「人生で一番ショッキングなことを表現したい」Tom-H@ck&Mayuが語る、MYTH & ROIDの目指す音楽

MYTH & ROIDが奏でる「刺激の音楽」

 昨年9月にシングル『L.L.L.』でメジャーデビューを果たしたユニット、MYTH & ROID(ミスアンドロイド)が、待望の2ndシングル『ANGER/ANGER』を2月24日にリリースする。さまざまなアニメソングやアイドル、アーティストの楽曲アレンジやプロデュースで知られる気鋭のクリエイターTom-H@ckと、日本人離れした歌声とパフォーマンスが魅力の女性シンガーMayuからなる彼らが作り上げた新曲は、1月からスタートしたテレビアニメ『ブブキ・ブランキ』のエンディングテーマ。デジタルサウンドやクラシカルな要素を兼ね備えたミドルテンポのヘヴィロックチューンは、英語中心の歌詞もあってJ-POPやJ-ROCKの枠を超えた個性的な仕上がりとなっている。

 今回のインタビューではユニット結成の経緯や目指すべき方向性、そして新作で試みたチャレンジなどについて、それぞれの視点で語ってもらった。(西廣智一)

「歌うことは行為ではなく『歌が私で、私が歌』」(Mayu)

ーーこれまで裏方の印象が強かったTom-H@ckさんがなぜMYTH & ROIDを結成したのか、その経緯を教えていただけますか?

Tom-H@ck:もともとのきっかけは、周りのいろんな人から「お前はアーティスト活動をやったほうがいいよ」と言われたことで。自分的にはあまり表に出たくなかったんですけど、何年間も作家として活動していくうちに「自分が表に立って音楽活動をしたら、今表現したいことが自分の思ったとおりの形でみんなに届けることができるんじゃないか」という思考に変わっていったんです。で、その頃にちょうど出会ったのがMayuちゃんで、実際に歌も聴いてから会ってみて「じゃあ一緒にやりましょうか」という話になったことが結成までの流れです。

ーーMayuさんの歌を聴いた、最初の印象は?

Tom-H@ck:既存のJ-POPを3曲ぐらい歌ったのを聴いて。洋楽も歌ってたかな?

Mayu:歌ってました。

Tom-H@ck:だよね? それを聴いたときは、正直そんなに個性的じゃないなと思ったんです。でもビジュアルとか含めて、いろいろいただいた候補者の資料の中で一番興味が湧いたので会ってみて、実際にライブも観て。そこからプリプロとかやっていくうちに「すごく個性の強い子だな」と思うようになりました。

ーー何かピンとくるものがあったと?

Tom-H@ck:はい。一番心を動かされたのはライブを観たときで、ライブをしてるときのオーラがすごかったんですよ。それは今でも鮮明に覚えてます。

ーーMayuさんは以前から音楽活動を積極的にしていたんですね?

Mayu:そうですね。幼い頃から歌うのが好きで、小学生のときにみんなで演劇をやることになって歌とダンスを私が率先して作ったりして(笑)。洋楽が好きだったので、ちゃんと歌えるようになるまでずっと練習するのが自然と趣味になっていったんです。中学、高校の6年間は軽音部に所属して、ずっと文化祭や校内のイベントでライブ活動をしてました。その頃から、ただ好きで歌っていたのとはまた違った心持ちでやるようになって、軽音部の子たちも「もっと学校の外でMayuの音楽を聴いてもらうべきだよ」と言ってくれたのもあって、学校の外で活動するバンドも作って。1年ちょっと前までは続けていたんですけど、Tomさんが観てくれたのもそのバンドのライブだったんです。

ーーではプロになりたいという意思も以前からあった?

