2ndシングル『ANGER/ANGER』インタビュー
「人生で一番ショッキングなことを表現したい」Tom-H@ck&Mayuが語る、MYTH & ROIDの目指す音楽
「4、5分の曲の中で映画っぽく演出」(Tom-H@ck)
ーー今回の「ANGER/ANGER」はデジタルなハードロックサウンドを軸に、クラシカルで演劇的なパートも含む起伏の激しいアレンジが施されています。曲を通して聴くと非常に映像が浮かびやすくて、そういう要素もMYTH & ROIDの個性のひとつなのかなと思いました。
Tom-H@ck:そうかもしれないですね。SKY-HIさんがあるインタビューで「ライバルは映画」だと言ってましたけど、僕も本当にそうだと思っていて。SuGの武瑠くんも一緒で、あの人も演出家だと自分で思いながらやっている。僕も音楽は演出だと思っていて、僕の楽曲における起伏の幅がかなり大きいのも演出のひとつ。MYTH & ROIDはそこがかなり強くて、演出の仕方がチープにならないようにすることは常に心がけてます。
ーーあるアーティストさんも、自分はソングライターではなく脚本家だと言ってたんですよ。自分は曲でストーリーの道筋を作って、ボーカルにはこういう役、ドラムにはこういう役と割り当てているんだと。そういう考えに共通するものがあるんでしょうか。
Tom-H@ck:絶対にあると思います。それって、やっぱり市場が絡んでると思いますよ。これが1曲出して何十万枚も売れる時代だったら、その思考になったとしても浅かったような気がするんですよね。でも今は音楽自体が売れなくなって人の手元に届くまでが本当に大変だから、曲だけで終わるんじゃなくてそこに何かしら自分で説明を加える。そういった演出で音楽を聴かせる要素は、どんどん強まってる気がします。だからニコニコ動画で音楽と映像を融合させるのもそうだし、そういうところからどんどん音楽の価値観が変わってきてる感じもありますよね。
ーー確かに今の若い世代って、音楽と映像をひとつとして考えるケースが多いですよね。
Tom-H@ck:ですね。僕は洋楽チャートからニコニコ動画までいろいろ研究してるんですけど、日本人の若い子って刺激物が特に好きなんですよ。音楽でいうと、古い曲を聴いたら涙が出てくるとか、その頃の苦しい気持ちがよみがえってくるとか。その最高峰が、映像と音楽が融合することによる刺激なんです。そこはかなり求められてると思いますよ。さっきの話に戻りますけど、4、5分の曲の中で映画っぽく、舞台っぽく演出するというのはそこにつながってくるのかなと。
「私の人生自体がひとつの芸術」(Mayu)
ーーMayuさんは今回の「ANGER/ANGER」を歌う際、歌詞の中やアニメの世界に自分の思いと共通するものを見つけて、そこに自分を重ね合わせて歌っているんですか?
Mayu:「ANGER/ANGER」に関しましては作・編曲をTomさんがされていて、作詞は「L.L.L.」と同じhotaruさんにしていただいているんですよ。なので私はこの曲に関してはそこまで直接的に携わってないんです。でも「怒りが怒りを呼ぶ」というテーマのこの歌詞を読んだとき、私が書いたわけじゃないのに私が思っていることが書いてあると思って、自然と自分が歌になれた楽曲だったんですよ。逆に前作の「L.L.L.」という曲に関しては、物語の主人公に対する愛情の最果てを歌っていたので、私が普段思ったことがないことも歌詞の中にあって。そうなったときは歌詞のキャラクターを自分に憑依させた感覚で歌ってます。そこは「歌が私で、私が歌で」というところと似てるようで少し違うところでもあるんですけど、アニメ作品に携わらせていただいたからこそ出てきた「私が歌になる、新たななり方」なんだなって。そういう意味ではすごく勉強になってます。
ーーそうなんですね。でも「ANGER/ANGER」に関しては自然と自分を重ねることができたと。
Mayu:そうですね。今作では敵側の心情を歌っているんですけど、そのキャラクターを抜きにして考えても本当に純粋に私の感情そのままという歌詞だったので。個人的にはこういう立場になったからこそなおさらそう思うんですけど、「歌が私で、私が歌」と同時に「常に芸術であれ」という感覚もあって。自分の楽曲だけではなく、私の人生自体がひとつの芸術だと昔から考えているんです。だからこそ、MYTH & ROIDで発表する楽曲だけでなく、もし私が別の機会に何か楽曲を出すことがあったとしたら、そのすべての楽曲とパフォーマンスが自分の人生の物語であって、遺書になるみたいな(笑)。そういう感覚が強いんです。
ーーその歌をつないでいったら、最終的に自伝ができるような?
Mayu:たぶんそういうふうになっていくんじゃないかなと自分では思っています。
ーーでもそれって、表現者としては最高の理想ですよね。
Mayu:はい。やっぱりこうやってアニメのタイアップをいただける機会もなかなかなければ、普通にデビューすること自体難しいっていう今のこの世の中で、こういう機会を与えていただけるのはすごくありがたいことであり、同時にいろんな責任も生じるわけで。でも根本にある「歌が私で、私が歌」という思いだけはブレさせることなく、そこを守ることができてこそ初めていろんなカラーが出せて、聴いている人に私の人生というもの、私がどういう人間かということがわかってもらえるようになるんじゃないかと感じています。