→Pia-no-jaC←が明かす、欧州ツアーで得た新たな音楽ビジョン「やっと遊べるようになってきた」

→Pia-no-jaC←が海外で会得した表現とは

 →Pia-no-jaC←が通算13作目となるニューアルバム『BLOOD』を完成させた。昨年から精力的にヨーロッパツアーや海外公演を重ねてきた彼らだが、今作ではそういった経験を「血脈(=BLOOD)」という形で表現。ヨーロッパを通じて自身のルーツを掘り下げた結果、かつてないほどにダンサブルで、聴き応えのある作品集に仕上がった。リアルサウンド初登場となる今回のインタビューでは、メンバーのHAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)に加え、サウンドプロデューサーの樫原伸彦氏にも参加してもらい、昨年からのヨーロッパツアーでのエピソードや海外公演が新作に与えた影響、そして今作で試した新たな挑戦についてたっぷりと話を聞いた。(西廣智一)

「昔は日本でもこうやったな」って

──→Pia-no-jaC←は昨年10、11月にヨーロッパツアーを敢行し、今年の夏にもイタリアツアーを実施。その後にもフランスを訪れてます。この1年で複数回ヨーロッパでライブができたのは、昨年秋にそれだけの成果を残せたからだと思うんですよ。

HAYATO:ありがたいことです。でも実際には、去年のヨーロッパツアーでは日本でデビュー前にやっていたこと、それこそストリートライブだったり駅前でのライブがメインで。「初めまして、→Pia-no-jaC←です。日本から来ました、聴いてください」って、以前日本でやってきたことと同じことをしてたんです。

HIRO:去年はベルギー、フランス、イタリア、スペインと4カ国を回って、そこでいろんな出会いもあって。とにかく面白がってくれた方が多かったですね。

HAYATO:最初はストリートでやっても、日本での環境に慣れすぎてた自分たちがいて。日本でライブをすると今やみんな「わーっ!」って手拍子してくれるんですけど、向こうは当たり前のようにしてくれるわけではないじゃないですか。ましてや初めて見るピアノとカホンのユニットに対して、どう聴いていいかわからないというリアクションを示すんで、「あ、昔は日本でもこうやったな」ってことを思い出しました。そんな中でひとつ嬉しかったのが、演奏してるときはお客さんがずっと僕らの手元を観てること。最初はすごく怖かったですけど(笑)。

──演奏よりも、お2人の手元を観るんですか。

HAYATO:そうなんです。しかも、日本の人はストリートで観ていても結構距離を取るじゃないですか。それが向こうの方々はこっちまで距離を詰めてくるんですよ。「ありえへんやろ、この距離感!」みたいな。

HIRO:腕を組んで真横でジーッと観てるんで、最初は怒ってるのかなと思ったくらいで(笑)。

HAYATO:演奏中はそんな感じなんですけど、でも1曲終わった瞬間に「すごい!」って喜んでくれるんです。しっかり音を聴いてくれてるというか、それはすごく嬉しかったですね。しかも1曲終わるごとに話しかけてくれたり、「CD売ってないのか? 次はどこでライブするんだ?」と聞いてくれたり。そのつながりを大切にしていきたいなと思って、去年のツアーでは「また絶対に戻って来るから!」って何も決まってないのに口約束をしたんですよ。

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ヨーロッパではオリジナル曲のほうが食い付きが良くて

──なるほど。それにしても、海外のお客さんのリアクションは面白いですね。

HAYATO:ホントですよ。HIROが煽るとちゃんと手拍子してくれるんですけど、終わるとまた手元を凝視するという、そんな感じでしたから。

HIRO:煽る際の現地の言葉を前もって覚えていったんですけど、通じてないのかなと思ってしまって。でもソロが終わると声援だったり口笛だったりでリアクションしてくれるので、ちゃんと聴いてくれてるんだなっていうのは伝わりました。

HAYATO:そういえばある駅でのライブでは、そこにアップライトピアノが置いてあって「誰でも弾いていいよ」と書いてあるんです。そのピアノを使ってライブをやったんですけど、ライブが終わった後に「俺も弾かせてくれ」「私も弾かせてくれ」ってピアノの後ろに行列ができて。なんやろ、挑戦状かなって(笑)。

HIRO:あと去年に行ったときは、アパートライブというのに参加しまして。クラシックのカルテットとかをアパートの自分の部屋に呼んで、生演奏会をしながらパーティをするんです。それに→Pia-no-jaC←も参加したんですけど、本当にいち個人の部屋なのに、実はそこが有名なジャズフェスの会場の1つらしくて。

──ええっ?

HAYATO:すごい雰囲気でしたよ。普通のアパートなのに、こんな爆音を出していいのかなって。ジャズフェス会場になるくらいなんで、そこの家主さんも大家さんも相当いろんな生演奏を聴いて耳が肥えてるんですよ。正直やる前は大丈夫かなって思ったんですけど、1曲終わったらハグの連続でなかなか次の曲にいけなくて(笑)。最後には「ユニフォーム交換しようぜ」ってお互いに着ていた服の交換を求められたんですけど、それはさすがに断りました(笑)。

HIRO:事前に2ステージ(2公演)と言われてたんですけど、20ステージぐらいやったんちゃうかな(笑)。「もう1曲! あと1曲!」って言われ続けましたから。言葉は全然通じないんだけど、音楽で一緒になれた気がしましたね。

HAYATO:それと、今年のツアーでは鍵盤が縦になる3Dピアノを初めて持っていったんですよ。それまでめっちゃ盛り上がってたのに、いざ鍵盤を立てると客席がシーンとなって(笑)。初めてのリアクションやったんで「あれ、あかんぞ?」と焦ったんですけど、10秒ぐらいしてからブワーッとなったんでよかったです。

──そんなこともあったんですね(笑)。でも最初に日本で活動を始めた頃は、観てる側も「この人たちはピアノとカホンで一体何をするんだ?」ってところから始まったわけじゃないですか。そこからライブの面白さが観た人に伝わって、その規模感もどんどん大きくなっていった。その一連の流れを、まったく言葉の通じない地でもう一度歩んでいったわけですね。

HAYATO:そうですね。環境を問わず、本当に武者修行でしたし。日本では演奏すると足を止めてくれる人も多いけど、向こうではなかなか足を止めてくれなかったから。でもそこは一番大事にしている演奏の部分、パフォーマンスの部分を巻き込み型のライブという形で試して、観てもらう機会を作っていきました。

──ヨーロッパで→Pia-no-jaC←がこれだけ受け入れられたという事実も、非常に興味深いものがありますね。

HAYATO:しかもヨーロッパでは「クラシックメインでやってみよう」ってことで、最初は『EAT A CLASSIC』の楽曲中心だったんです。でも面白いもので、「組曲『 』」や「METROPOLIS」、「Jack」というオリジナル曲のほうが食い付きが良くて。それはビックリでしたね。

──日本人の感覚だと知ってる曲のほうが入っていきやすいと思うので、クラシックナンバーのほうが食い付きがいいんじゃないかと思うんですが。違うんですね。

HAYATO:ですよね。でも「新しくて面白い」といって、オリジナル曲のほうが歓迎されて。そこから「ヨーロッパには俺たちに通ずるものがあるのかな」と考えるようになって、どんどん探っていくことで今回の『BLOOD』というアルバムにたどり着いたんです。

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