猪又孝の『ラブソング妄想分析』 第4回:ななみ&あいみょん
新世代シンガー・あいみょんとななみの歌詞に注目 2人のラブソングに見る恋愛観の違いとは?
ラブソングの主人公を勝手に妄想しちゃう本連載。今回は音楽シーンでブームとなっているギタ女にフォーカス。強烈な個性で脚光を浴びている二人の新人シンガーソングライター、あいみょんとななみを取り上げる。
ギタ女と言うと、お嬢様風の清楚なルックスで、透明感のある爽やかなポップスを歌っているイメージが強いかもしれないが、この二人はタイプが異なる新種だ。
あいみょんは兵庫県西宮市出身の19歳。6人兄弟の2番目で、さらに甥っ子と姪っ子が計3人同居する大家族の中でたくましく育ったとか。一方のななみは大分県出身の21歳。学生時代を「暗黒時代」と振り返る彼女は、当サイトのインタビューで、当時は学校にも行かないヤンキーだったと語っている。(参考:ななみ、1stアルバムに込めた“人生の感情”を語る 「たぶん一生、愛を叫んでるんだろうな」)
二人とも歌詞には毒気やネガな感じもあるが、メロディーはとてもキャッチーで、どろっと陰気なわけでもないし、痛い感じの情念系でもない。あいみょんの表現はちょっとヤンチャで素直すぎるほどストレート。ななみは技巧派タイプでポエティックな表現のなかに、意思の固さや芯の強さを感じさせる。いずれにせよ、どちらも自分の経験や心の澱を飾らない言葉で歌う等身大のシンガーだ。ただ、そんな二人が同時期に発売したデビューアルバムにはラブソングがズラリ。というわけで、収録曲を引き合いにして、二人の恋愛観の違いに焦点を当てていこう。
あいみょんのアルバム『tamago』で耳を奪われるのは、その過激な歌詞からテレビ局やラジオ局で放送禁止という事態を引き起こした「貴方解剖純愛歌~死ね~」。これは、好きな人の側にいたいという思いが募りに募って、《あなたの両腕を切り落として》《あなたの両目をくり抜いて》、自分の身につけてしまいたいと歌う阿部定も真っ青な猟奇的ラブソング。サビでは《ねぇ?》と切実に呼びかけたあと、《死ね。》と韻を踏みながら迫り、しまいにはその人が他人と手を繋いでるのを見たら《指を食いちぎり》《足を引き裂き》《唇を縫う》と歌う。けれど、この残虐極まりない衝動は、恋愛における嫉妬・束縛・独占欲の裏返し。我を忘れるほど相手に恋い焦がれ「食べちゃいたいくらい好き」なんて思ったことがある人も少なくないだろう。特に10代の恋愛は感情のままに突っ走りがち。そんな湧き上がる思いを正直すぎるほどの歌詞で描写した、とてもピュアで、それでいて切ないラブソングなのだ。