AK-69『Flying B』インタビュー
AK-69、自身のヒップホップ精神を語る「『音楽プラス生き様』が、一番のオリジナリティ」
AK-69が自ら代表を務める事務所「Flying B Entertainment」を立ち上げ、2月24日に第一弾シングル『Flying B』をリリースした。今回リアルサウンドでは、AK-69へのインタビューを敢行。独立を決意した経緯や自身の音楽に対するこだわり、 AK-69が大切にする“ヒップホップ精神”について存分に語っていただいた。(編集部)
「『カッコよさ』にこだわって、ブレなかっただけ」
ーー表題曲「Flying B」は、自ら代表を務める事務所「Flying B Entertainment」を立ち上げたことへの決意表明が込められていますね。
AK-69:事務所を立ち上げて独立したと言うと、稼ぎに走ったというイメージを持つ方もいると思うけど、そうではないです。アルバム『THE THRONE』(2015年)のリリース後、区切りの良いタイミングで事務所との契約が満了して。そのまま契約を更新して現状維持を取るのか、大きな勝負を取るのかの二択を迫られて、迷ったんだけど、後者を選択しました。たとえば大きな事務所と契約するという選択もあったけれど、自分はこれまで、あえて厳しい環境に身を置いて、それをなし得たときに生まれる「カッコよさ」をテーマにしてきました。だから、独立してイチからビルドしたもので、自分を新たなステージに持っていこうと考えた。今まで一貫して求めてきた「カッコよさ」にこだわって、ブレなかっただけですね。
ーーAK-69のアティチュードをそのまま貫いた、と。より大きなステージを目指して「成り上がって行こう」とする姿勢は、ヒップホップの精神にも適っていると感じます。
AK-69:昨今の若い世代の人たちは欲がなく、成り上がろうという気持ちがないと言いますが、根底には「いつか絶対にやってやる」っていう気持ちがあると思うんですよ。たぶん、自分を取り巻く環境に流されて「そんなこと考えててもな」と、フィルターがかかっているだけ。でも、俺はもともと「成りあがれよ」とメッセージを送っているわけでもない。目標を定めて、そこに向かうこと自体にすごく意味があると思っていて。がんばったら夢が叶うとか、そういう綺麗事はすごく嫌いなんですけど、がんばらなかったら、その目標へ向かう道に一歩踏み出さなかったら、なんにもならないじゃないですか。その一歩を踏み出して、ネガティブと戦いながら進む中に、いろんな学びや感動があって、それこそが生きている意味だと思うんです。そういう風に生きる方がカッコいいと思うから、体現しているんですよ。俺は特別な才能があったわけでもないし、むしろハンデがあった。でも、自分の思いを研ぎ澄まして、行動して、ここまで来ているのは事実。どんな状況でも己を磨くことは大事だってことは、ちゃんと伝えたいですね。
ーー「Flying B」のMVは、どしゃぶりの雨の中から這い上がるようなイメージです。
AK-69:ストリートで生まれたカルチャーでここまで来てるので、苦労を挙げたらキリがないですよ。オーディションで人生が変わったとか、そんな世界じゃない。偏見もあったし、ちゃんとした企業やイベントには相手にもされなかった。雑誌にレビューすら載せてもらえなかったくらいで。もちろん、それは俺が取り上げるに足らない存在だったからなんだけど、いまはこうして取材もしてもらえる。繰り返しになるけれど、そういう悔しいこともあったからこそ、あえてストリートのやり方を通して、自分の力でデカくなろうと思っています。
ーー悔しさをバネにして、ここまでやってきた。
AK-69:たぶん、どこかで楽な選択を一回でもしていたら、ここまで頑張ってなかったかもしれないです。すべてを見返すには、やっぱり行動しかないんですね。俺の音楽について、好みは人それぞれだから全員は納得させられないけれど、俺のやり方に文句をつけられるヤツは誰もいないはず。なぜなら、行動でちゃんと示しているから。いつも悔しい思いをする度に、そいつらに負けたくない、その現状に負けたくないっていう気持ちでやってきて、だからこそ「カッコつける」ことにこだわるんです。「カッコつける」っていうのは、口で良いことを言うとか、キザに振舞うとか、おしゃれをするとかじゃない。「言ったことをやってのける」ってことなんですよ。それができたら、誰も文句をつけられないんです。今までカッコつけるために命張ってきたことが無駄になると思ったら、簡単には投げ出せないですね。
ーー「Flying B」というタイトルには「B級から成り上がる」という意味がこめていると。AK-69にとっての“B級”とは?
AK-69:今でも俺は自分自身をB級だと思ってます。昔の自分からしたら、今は成功していると言えるかもしれないけど、上には上がいるので。もし現状に満足して、自分でA級だと思えていたら、独立もしないし、「Flying B」も生まれていない。俺にとって“B級”っていうのは、現状に満足せず、常に上を目指しているということだと思う。でも、良いミュージシャンで現状に満足している人って、果たしているのかな? みんな、お金のためならとっくに辞めてるだろうし。どんなに有名になっても、純粋にグッドミュージックを生み出せるのは、きっとみんな「こういう曲を聴いてもらいたい」っていうモチベーションがあるからだと思います。あと、俺はもともと「ラップがイケてるよね」とか、評価されるところから始まっていないのも、自分をB級としている理由かな。はじめたときは、我ながら「全然カッコよくねーな」と思いながらやってたんで(笑)。でも、そういうヤツでも羽を生やすことができるんだぜってことは言いたいです。