AK-69、自身のヒップホップ精神を語る「『音楽プラス生き様』が、一番のオリジナリティ」

AK-69がヒップホップ精神を語る

「『音楽プラス生き様』ってとこが、一番のオリジナリティ」

ーー2曲目「We Don’t Stop feat. FAT JOE」では、D.I.T.C.のメンバーとして90年代より活躍するFat Joeと、日本人としてはじめてコラボしています。

AK-69:今回のコラボは、俺がニューヨークに1年半くらい滞在していたときのつながりがきっかけで成立しました。金を積んで出てもらったとかじゃなくて、すごく自然な流れでコラボができたのは嬉しいし、ニューヨークに行った意味がありましたね。

ーーアメリカに行ったのはたしか、2012年ですよね。

AK-69:ええ、2011年にインディーズのソロラッパーとして初のアリーナワンマンを名古屋の日本ガイシホールというところでやって。そのまま次のアルバムの制作には入れたんですけど、やっぱり自分に挑戦を課して、その中で生まれたメッセージをちゃんと紡いで次のアルバムにしたいなと。そこで、今までできなかった挑戦の一つでもあった渡米を決意しました。移住する形だったので物理的に大変だったし、言葉の壁もあったし、しかもその中で前作をしのぐアルバムを期限内に作らなければいけなかったので、大変ではありましたね。

ーーアメリカのヒップホップシーンはどうでしたか。

AK-69:インターネットやCDを通して、俺たちが探さないと入ってこなかったものが、むこうに行けばそれが日常にあって。ラジオをつけても、街でもクラブでも、どこでも鳴ってるんですね。ヒップホップの身近さ、カルチャーとして浸透するということの意味が改めてわかりました。ヒップホップ専門のラジオステーションまであって。ナンバーワンのラジオステーション『HOT 97』では何回かインタビューしてもらったり、ライブに出させてもらったりして、いい経験になりました。中でも、帰国前に出たイベントがいちばんすごくて。カニエ・ウエストとか、2チェインズも出てきたと言われている『WHO’S NEXT』ってライブなんですけど、お客さんもヘッズだし、イケてなかったら余裕でブーイング飛んでくるくらい厳しくて。やっぱり緊張しましたね。でも、MCでヒップホップに対するリスペクトを語ったら、お客さんがみんな一気に湧いてくれて。受け入れてくれた瞬間は、感動しましたね。

ーー受け入れられ方は日本とはちがいますか。

AK-69:全然ちがいます。日本だったら俺の音楽を知らなくても、名前を知っているからって見るじゃないですか。だけど、あっちは俺のことなんてなにも知らないんで、ただの変なアジア人が歌ってるくらいの感覚。でも、俺が日本人であることと、日本人がヒップホップのカルチャーに対してどういうことを思っているのか、俺の歌は日本語で全然意味わかんないと思うけど、俺はこーゆうこと歌ってるから、ヒップホップに対する愛をわかってくれってことを伝えたら、「面白いやつ」と思ってもらえて。たぶん、オリジナルだってことが伝わったのがデカかったと思う。お客さんも正直というか、見て感じたままを評価する。日本だと有名な人だったら盛り上がるし、興味がわく。あっちは逆に、有名な人でもクソなライブをしたら、余裕でブーイングが飛んでくる。逆に、無名なヤツでもみんなの心をつかめば盛り上がる。だからこの国は、ショービズがこれだけデカいんだなと。

ーー目が厳しい分、チャンスもあると。

AK-69:厳しいと思います。そして素直ですよね。いいものはいい、悪いものは悪いってはっきりしてるんで。だからこそ、メディアとかレーベルが仕掛けたヒットじゃなくて、客が認めた突然のヒットが起こりうる街なんだと納得しました。アメリカン・ドリームってこういうことなんだな、と。

ーーちなみに、AK-69のオリジナリティとは。

AK-69:生まれたときから日本の歌謡曲に親しんで、姉がやっていたクラシックを否応なしに聴きながら育ってきたので、そういう音楽の引き出しから引き出されるメロディとかかな。たぶん、外国人が聴くと「日本っぽい」って感じるはず。あとは、俺の場合はこれまでの生き様を歌っているから、同じ言葉をしゃべってても、魂がのって言霊になる。たとえば「覚悟を決めろ」って誰にでも言えるワードだけど、本当にギリギリの戦いの中にいるやつがいうと、説得力が違う。「音楽プラス生き様」ってとこが、一番のオリジナリティだし、それをなくしたら自分の音楽じゃないと思います。

ーーどうすればオリジナリティを磨けるでしょう?

AK-69:自分にとってのウィークポイント、自分は嫌だなって思っているところって、他人からすると長所だったりするんですよね。だから、自分を誰かと比較して、みんなにどう見られてるんだろうとか、どう思われてるんだろうって気にするのをやめるところから始めるのが大事なんじゃないかな。そして、本来の自分がどうありたいのかに気づく。俺だって、他のアーティストとライブ会場の大きさや、CDの売上を比べることもできるけれど、そんなことをいちいち気にしていない。俺の誇りは、ここまで自分の意思でやってきたことだし、歩むべき道のりは人それぞれ違います。だから規模の大小とか優劣じゃなくて、自分の誇れるやり方、生き方をするっていうのがすべてなんじゃないかな。

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