丸本莉子にとっての“幸せ”の意味 「アルバムで気持ちが前向きになってもらえたら」

丸本莉子にとっての“幸せ”の意味

 丸本莉子が、12月21日に3rdミニアルバム『誰にもわからない~何が幸せ?~』をリリースする。アルバムには、先行配信シングルであり表題曲の「『誰にもわからない」に始まり、5th配信シングル「ガーベラの空」を収録。ほかにも、かねてよりファンから収録を心待ちにされていた中島みゆきのカバー曲「糸」、今年大活躍を果たした広島東洋カープの中﨑翔太選手の登場曲に起用されている「ご機嫌ベイベー★」が収められている。インタビューでは、アルバムレコーディングの裏側や楽曲に対する思い、丸本の曲制作や発声法に迫っている。最後には、アルバムのサブタイトルである「何が幸せ?」という問いかけを彼女にしてみた。

「新しいことに挑戦した1枚」

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ーー『誰にもわからない〜何が幸せ?〜』はミニアルバムとして3枚目になりますが、丸本さんにとってどのような作品になりましたか。

丸本: 今作は新しいことに挑戦した1枚になりました。これまでは答えのある曲、メッセージ性のある曲が多かったのですが、アルバム先行シングルの「誰にもわからない」ではタイトルの通りに答えが出ないまま思いを吐き出すという、新しい書き方に挑戦することができました。また、「ガーベラの空」から藤林聖子さんと作詞を手がけたり、「糸」では初の一発レコーディングに挑みました。

ーー丸本さんは配信シングルを何枚か出してミニアルバムをリリースする、といったペースで活動されていますが、シングル曲とアルバム曲で制作スタンスに違いはありますか。

丸本:そういった意識はしていないですね。私としては今回アルバム曲として収録した「トロイメライ〜人魚の夢〜」「ぷれぜんと」もシングルとしてリリースできるような曲だと思っていますし。でも、シングルになる曲は、よりメロディーがキャッチーで心に残るものなのかもしれません。歌詞も多くの人が共感できるよう改めてアレンジしていきます。

ーー丸本さんは詞先、曲先どちらですか。

丸本:高校生の時は歌詞から書いてメロディーを作っていたのですが、インディーズの頃に「ココロ予報」のアレンジを手がけてくださったBU-NIさんに「曲を先に作った方が効率がいいよ」とアドバイスをもらったんです。メロディーは歌えば歌うほど生まれますけど、歌詞は新しい経験を経ていかないと出てこない。だから、まずはメロディーをたくさん作って、その時の感情や経験によって生まれた言葉を歌詞にしていく制作になりました。

ーー以前のインタビューで地元広島にある原爆ドームの目の前の元安橋で練習をしていたとお聞きしました。その頃から歌っていたのはアルバムにも収録している中島みゆきさんの「糸」ですよね。ストリートライブなどでも定番の楽曲になっていますが、今回収録にあたって「誰にもわからない」に続き、編曲に松岡モトキさんを迎えています。一発録りレコーディングの様子について教えてください。

丸本:初めてのレコーディングの仕方に緊張しましたが、ウッドベースとガットギター、アコースティックギター、パーカッションによるアコースティックアレンジで、今まで歌ってきた「糸」とは違う気持ちで歌うことができました。感動というよりは温かみのある仕上がりになっています。

ーースタジオレコーディングの空気感も伝わってくるようなアレンジに感じました。

丸本:違う雰囲気に新しい気持ちで歌えましたね。ストリートライブの時は自分なりにアレンジして歌っていたんですが、レコーディングする時は改めて原曲を意識して歌いまわしを気をつけました。

ーー丸本さんにとって「糸」はどのような楽曲ですか。

丸本:物心ついた頃に、よく母親とカラオケで松田聖子さんやレベッカさんを歌っていたのですが、同じ時期に中島みゆきさんの「糸」が主題歌のドラマ『聖者の行進』(TBS系)をリアルタイムで観て歌っていたんです。そんな小さい頃から大切に歌ってきた曲なので、思い入れも強い曲です。普段出会わない人と出会うことのできるストリートライブの素晴らしさが、この曲の歌詞とリンクしているような気がしていて、歌うことでファンの方と近くなれる大切な曲で、今回カバーできて嬉しかったです。

ーー結婚式で歌われるような「恋愛」の側面で語られることの多い楽曲ですが、「巡り合わせ」という意味での「仕合わせ」の歌詞は、丸本さんが行っているプロジェクト『ライヴワーク2016~1万人との癒し旅~』にも重なる部分があります。

丸本:シンプルながらすごく印象的な歌詞ですよね。私の歌を立ち止まって聴いて、「明日も頑張ろう」と思ってもらえる、心にプラスになるものが生まれれば良いなと思って歌っているので、そういったライブへの想いが「糸」の「仕合わせ」という歌詞と結びつくんですよね。

