「人生で一番ショッキングなことを表現したい」Tom-H@ck&Mayuが語る、MYTH & ROIDの目指す音楽

MYTH & ROIDが奏でる「刺激の音楽」

「日本庭園の美しさに通ずることをやろうとしてる」(Tom-H@ck)

ーーそしてカップリングには「ICECREAM QUEEN」が収録されていますが、この曲の作詞はどなたが手がけたんですか?

Mayu:これは私が書きました。実は「ANGER/ANGER」と「ICECREAM QUEEN」には共通点がたくさんあって、結局のところ歌っている内容は一緒なんですよ。楽曲だけ聴くとすごくポップでパーティチューンぽいし、タイトルもパッと見ポップで可愛らしいイメージがあるんですけど、実は「ICECREAM QUEEN = I SCREAM QUEEN」で「私は叫んでる女王」という意味で。みんながいろんな理不尽なことや世間に対して感じる怒りを「私がそれに対して怒るから、みんなもついてこい」と訴えかけていて、そういう意味で「QUEEN」という単語を使っている。「ANGER/ANGER」では怒りの対象に向けて「燃やしてやる」と言ってるのに対して、「ICECREAM QUEEN」ではそういう対象を冷たいものと比喩して「溶けろ!」と歌っている。明るい曲調なんですけど、実はすごく暗いことというか怒りについて歌っているんです。

ーーひとつのパッケージとして統一したテーマがあるわけですね。ではサウンド面はどうですか? 「ICECREAM QUEEN」はヘヴィでダークな「ANGER/ANGER」とは真逆で、メジャーコードで疾走感がある楽曲ですが。

Tom-H@ck:曲自体の雰囲気は今おっしゃったようにメジャーコードでコード進行もすごくシンプル。「ANGER/ANGER」と比べたらかなり違うんですけど、「MYTH & ROIDってなんなの?」というひとつ貫かなくちゃいけないものがあって。例えばサウンドが少しハードになっていたりとか、ギターやドラムの音色とか、そういったポイントは意識しましたね。例えばただのブリティッシュロックにならないように、ちゃんと僕たちの色を残したまま表現したいことをやるという。

ーー確かにドラムの音ひとつ取っても、音色や抜けが聴いていて気持ちいいんですよ。

Tom-H@ck:「ICECREAM QUEEN」でのドラムの音色って聴く人によって弱く感じるので、なかなか採用しないんですよ。実はロックの場合ってもっと違う感じで、それこそNickelbackのドラムの音なんてめっちゃゴンゴンいってますよね。あれを真似してはダメだなと。今回に関してはアンビエント感や抜け感が劇伴やサウンドトラックに近くて、そこらへんが無国籍というか、誰もやってない感じにつながってるんじゃないかな。そういう意味では、制作という点において僕たちができることって、薄皮を重ねていって、重箱の隅をつついて作る日本の美というか、日本庭園のあの美しさに通ずることをやろうとしてるんでしょうね。

「家族や友達ではなく、味方でありたい」(Mayu)

ーーこのシングルを含めて、これまでにMYTH & ROIDとして4曲のオリジナル曲が発表されましたが、となると将来アルバムでMYTH & ROIDがどういう世界を表現してくれるかがすごく楽しみですね。

Tom-H@ck:いろんなところで言ってるんですけど、MYTH & ROIDってすぐに結果が出るユニットではないと、僕はプロデュースする上で思っていて。アルバムが完成して、そこで初めて頂点を迎えるんじゃないかな。すでに僕の頭の中にはアルバムのイメージがあるんですけど、完成した時点でやっと「僕たちがMYTH & ROIDだよ」と堂々と言えるようになるんだと思います。

ーーそして、そこからさらに進化、変化を重ねていくと。

Tom-H@ck:逆にその先は、ぶっちゃけどうなるかわからない。それこそ全然売れてない可能性もあるし、すごく売れてる可能性もあるわけで、ちょっとワクワクしてるんですけどね。

ーーもしかしたらその結果が、今後の作風に影響するかもしれない?

Tom-H@ck:絶対にすると思いますよ。そこはシビアに、プロデューサーとして絶対に忘れちゃいけないことだと思うんで。どんどんアップデートしていって、こうするべきだよなということはどんどんやっていこうと思います。

ーーMayuさんは自分自身を歌で表現しながらMYTH & ROIDを作り上げていくわけですね。

Mayu:そうですね。よく歌手の方って「私の歌を聴いて元気になってもらえたら」とか「みんなのために歌ってる」とかおっしゃってますけど、私も感謝の気持ちは大前提としてあるけど、人のために歌ったことは一度もなくて。私の歌を聴いてハッピーになってほしいというよりは、私の歌を聴いたときにその人が「本来のその人」になってほしいんです。現代社会でいろいろ自分を押し殺したりしてる人たちが私の音楽を聴いてる4分ぐらいの間はあなた本来の姿であってほしい、そういう存在になりたいなと。そういう意味では、みんなの味方でありたいなと思ってます。

ーー「味方」ですか?

