「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第35回 『ONIGAWARA 1stワンマンツアー2017〜新春初ONI詣〜』
ONIGAWARAが掲示する、アイドルでもバンドでもない“新しいJ-POP” 『新春初ONI詣』レポート
ONIGAWARAは間違いなく「アイドル」だ。元竹内電気のメンバーである竹内サティフォと斉藤伸也による男性2人組にして、「アイドル」という存在を目指し、しかも1990年代を意識したサウンドを聴かせる彼らは、ともすれば不思議な存在かもしれない。しかし、2017年1月21日に渋谷TSUTAYA O-Westで開催されたワンマンライブ『ONIGAWARA 1stワンマンツアー2017~新春初ONI詣~』は、彼らがミュージシャンとしてもエンターテイナーとしても、すでに多くの人々に支持されていることを実感させるものだった。
この日は、開演前からステージ上に酒樽が用意され、開演すると、笛や琴による正月感の溢れる音楽が流れだした。そして、布袋寅泰モデルのエレキ・ギターを抱えた竹内サティフォと斉藤伸也か登場して自己紹介をすると、まずは観客の「よいしょ!」という掛け声にあわせて鏡開きを行った。
そして、1曲目の「O・SHOW・GA・TSU」は、レーザーが飛び交う中でスタート。「O・SHOW・GA・TSU」という文字列がVJで出てくるのもくどくて良い。さらには、黒子が書道セットを持ってきたかと思うと、10秒のカウントダウンの中でONIGAWARAが書き初めを開始。竹内サティフォは「恋」、斉藤伸也は「成功」と書き、ステージ両端のお立ち台に立って披露した。
続く「シャッターチャンス'93」は、まさに1990年代感があるギター・ロック。ちょっとネオアコも連想するな……と考えていると、竹内サティフォはフロアにピックを投げてスター感を醸しだしていた。また、「シャッターチャンス'93」では撮影OKタイムがあり、ONIGAWARAがさまざまなポーズを取っていく。その間にもファンからは「連写が止まらない!」「目線ください!」という声が起きていた。
「ONIGAWARA SUPER STAR」は、Queenの「We Will Rock You」を連想させるイントロからスタート。ラップ・ナンバーだが、落ちサビではファンが一斉にサイリウムでケチャを捧げるのもユニークだ。さまざまな文脈が交錯しているのがONIGAWARAの現場だ。
ONIGAWARAが一旦ステージを去ると、バックトラックが鳴る中、「お色直し中」というVJが。ONIGAWARAのVJもまた、1990年代のネオンライトのようなのだ。
ONIGAWARAのアイドル感が爆発したのが「エビバディOK?」だ。小学生の男の子たち3人が登場してダンスを披露すると、フロアからは大歓声が。さらに彼らに腕を引かれてONIGAWARAが再登場。とりわけ歓声の大きい楽曲となった。
MCでは、斉藤伸也が「ここに骨を埋める覚悟ができてるのか!?」と煽ると、竹内サティフォが「お前となら埋めてもいいかな……」と突然のBL展開。書き初めで書いた「成功」について、斉藤伸也が「ビッグになりたいじゃん!」と言うと、竹内サティフォも「俺(が書いたの)も星野源の『恋』。社会現象になりたいね」と抱負を語った。
「アリス」では、竹内サティフォのギターのリフ、斉藤伸也の伸びやかなボーカルも冴え渡っていた。
「チョコレイトをちょうだい」では、イントロで竹内サティフォがギター・ソロを弾く間に袖に下がった斉藤伸也が、獅子舞をかぶって登場。何かを投げていたので、チョコレートを投げたのかと思ったが、白かったので餅かもしれない。「チョコレイトをちょうだい」は、キーボードの音色も90年代っぽく、さらにONIGAWARAが歌うメロディーも当時の歌謡曲を彷彿とさせるものだ。
斉藤伸也が「最高にチルしてくれよ!」と言いながらはじまった「夏フェスなんて大嫌い!!なんちゃって」は、まさにチルでメロウなミディアム・ナンバー。竹内サティフォもギターを下ろし、ONIGAWARAのふたりによるラップと歌で、「日本で一番早い夏フェス」という雰囲気となった。
「夏フェスなんて大嫌い!!なんちゃって」の終わりでONIGAWARAがステージから去ると、なぜかオルゴール・アレンジのオフコースの「言葉にできない」が流れだした。スクリーンには、2016年のONIGAWARAの活動を写真で振り返るスライドショーが。改めて見ると、インスタントカメラ・シングルであった「シャッターチャンス’93」のMVは、フリッパーズ・ギターの「カメラ!カメラ!カメラ!」へのオマージュっぷりがすごいのだ。