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円堂都司昭による追悼コラム

森岡賢は、新たな化学反応を求めていたーーSOFT BALLETからminus(-)までを改めて振り返る

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 驚いた。体調不良を理由に3月のソロ・ライブが中止されたとはいえ、つい最近まで、精力的に音楽活動に取り組んでいたのだ。しかし、森岡賢は6月3日に心不全で亡くなったと9日に発表された。49歳の若さだった。

 キーボーディスト、コンポーザー、パフォーマーとして、様々なユニット、ソロ、客演で異彩を放った人である。代表的な活動といえば、やはりSOFT BALLETになるだろう。藤井麻輝、遠藤遼一とともに結成し、1989年にデビューしたこのユニットで、森岡はアーティストとして広く認知された。1995年に解散したが、2002〜2003年には一時的に再結成している。

 打ち込み中心のテクノ・トリオというSOFT BALLETの編成には、YMO、TMNという先例があった。ただ、YMOはインストゥルメンタルの曲の割合が多かったし、全員が楽器演奏者だった。また、TMNはボーカル1人+演奏する2人という構図だった。位置が固定されるキーボードが中心となるライブは、ドラマー以外のメンバーがみな動き回るギター・バンドなどに比べれば、ステージが静的になる。クールに見える。それに対し、SOFT BALLETも遠藤がボーカル、森岡と藤井が演奏という分担ではあったが、ライブにおいてボーカル以外の2人まで存在感のあるパフォーマーとして機能していたのが特徴である。

 1994年にLUNA SEA、BUCK-TICKとともに「L.S.B.」ツアーを行ったこともあるSOFT BALLETは、この2バンドと同じく当時はヴィジュアル系に数えられていた。髪型も衣裳も、見た目のインパクトがあるものだった。そのうえで、遠藤は歌世界に没入した雰囲気で、時に祈るようなポーズをしつつ、艶のある低音を響かせて歌う。一方、藤井はピーピーガーガーとノイズを発し、場面によっては鬼の形相でパーカッションをひっぱたくという強面な役回り。そして、森岡は、シンセもパーカッションもダンスしながら演奏するのだった。

 今でも強烈に覚えているのは、3作目のアルバム『愛と平和』の発表に伴う1991年のライヴ(11月22日NHKホール)。同作は、同年に発生した湾岸戦争(クウェートに侵攻したイラクへの措置として、アメリカ中心の多国籍軍が攻撃し、日本も資金協力した)をテーマにした反戦的な内容である。

 SOFT BALLETは基本的に、森岡と藤井が作曲を分担し、遠藤が作詞する体制をとっていた。ライブでは、『愛と平和』冒頭に収録され、多国籍軍の「砂漠の嵐作戦」を意識して「SAND LOWE」(砂のライオン)と題された藤井の曲も披露された。荘重なサウンドにサイレンのような音も混じる同曲で、森岡は座って厳かにピアノを弾き、藤井はガスマスクを着けてシンセを操る。アルバム・コンセプトを象徴する、不穏な演出といえる。

 しかし、続いて演奏された『愛と平和』収録の森岡作曲「AMERICA」でガラッと趣が変わる。同曲も日米関係を風刺してアルバム・コンセプトに沿った曲なのだが、金色の短髪で人形のようなルックスの森岡は、短パンで腰をくねらせステップを踏みながらシンセを弾いていた。同曲に限らず、ダンスしながらというのは彼のいつもの演奏スタイルだったが、「SAND LOWE」との落差が大きかったから特に印象に残っている。彼はキーボーディストなのに、ヴォーカルと同じくらい目立つ人だった。SOFT BALLETのステージにおけるイメージを単純に整理すると、遠藤が耽美、藤井が破壊、森岡が快楽を担当していたといえる。

 クイーンのフレディ・マーキュリーやデヴィッド・ボウイのステージでの姿に憧れたと、森岡は過去に語っていた。彼の中性的なパフォーマンスには、そうしたアーティストたちからの影響もあっただろう。また、YMO、TMNという先輩テクノ・トリオにもダンス・ミュージックを意識した部分はあったが、SOFT BALLETは、エレクトロニック・ボディ・ミュージックと呼ばれたジャンルから影響を受けながら始動したユニットである。1980年代後半以降に一つの流れになっていたこのジャンルは、それ以前の打ち込み系音楽以上にビートを強め、インダストリアルな要素を含めたサウンド傾向だった。SOFT BALLETのデビュー・シングルが森岡作曲「BODY TO BODY」だったのも、エレクトロニック・ボディ・ミュージックの「ボディ」を意識したものに思えた。彼らのステージは、前述の通り三者三様に肉体的だったのである。

      

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