栄えある音楽賞レース、グラミー賞。毎年、2月に授賞式が行われ、トロフィーが用意されるカテゴリーは78にものぼり、文字どおり世界中のアーティストがノミネートの対象となる。そして、主要部門のノミネート楽曲を中心に集めたリスナーへの最良のガイドブックともいうべきコンピレーション・アルバム『2017 GRAMMY(R)ノミニーズ』が今年も発表された。これさえ聴いておけば、グラミー賞全体の地図を把握できるとともに、2016年の音楽シーンを一気に振り返ることもできる本コンピ。本記事ではこの作品を片手に、今年のグラミー賞のラインアップをおさらいしていきたいと思う。

 まず、目を引くのは主要部門を含める最多9部門のノミネートに輝いたビヨンセだ。2016年、入念に作りこまれた60分の映像集『Lemonade』を“ヴィジュアル・アルバム”としてリリースしたビヨンセだが、本作にはザ・ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトを迎えたロッキッシュな「Don’t Hurt Yourself」を収録している。「あんたはその辺のオンナと結婚したわけじゃないのよ!」と、パートナーに詰め寄る強気なリリックにも注目してほしい。『Lemonade』ではR&Bはもちろん、最新のヒップホップ・サウンドやダンス・ミュージック、カントリーまでをも飲み込み、多彩な音楽ジャンルと、歌詞や映像に込められた問題提議の姿勢を“ビヨンセ”というアーティスト性に落とし込んだ彼女だが、一体いくつのトロフィーを持ち帰るのか楽しみである。

 そして、ビヨンセと共に主要部門のトロフィーの行方を争うのが、UK出身の歌姫、アデルだ。2015年の11月、全米だけで初週330万枚以上を売り上げ、爆発的な記録を打ち立てた大ヒット・アルバム『25』を発表し、キャリアを重ねるごとに求心力を増す底力を発揮したアデルだが、本コンピにはリード・シングルとして発表され最優秀レコード賞のノミネートに輝いた「Hello」を収録。ビヨンセとアデルはそれぞれ最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞にノミネートされており、トップ・ディーヴァ二人がどのようにグラミー賞主要部門の勝敗を分かつのか、大きな注目を集めているところでもある。

 ビヨンセに次いで計8部門のノミネートに輝いたのが、カナダ出身のラッパー、ドレイク。グラミーではすでに常連の彼は、これまでに2013年にアルバム『Take Care』で見事、最優秀ラップアルバム賞のトロフィーを奪取した経歴を持つ。今年はMVで披露したユルいダンスも話題になったシングル「Hotline Bling」、そしてアルバム『Views』を引っ提げてのノミネート。彼もまた、アルバム『Views』がストリーミングの再生回数で10億回を超えるという記録を打ち立てたことでも知られるほどの人物。今年の顔となるべく、見事受賞なるか見所だ。

 時代を彩るヒット・シングルはまだまだ続く。2016年の来日公演も話題になったジャスティン・ビーバーは、最優秀アルバム、最優秀楽曲、最優秀ポップ・パフォーマンス(ソロ)、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバムにノミネート。2015年のアルバム『Purpose』から、同じくグラミー受賞経験を持つエド・シーランやベニー・ブランコがソングライティングに関わったアコースティック・ポップ・チューン「Love Yourself」が収録されている。

 また、アイドルから大人のディーヴァへと成長を遂げようとしているアリアナ・グランデは最優秀ポップ・パフォーマンス(ソロ)、そして、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバムにノミネート。彼女にとっても新境地と言えそうな、色気漂う「Dangerous Woman」を収録。ほか、ポップ・フィールドからはアメリカを代表するアイドルとして躍進したデミ・ロヴァートや、ポップ・シーンにおいては貫禄をもみせるケリー・クラークソン、そして抜群の存在感を示すシーアらの楽曲も揃う。

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