fhánaが語る、2016年のポップミュージック論「日本の市場を大事にしつつ、より広い世界に音楽を届けていく」

fhánaが語る結成の経緯とアニソン論

 2016年1月23日、日本武道館でおこなわれたイベント『リスアニ!LIVE』でのステージでも評判高かったfhána。インターネット3世代のサウンドプロデューサー佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga(s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)と、ボーカリストtowanaによる4人組ユニットだ。ハイレゾ版も評価の高い、ハイクオリティなサウンドとTVアニメとの効果的なタイアップによって評価を高めてきた彼らが、1月27日に8thシングル『虹を編めたら』をリリースする。本作は大人気青春ミステリー、TVアニメ『ハルチカ ~ハルタとチカは青春する~』のオープニング主題歌であり、疾走感溢れる高品質なポップサウンドを届けてくれている。ネット文化×アニメ文化。まさに、21世紀のポップミュージックをアップデートしてくれるイノベーティブな存在だ。リアルサウンド初登場ということもあり、彼らが現在の音楽シーンの中でどんなことを考え活動しているのか聞いてみた。(ふくりゅう)

「誰を船長にするかって同世代同士だともめそう」(kevin mitsunaga)

――fhánaはネットカルチャーとアニメカルチャーを横断しながら、クオリティの高い音源を立て続けにリリースしてきました。それこそサウンドプロデューサー3人とボーカリストとのユニットという形態は、今の音楽シーンには他にないですよね。意識的に差別化を考えていたのですか?

佐藤純一(以下、佐藤):インターネット3世代みたいな、ストーリー性を意識していました。ちなみに、最初はゲストボーカル制だったんです。m-floの「Loves」シリーズみたいなプロデュースチームを考えていたのですが、想定外というか、想定以上にtowanaのボーカルが良かったので正式メンバーになってもらいました。そこはシナリオが分岐したところですね(笑)。

――レーベルで、アニメに特化したランティスを選ばれたってのも新しい考え方ですよね。

佐藤:もともと今のfhánaのプロデューサーの佐藤純之介さんとは古くからの付き合いだったんです。fhánaを結成する前にやっていたFLEETってユニットでデビューしたときも実はランティスでした。その流れもあってfhánaを結成して音源をつくったときに、聴いてもらいました。FLEETのときはシングルを1枚出して次のレコード会社に移籍したんですけど「今回はがっつりリベンジしたい!」みたいな。そんなパーソナルなつながりが強いですね。

――アニソンはもともと詳しかったのですか?

佐藤:FLEETでデビューする前はそんなにアニソンとかに興味があまりなくて、ロキノン的な方向が好きでした。それこそFLEETはJ-ROCKではなくて奥のほうのアニソン売り場に置かれたときは「うーん?」とか思って、その直後に別レーベルから話があって、ランティスは専属契約じゃなかったから1枚出して次いこうみたいな感じだったんです。でも、ちょうど2006年に『涼宮ハルヒの憂鬱』がはじまって、佐藤純之介さんがハルヒのキャラソンを担当していたことがきっかけでアニメカルチャーにはまりました。もともとジブリやエヴァとかは好きだったんですけど、そこと今でいう深夜アニメは自分の中でつながってなかったんですよ。だけどハルヒによってぐっと近づいていったんですね。あと、2006年に『ニコニコ動画』が出てきて、その後初音ミク文化が盛り上がっていって、ロキノンっぽい活動がしたいと思ってランティスから他のレーベルに移籍したけど、世の中の流れ的にはこっちはもう古い感じがするなと。

――その時代感がfhánaの存在の面白さですよね。しかも両方とらえられるセンスを持っていることで、他アーティストとの差別化が一歩飛び抜けているなと。

佐藤:FLEETをしばらく続けて、なんとなく新しいことをやりたいなと思い始めていた時期にTwitterを介してyuxukiくんと知り合って。プロフィールにボカロの曲を作っていると書いてあって、聴いてみたらすごく良い感じで。kevinくんもネットレーベル界隈で活動していて、曲を聴いてすごいかっこいいなと思って。僕もボカロの曲をつくって、ニコニコにアップしたんですよ。でも、ボカロをつくりつづけるより、違うバックグラウンドというか「インターネットを中心に活動していた3世代のメンバーで新しい音楽をつくったら面白いじゃないか?」と思って結成したのがfhánaなんです。

――メンバーの役割分担はどういう感じなんですか?

yuxuki waga(以下、yuxuki):基本的にはベースとなる曲をつくった人が舵を取って、それぞれがアレンジしてきたものをまとめていく感じですね。

――ベンチマークとなるアーティストやプロデューサーはあったりしたんですか?

佐藤: YMOですね。お三方ともそれぞれつくれて、でもYMOとして集まるとまたすごいものができるみたいな。憧れです。

――サウンドプロデューサー同士、ぶつかったりとかはないのですか?

yuxuki:うまくいっている原因があるとすれば年が違うからですかね。同じ年の人が集まると絶対衝突しそうだなとは思います(苦笑)。

kevin mitsunaga(以下、kevin):誰を船長にするかって同世代同士だともめそうですよね。クリエイターって基本的に自己主張が強いので(苦笑)。でも得意分野がそれぞれあるから、それを活かし合えるのは強みですね。

――それこそtowanaさんはfhánaというユニットをどんなふうに見ていましたか?

towana:最初はギターのyuxukiくんと別のバンドをやっていたんです。yuxukiくんが新しいユニットをやっているところからfhánaを知って、曲を聴いたときにレベルの高い人たちだなっていう印象がありました。なので、歌ってみて欲しいといわれたときはうれしかったですね。

――客観的にどんな3人ですか?

towana:最先端なことを意識的にやろうとしているみたいな。おしゃれな感じですよね。ネットカルチャーの文脈でかっこいいことをするみたいなイメージでした。

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