Mayu:ちっちゃい頃からその思いが強くて。歌う自分の姿以外は想像できなくて、ネガティブな意味ではないですけど、「歌手になれなかったら私、死ぬだろうな」と常に思いながら歌ってました(笑)。加えて私が人とはちょっと違うのは、歌うということは行為ではなくて私が生きていること自体が私にとっては歌であって、「歌が私で、私が歌」みたいな感じなんです。だからポジティブな感情もネガティブな感情も全部歌にしておきたいし、私が死んだときに私の歌も終わるのかなって。それはちっちゃいときからずっとある不思議な感覚で、そうやって歌というものと接してきました。

ーーそしてTom-H@ckさんがMayuさんという存在を見つけてしまったわけですね。

Mayu:すごく苦労は多いと思います(笑)。

Tom-H@ck:一緒にいるだけでもすごいエネルギーだからね。

Mayu:あはははは。

「外国人コンプレックスからたどり着いた無国籍感」(Tom-H@ck)

ーーサウンド的にはどういう方向性を考えていましたか?

Tom-H@ck:今は結構ロックな感じですけど、最終的にはいろいろやると思うんですよ。それこそアコースティックとか、もっと言えばジャズとか、何でもやりたいなと思ってます。

ーーこれまでに発表した楽曲が、たまたまデジタル色が濃いロックだったと。

Tom-H@ck:そうですね。「L.L.L.」も今回の「ANGER/ANGER」もアニメとのタイアップがあったので、こういうロック色が強いジャンルがいいんだろうなというのもあります。

ーーアニメとの親和性については、どのように考えていますか?

Tom-H@ck:自分たちからはアニソンをやっているとは言っていなくて。だからといってアニソンが嫌いということも全然ないし、むしろリスペクトしてるぐらい。やっぱりそのアニメ作品が求めているものを第一前提として考えて、同時に自分たちが何を言いたいのか、何を表現したいのかというのを常に大事にしています。

ーーMayuさんはアニソンに対してどういう印象がありますか?

Mayu:もともとアニメソングは好きで、よく聴いていたんです。逆に洋楽以外の邦楽といったらアニメソングばかりで、それ以外の邦楽はあまり聴いてなかったというぐらいで。とはいえ実際には自分の畑ではないわけであって、そこに自分が携わる際にどう関わっていけばいいのかは、このお話をいただいたときに最初に考えたことでした。

ーーこれまで発表してきた楽曲を聴かせていただくと、一般的なアニソンというよりも現代的なロックという印象がすごく強くて。しかもサウンド的にも国内のロックというよりもすごく洋楽的で、いい意味で国籍を感じさせない無国籍感があるんです。

Tom-H@ck:これ以上ない褒め言葉ですね。実は僕もMayuちゃんも、外国人コンプレックスをすごく持っていて。

Mayu:(強く頷きながら)ハンパじゃないですね。

Tom-H@ck:僕は19歳のときにギタリストとしてLAに音楽留学をした際に、全然通用しなくてこてんぱんにされて帰国した経験があって。それから10数年経って、ひとつ見つけた答えがあるんですけど、それが今言ってもらった無国籍なんですよ。どこの国とか関係なくみんなに聴いてもらえる、すごくいい音楽を僕たち日本人なら作れるんじゃないかなと思うんです。実はそこはすごく狙っていて、こうやって指摘してもらえたことはすごく嬉しいですね。

ーーMayuさん、外国人コンプレックスというワードが出たときに強く頷いてましたが。

Mayu:私も本当にちっちゃい頃からずっと持ってました。私は音楽が好きというよりも歌うことが好きで、歌うことにしか興味がなくて。例えば気に入った洋楽のヒット曲は発音含めて完璧に歌えないと嫌で嫌でしょうがなくて、英詞と和訳を両手に持ってコンポの前に座って何回も同じフレーズをリピートしてたんです。そのせいもあってか、いざ自分が曲を作るときに日本語の歌詞が浮かばなかった。メロディラインも邦楽というよりは、ずっと同じコードで進行していくシンプルなメロディラインの洋楽的なものしか出てこなくて。だから自分が曲を作るとなったら洋楽的なものしか作れなかったんです。

ーーなるほど。

Mayu:でも、自分の中で「これ、すごい名曲だわ」と思っていても、日本人の私が海外でこれをやったって売れないんだろうなという思いも常にあるし、逆にここまで洋楽的なものを日本でやってもそんなに売れないんだろうなというのも小さい頃から理解していて。だから「なんで私、外国に生まれなかったんだろう」ってよく思ってましたし、コンプレックスは本当に強かったですね。

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