音楽ストリーミング×シティガイドの新たな可能性とは?『TOKYO MUSIC BOX』中心人物に訊く

 ここまでは2社の現状や提携の理由などについて聞いてきたが、2015年は国内で大手の手掛ける定額制音楽配信サービスが多くリリースされ、“プレイリスト”という言葉が多くのユーザーに浸透した一年でもある。

 各サービスがユーザー獲得にあたってプレイリストの独自性を競う中、2社は『TOKYO MUSIC BOX』での取り組みを通じて、ミュージックカフェなどの実店舗とプレイリストの結びつきをどう発展させていくのか。山本氏は今回の施策を通じて、選曲を行なった店舗について「選曲された音楽を聴くだけでそのショップの空気感やお客さんの会話が聞こえてくる」ほどのこだわりを感じ、「CDショップや従来の音楽メディアとはまったく異なる『生き生きとした音楽』があった」と振り返る。今後については「台北や香港などアジアのミュージックヴェニューなども視野に入れ、音楽と街の関係を発展させていきたい」と、海外展開などで他社を一歩リードする考えのようだ。

 三木氏は今回のプロジェクトを「先に音楽サブスクリプションサービスの用途や可能性をあれこれ思案、提案するのではなく、まず発信したいことありきでそこにサービスを当てはめてみる」という手順で進行。その結果「音楽サブスクリプションは、それまでのメディアにとって代わる便利なものという認識」ではなく、「まったく別の次元にある、未知の可能性を無限に含んだメディア」であることを感じたという。既成概念でサービスを縛るのではなく、独自性を打ち出すためにより多くの可能性を見出し、トライ&エラーをくり返す。ほかの定額制音楽配信サービスよりも先に市場へと打って出た『KKBOX』とのタッグだからこそ、新規参入の会社に比べて挑戦するための足場が整っているという判断なのだろう。

 最後に、今回のプロジェクトを通して『TOKYO MUSIC BOX』がインバウンドとして機能する可能性について、山本氏は「『TOKYO MUSIC BOX』は台湾のスタッフも興味を持っている」とコメント。続けて同氏は『TOKYO MUSIC BOX』がアジアで普及したのちには「音楽好きな海外からの観光客が『東京に観光に訪れた時に、このミュージックバーに行ってみたい!』と思ってもらい、音楽を通じて私たちにできる経済圏も作れるんじゃないか」と大きな構想を掲げた。そのためには『KKBOX』自体に日本をプレゼンテーションする機能も必要になってくるが、これについて山本氏は「KKBOXで配信している楽曲の数々で『日本の魅力』や『日本のヴェニューの魅力』を新たなスタイルを通じて紹介していきたい」と返答してくれた。

 台湾ではすでにカフェショップとコラボした企画(http://event.kkbox.com/kkboxonair.tw/)を実施している『KKBOX』。2社の取り組みは音楽ストリーミングサービスや地域紹介メディアといったサービスの枠を超え、海外の音楽好きに新たな観光体験を提供できるだろうか。そのビジネス面の広がりを含め、行方を見守りたい。

(文=中村拓海)

『TOKYO MUSIC BOX』公式HP

■番組情報
『KKBOX presents 897selectors』
公式サイト

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