Mayu:はい。家族や友達ではなく、味方でありたい。だからこの先にアルバムを出したときに、MYTH & ROIDがこういうものだっていうのが皆さんにわかっていただけると同時に、そのアルバムが皆さんの味方みたいな存在になるのがベストかなと。それがハイクオリティで、さっきおっしゃっていた無国籍なものにすることができたらベストですね。

ーーMYTH & ROIDの楽曲は聴き手の背中を押すというよりは、自分と向き合うための音楽だと。

Mayu:だから明るいことばかり歌おうとか、希望が持てるような言葉を歌詞にたくさん入れようとか、そういうことは特になくて。むしろみんなでワイワイ盛り上がる場よりも、1人2人と一緒に愚痴を吐き出せる感情の開放の場になってほしいなというのがあります。

ーーそこはいわゆるJ-POPとは一線を画するところですよね。

Tom-H@ck:共感じゃないっていうところでは、そうかもしれないですね。僕は人間を一番突き動かすものって、悲しみのものすごいやつとか恨みのものすごいやつとか、刺激の最果てにある感情なんですよ。その人の人生で一番ショッキングなことって人間を動かすパワーの源になると思うし、それを音楽で表現できたらこんなに気持ちいいことはないですよね。

ーーここまでお話を聞いて思ったんですが、Tom-H@ckさんはMYTH & ROIDとして活動していく中では、プレイヤーとしてよりもプロデューサーとしての視点が強いんでしょうか?

Tom-H@ck:たぶん僕の人生がそういうものの考え方であって、僕を踏み台にしていろんな人が幸せになってほしいと思う人間なんです。それはMYTH & ROIDにおいてもそうだし、OxT(オクト。Tom-H@ckがボーカリストのオーイシマサヨシとともに結成したユニット)もそうだし、プロデュースワークのときもそうなんですよね。最近はアレンジせずにプロデュースだけをする案件がすごく増えていて、そうすると何が起きるかというと、プロデュースした分しかお金が自分に入ってこない。でもそれを進んでやる自分がいるんです。周りの後輩や作曲家、編曲家がもっと幸せになってほしいなというほうを取ってしまう性格なんですよ。だからMYTH & ROIDでも自分がヒーローになりたいんじゃなくて、Mayuちゃんに対して「カリスマになれよ」っていう思いのほうが強いんです。まぁ年齢的にも10歳近く離れているので、自分が経験したことで教えられることはできる限り伝えたいなと。だからプロデュースという意味では、そういう意識のほうが強いのかもしれないですね。もちろんプレイヤーとして自分を誇示したい部分もありますけど、優先順位的には2番くらいかな。

(取材・文=西廣智一)

■リリース情報
MYTH & ROID『ANGER/ANGER』
発売:2016年2月24日(水)

価格:¥1,200(本体)+税
<収録曲>

1.ANGER/ANGER(TVアニメ『ブブキ・ブランキ』EDテーマ)
作詞・作編曲:MYTH & ROID
2.ICECREAM QUEEN
作詞・作編曲:MYTH & ROID

3.ANGER/ANGER(instrumental)
4.ICECREAM QUEEN(instrumental)


■ライブ情報
MYTH & ROID スペシャルミニライブ
2016年2月27日(土)愛知・イオンモール常滑 ワンダーフォレストきゅりお内 ワンダーステージ
(1)13:00~
(2)15:00~
ミニライブ&サイン会

2016年2月28日(日)広島・アルパーク 東棟2階 時計の広場
(1)13:00~
(2)15:00~
ミニライブ&サイン会

2016年3月5日(土)大阪・タワーレコード泉南店 店内イベントスペース
(1)13:00~
ミニライブ&サイン会

2016年3月5日(土)大阪・天王寺ミオ
(1)17:00~
ミニライブ&サイン会

2016年3月13日(日)東京・アキバ☆ソフマップ1号店
(1)12:00~
トークショー&ミニライブ

2016年3月13日(日)東京・とらのあな秋葉原店Cイベントスペース
(1)16:00~
ミニライブ&サイン会

MYTH & ROID Official HP
http://mythd-club.com
ブブキ・ブランキ
http://bbkbrnk.com/

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