70年代カバーアルバム『ROLLY's ROCK THEATER』インタビュー
ROLLY、ロックへの“異常な愛情”を語る「簡単に理解されては困るから、敷居を上げてる」
70年代の日本のロックファンなら間違いなく楽しめる、ROLLYのファンは無論楽しめる、そしてそのどちらでもなくても、「なんなんだこの過剰で濃密で情報も内容もありすぎでクラシカルで時代錯誤で、なのにルーツまんまじゃなくて妙に新しいロックは!」という感じで楽しめる、ROLLYによる日本のルーツ・ロックのカバーシリーズアルバム。
1年前にリリースされたその第一弾『ROLLY’S ROCK CIRCUS ~70年代の日本のROCKがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光~』(という長いサブタイトルにもその過剰さが表れています)が、主に70年代前半の名曲たちからセレクトしたものになっていたのに対し、今作『ROLLY’S ROCK THEATER~70年代の日本のROCKがROLLYに与えた偉大なる影響とその光と影』は70年代中盤から後半の曲たちが中心。乱魔堂、ウォッカ・コリンズといったコアなバンドの曲から、RCサクセション「雨あがりの夜空に」みたいな「なんでこんな大有名曲をROLLYが!?」みたいな曲まで入った、大充実の12曲。今作をROLLYはいかにして作り上げたのか、どんな思いを込めたのかなどなど、今回もみっちりお話しくださいました。
前作のインタビューの時は、みっちりすぎて、インタビュアーの質問全部削ってひとり語り形式に構成しましたが(こちらです)、今回は一問一答形式でお届けします。(兵庫慎司)
「前回がビートルズの赤盤であったら、今回は青盤」
──1年前の前作の時にもインタビューさせていただいたんですが、その時は、「もしこのパート2の話があったら、『ROLLYさん』って言われた段階で『はい!』とOKの返事をします」っておっしゃっていたんですね(笑)。
ROLLY:はい。前回の『ROLLY’S ROCK CIRCUS』を出したあと、積極的にキャンペーンを行いました。普通のミュージシャンはあんまりやらなさそうな、イオンモールの広場とかでも。そこで「タイムマシンにおねがい」とか「たどりついたらいつも雨ふり」などを演奏すると、私などにはまったく興味もなさそうなお爺ちゃんとかが「これ知ってる!」って、すっごい楽しそうに観てくれた。
前回、はっぴいえんどの「花いちもんめ」も入れたんですけど、「今まであなたの音楽をまったく聴いたことがなかったが、『花いちもんめ』が入ってるから聴いてみたら、なかなかいいギターを弾くじゃないか」という声をいただいたり。おじさんおばさんとか、今までいなかったタイプのお客さんが増えましてね。
そして、今まで聴いたことがない人が聴いてくれるところに、無理矢理自分の曲も……(すかんちの)「恋のマジックポーション」を入れることができた。これはなかなか有意義だな、やりがいのある仕事だ、と実感していたところに、キングレコードの夏目さん(担当ディレクター)から、「第二弾いきましょう」というお話をいただいて。
前回は70年代前半が中心で、今回は70年代中盤から後半の曲を中心にしました。前回のアルバムがビートルズの赤盤であったら、今回は青盤みたいなものを作ろうと。
そうするとねえ……今回もセルフ・カバーを入れようと思っていたんですが……「燃えろいい女」とか「てぃーんず ぶるーす」、「ハレソラ」「雨あがりの夜空に」を演奏しているうちに……まさにこのあたり、1978年前後の曲なんですね。自分がエレキギターを始めたのが1978年で、その時代にドンズバな音楽で。だったらセルフ・カバーではなく、1978年を表したオリジナル・ソングを作ろう!というので、「1978」を作りました。
──中学生ですよね。
ROLLY:中2かな。エレキギターを買ったのは中2の時なんですね。1978年、高槻市民会館でBOW WOWがクリスマスコンサートをやるというので、友達の中田くんと「行こう!」ってチケットを買って。「どんなやろな?」「どんなやろな?」って言いながら、自転車で田んぼの中を走りながら高槻市民会館まで行くと、中学生の坊主頭の僕らは見たこともない、長髪のかっこいいロック兄ちゃんが、スリムジーンズの前を切ってロンドンブーツを履いていて。ジェラルミンのケースにステッカーをいっぱい貼った、グルーピー風の女性とかがたくさんいて。「うわー……」ってもうドキドキして。
そして、市民会館だから緞帳があるんですけど、緞帳が上がるとバーッてBOW WOWの演奏が始まって、「はぁーっ!」ていきなりしびれて。帰り道で「すごかったな、中田あ!」って言ってた少年が、それから30何年経って、その時ステージに立っていた山本恭司さんと……年に1-2回ぐらい、一緒にやることがあるんですよ。
52になって、一緒にステージに立ってる。そして、子供の頃に僕を観ていた少年少女が、またミュージシャンになって……田渕ひさ子さんや、マキシマムザ亮君みたいな人が。そしてまた、田渕ひさ子さんや亮君を観ている子供が……みたいな、壮大なロックのバトンを渡していくような、そして初心に戻ったような新曲を入れたんです。
ゆえに……前作はわりとアート・ロック的な、ダークな感じだったんですけど、今回はカラッとした感じにして。まさにこれは自分が大好きなグラムっぽいハード・ロックンロール、しかも今は絶対にない、大変に時代錯誤なものを作りました。78年頃に「燃えろいい女」とかを聴いていた50代、60代の人に、ぜひ聴いてほしいですね。