ななみが明かす、“変化”を求め続ける理由「私は落ち着きたくないーー音楽に関しては」

ななみが語る、変わり続ける理由

「同じことをやりはじめたら終わり」

ーーわかりました。そしてこのアルバムですが、曲それぞれの世界がディープになってるし、楽曲の幅も広がった気がします。

ななみ:そうですね。今思うと、1stアルバム(『ななみ』)は振り切れてないものがいろいろな個性を放ってた気がするんですけど、今回のアルバムでは「ここ!」と狭めた上で1曲1曲の深さを研ぎ澄ませた感じですね。私としては1stよりも好きです。愛の歌を歌うにしても、愛に向かうためにどうみなさんを誘導してあげるか?という意識があったので、歌詞をもっと具体的に書くようになりましたね。簡単に言えば、前は<悲しかった><傷ついた>という言葉が多かったんですけど、ここではどれだけ傷ついたかという痛みを伝えるために、「サイレン」だったら<ショットガン>とか<ジャックナイフ>とか、ほんとに痛いものを書くことで表現しています。聴きながら想像ができるアルバムになってたらいいなと思いますね。

ーーその「サイレン」が1曲目なんですが、いきなり強烈な曲で。言葉もだし、メロディも構成も展開も、圧倒されます。

ななみ:攻撃力高いですね(笑)。もともとボカロが好きなので、Aメロのすごい早口のところは、ほんとにボカロだと思って作っています。だから自分のやってる音楽とはまったく別の曲を作ろうと思ったんですね。歌詞としては、上京した当時の私はほんとに家から出たくなくて……東京は人が多いし、思ったより現実は厳しかったので、その<傷つけないで>という気持ちを描いてます。ボカロとか、アニメをモチーフで作りました。日常を描いた上でのファンタジーというか。

ーーあ、それは先ほどの澤野さんの作品の話ともつながりますね。空想的な描写の中でリアリティを描いているという。

ななみ:そうですね。日常的なことを書いたあとに空想的なことを言うと、より恐ろしくなるというか。そこがすごく好きなんです。

ーーななみさんは動画上で初音ミクの曲やアニソンを歌ってたから好きなのはわかってたけど、こうして自分の楽曲として表してくるとは驚きました。そして2曲目の「四文字ラブレター」はEDM的なアレンジで、これも意外でした。

ななみ:これは今までの私の楽曲には完全になかった音作りですね。ほとんど打ち込みなんですけど、こういう楽曲は好きで聴いてたので、入れてみたいなという気持ちはあったんです。今回ちょっとチャレンジですね。そういう意味では、ファンの方々が一番ビックリするでしょうね。でもこういう音が、2016年、やっとななみの曲になったなと思っています。このアルバムに向けて書いた、一番新しい曲なんですよね。

ーーわかります。この1、2曲目で、かなりチャレンジングな姿勢を感じます。

ななみ:そう、この2曲でガツンと来ると言ってくださる方が多いですね。で、このアルバムは最初の6曲は黒、あとの6曲は白というイメージで分かれてるんです。前半はカロリー高め。後半はあっさり、味噌汁みたいな感じで、どちらかというと今までの私らしいというか。そのほうが聴きやすいかなと思ったし、どちらも捨てたくはなくて。常に進化していきたいし、アーティストは同じことをやりはじめたら終わりだと思うので……私は落ち着きたくないですね。音楽に関しては。

ーーそうですね。その黒と白、愛に対しての闇という対比が強く描かれていると思います。

ななみ:闇があるからこそ愛が映えたな、という気がしています。前のアルバムは愛、愛、愛と言い過ぎて、愛が伝わってない気がしたので、今回は飢えているところをたくさん描いて、そのぶん優しい歌がヒーローになれると思ったんです。もともと愛に満たされてる人間ではなかったし、闇がある上での愛という価値観を持つ人間でいなくちゃと思うし、これからもそういう人間でいたいですね。リア充にはなりたくないというのはあるので……幸せで調子に乗りたくないというか、常に飢えて飢えて、愛を求めていたほうが自分らしいというか、しっくり来るというか。だから曲もそうじゃないといけないんだろうなと思うんです。私の作品も。

ーー自分がリア充なのは、いいことじゃないと?

ななみ:はい。たとえば、ほとんどの女の子は友達が大好きだし、一緒に遊ぶことに対して苦ではないと思うんですけど、私にとっては苦なんです。だから私がそうになっちゃったら、こっち側の人の気持ちを誰が書くんだ?という気持ちがあるので、そうなりたくないんです。自分の考えを音楽で吐き出したいし、そのままでいたいですね。もちろん(アーティストとして)進化はしたいですけど。

ーーなるほど、納得しました。で、たとえば5曲目の「I Eye Ai」なんかは、愛について触れてるけども、せつないし、苦い認識がある曲じゃないですか。自分を掘り下げてるというか。

ななみ:うんうん……すごくふてくされた歌だなと思います。すねてるというか、<どうせ><もういいよ>という気持ちで歌っていて。ここでの愛は、今までとは違う愛ですね。求めている愛で、あふれてる愛ではないというか。あまり深く考えずに書いた歌詞なんですけど、たぶんその時の私がふてくされてたんでしょう。そもそも、ふてくされた性格ではあるんですけど(笑)、これは一番素直というか。こういうあきらめてるところもあって、期待してる部分もあって、俯瞰してる部分もあって……私らしいなと思いますね。

ーーバラードの「only lonely」では、愛と闇の両方が出てきますね。

ななみ:これもちょっとふてくされてますね。<どうせ世界は僕を愛してくれないけど、それでもいいと思えるような人がいればいいなあ>みたいな。だけど優しく歌ってる歌なんですよね。そこは子供らしさというか……ふてくされる、イコール、子供なんです。私の子供の部分が最高に出てる2曲ですね。

ーーそうして「桜 -19th Edition」以降の流れで、アルバムのテーマがはっきりと見えてきますね。

ななみ:そうですね。この「桜」は19歳の時に録ったものなんですよ。何でこんなに違うんだろう?と。むしろ19歳の時のほうが、自分が子供だったからこそ、大人っぽく歌おうと思ってたと思うんですけど。

ーー今はもうちょっと違うんですか? 気持ち的に。

ななみ:今は……そうですね、ちょっと大人になったからこそ、子供だった部分を出そうと思ってますね。子供の時は、その時の自分を書くことは難しかったんです。だからこそ大人になりたくて、大人っぽい歌詞を書いたり、歌を歌ってたんですけど……大人になったら自分が子供だったことに気づけるから、子供っぽい、こうしてふてくされたりしてるのが出てきてるんだろうなと思いますね。

ーー自分をふと振り返ったら、ちょっと大人になっていたということですか。で、次の「これを愛として」は、ななみさんらしいバラードですね。

ななみ:これは意図していますね。この1曲だけなんですよ、今までの私らしい曲というか。だからこそ、愛してほしい歌だなと思います。

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