ーーアルバムのサブタイトルには「〜何が幸せ?〜」と題されていますが、1曲目には失うことで気づく希望や当たり前の幸せを歌った「誰にもわからない」、2曲目にありふれた日常の中でのふとした幸せをテーマにした「ガーベラの空」を収録しています。この2曲をアルバムの先頭に持ってきていることで「幸せ」というテーマが後に収録されている曲にも活きている気がしました。

丸本:「誰にもわからない」の次に「ガーベラの空」が流れてくることで、雰囲気がガラッと変わって響くんじゃないかなと思いました。

「誰にもわからない」ミュージックビデオ
「ガーベラの空」ミュージックビデオ

ーーなるほど。アルバムの制作にはいつ頃から入ったのでしょうか。

丸本:6月頃から「ライヴワーク」と並行して制作期間に入りました。それから「ガーベラの空」「誰にもわからない」のレコーディングがあり、同時期に「トロイメライ〜人魚の夢〜」「ぷれぜんと」を録っていきました。「トロイメライ〜人魚の夢〜」は昨年の終わり頃に作った曲です。大切な人に会えない夜は寂しく、不安になるじゃないですか。そんな恥ずかしくて普段は伝えられない思いを、人魚に例えたら可愛くなるんじゃないかと思ったんです。<あなたに触れない夜は>という相手への思いが乗った歌詞は、明るく抜けた感じで歌うことを意識しました。

ーー楽曲に応じてトーンの細かな微調整をされているのですね。

丸本:発声の仕方はボイストレーニングの先生にアドバイスをいただいています。「誰にもわからない」では悲しそうに歌うと私の場合は声のトーンが明るくなってしまうようで、「悲しみではなく怒りをこめて歌う」というアドバイスをいただきました。五輪真弓さんの「少女」の歌い方を参考に、内に秘めた怒りを意識して歌いました。「トロイメライ〜人魚の夢〜」は優しく明るく歌っています。ライブではお客さんの反応を見て歌い方を変えることもありますね。

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ーー曲がライブで育つというのもありますからね。この曲は幼少期から好きだった童話の『人魚姫』に人間の恋愛の要素を混ぜ合わせたということですが、作詞はいつ頃手がけたのですか。

丸本:完成したのは今年の9月です。ディレクターさんに「タイトルに人魚を入れよう」とご提案いただいて、Twitterでファンの方からタイトルを募集したんです。トロイメライという言葉には「夢見心地」という意味がありますが、ロベルト・シューマンの「トロイメライ」からも取っていて、シューマンの「トロイメライ」にインスパイアされたフレーズも楽曲の最後に入っているんですよ。

ーー「ぷれぜんと」は昨年のワンマンライブで初披露した曲。最後の<こんな気持ちを あなたがくれた 素敵なプレゼントをもらったよ>の一節は、プレゼントを贈ったことで“気持ち”という素敵なプレゼントを貰ったという歌詞が印象的です。

丸本:プレゼントする時ってすごく悩むじゃないですか。それでも、相手の喜んでくれる顔を見たらその苦労も吹き飛んだりして。そんな気持ちを歌にしたいなと思っていたんですね。2番Aメロの<あなたはどんなことを思っているのかな>という歌詞は、相手を思いやる気持ち、奥ゆかしさを意識して書いた部分です。クリスマスのような、季節を感じさせる曲としても初挑戦でした。

ーー毎年12月に開催しているワンマンライブ『丸本ん家(ち)へようこそ〜ぷれぜんとふぉーゆー』の存在も大きいですよね。当日に向けてライブを準備して、ライブではお客さんの笑顔が見られるという、そんなところがこの曲に通ずる気がします。12月3日に行った広島でのワンマンライブはどのようなライブになりましたか。

丸本:広島で開催するのが今年で4回目だったのですが、私の家なんじゃないのかというくらいアットホームなイベントになりました。ライブ以外にはファンのみなさんが参加できるクイズコーナーを設けました。その中で、ユニコーンの手島いさむさん、元キマグレンのISEKIさんが動画コメントをくださったりして。ほかにも「誰にもわからない」を作った経緯を話したり、よりファンの方との距離が近くなった状態で歌ったので、みなさんが今まで以上に曲を受け止めてくださっているのを感じて。バンドのメンバーとも一緒にやって3年目になるのですが、「ご機嫌ベイベー★」の時にバンドのギターの方が私より前に出てきてギターソロを弾いていたんですね。普段はシャイな方なのにアンプの前に出てきて、会場のみんなも楽しんでくれていたんですよ。今までにないくらい会場が盛り上がっていて、「ライブはここまで盛り上がらせないといけないんだな」と教えられたライブでした。

ーー年末には東京でワンマンライブがあります。

丸本:東京は『ライヴワーク』を通じて新しいファンの方が増えてきているので、ワンマンもしっかりと観てもらえるように頑張りたいと思います。

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