13thアルバム『BLOOD』リリースインタビュー
→Pia-no-jaC←が明かす、欧州ツアーで得た新たな音楽ビジョン「やっと遊べるようになってきた」
自分の血統がヨーロッパの中にどれだけあるのか
──ニューアルバム『BLOOD』は前作『EAT A CLASSIC 5』から1年ぶりの新作になります。制作はいつ頃から始めたんですか?
HIRO:去年のヨーロッパツアー後くらいからですね。だから『EAT A CLASSIC 5』を完成させたちょっと後にはもう曲作りが始まってました。
──ではヨーロッパツアーで得たもの、感じたものがヒントになって、すぐに制作に入ったと。
HAYATO:それだけヨーロッパでの経験が大きくて。やっぱり景色も違いますし、出会う人たちも違いますし、刺激になるものがたくさんありましたから。その中で自分のルーツというか、血統がヨーロッパの中にどれだけあるのかをどんどん掘り下げていきました。あと、向こうにはピアノとカホンという組み合わせがなかったので、向こうの景色を観たことで「俺たちならこういう曲ができたよ」っていうのを伝えたいという思いもありましたね。
──自分たちなりのヨーロッパの原風景というものを音に落とし込んだものが、今回の『BLOOD』だと。
HAYATO:そうです。
──曲作り自体はヨーロッパにいるときに行うことが多かったんですか?
HAYATO:そうですね。去年、フェスに出演するためにイタリアのコルチャーノという場所に行きまして。すごく古い町で、建物も古いしお城の外壁だけが残っているような環境なんですけど、すごくキレイな場所なんです。これぞヨーロッパみたいな景色だったので、そこからかなりインスパイアのも大きかったですね。それからずっと曲作りを続けてたんですけど、今年もコルチャーノのフェスに呼んでもらえて。そこで完成した「TASOGARE」という曲のミュージックビデオを、コルチャーノ全面協力で撮影させてもらいました。
HIRO:しかも向こうの皆さんがすごくオープンで、みんな家族みたいなんです。今回も撮影で訪れて、帰るときにみんな涙してくれるくらい温かくて。
──MVも観ましたけど、ああいう遺跡で撮影すること自体、日本では考えられないことですよね。そこまで許可してもらえるってことは、現地で→Pia-no-jaC←が受け入れられたことでしょうし。
HAYATO:あそこは考えられないようなすごい遺跡で、本当は上に乗っちゃダメなんですって。乗っちゃいましたけど(笑)。でもそこは全面協力なので、乗っていいよと。でも、ちょっとした大きさの石を落としたらダメなぐらい、貴重な遺跡の上にピアノとカホンを乗せてパフォーマンスして。正直ドキドキしましたよ、こんな場所でガンガンピアノ弾いてガンガンカホン叩いて大丈夫かって(笑)。
──カホンの振動なんてダイレクトに伝わりそうですし。
HIRO:怖かったけど、その上に乗ってしまって音が流れ始めたら何も考えないほうがいいやと思って、パフォーマンスしましたけど。たぶんセーフだったと思います、後で見直したら大丈夫やったんで。
HAYATO:初めてドローンも飛ばしました。けど結構な風がきて、ビクビクでしたけど(笑)。
血脈を通じて音楽性の幅が広がった
──『BLOOD』というタイトルもすごく象徴的ですが、このタイトルにはどのような意味が込められているんですか?
HIRO:「血」というよりは「ルーツ」「血脈」「血統」の意味のほうで。スペインに行くと→Pia-no-jaC←にあるフラメンコの部分にすごく食い付くとか、イタリアではここのソロに食い付く、とかそれぞれ違って、ヨーロッパの方々と意思疎通ができるってことはルーツは一緒のところにあると気付かされて。そこにヨーロッパでたくさんインプットしてきたものがあったので、今回は「血脈」「血統」を意味する『BLOOD』がタイトルにぴったりだと思ったんです。
──ルーツ的にさかのぼることで何かつながるものがあったからこそ、この受け入れられ方があったんでしょうし。
HAYATO:そうですね。去年のツアーでの経験がなかったらできなかったアルバムですね。俺たちのオリジナル曲でこんなに盛り上がってくれるってことは、きっと何かあるな、→Pia-no-jaC←とヨーロッパの人たちに何か通じるものがあるなと。なので、7曲を通じて血脈を辿っていく旅といった感じですね。
──本当にこの1年の海外ツアーの経験は、ドキュメントとしてもかなり面白いものがありますよね。そういった意味でも、このアルバムはロードムービー的な側面もある気がしています。
HAYATO:そうですね。去年もそうだし今年のツアーもそうでしたけど……結構過酷でしたよ(笑)。よく完走できたなってぐらいですし。
──そういった過酷な経験という意味と、自分たちのルーツを探るという意味でのロードムービーといえる側面が2つあると。では現地で思いついたアイデアを日本の持ち帰り、サウンドプロデューサーの樫原さんを交えて曲を固めていったと。樫原さんからは作品を重ねるごとにどんどん高いハードルを課せられると思いますが、今回はいかがでしたか?
HAYATO:今までと同じく、今回も変わらず(笑)。
樫原伸彦(以下、樫原):ハードルというか、ちょっと血脈を通じて音楽性の幅、ルーツを探っている地域の幅が広がったところが大きいかな。ロードムービー的に言うと、彼らは現地でいろんな約束をしてきたから、去年約束したことを今年果たしてきたと。で、たぶん今年のツアーでもたくさんあることないこと約束してると思うんです。その1つに「現地で作った曲を、次は完成させて持ってくるから」っていうのを口にしてるはずだし、それを完成させて現地で恩返しじゃないけど、戻って演奏したときにどういう感想が得られるのか。それがハードルというか、彼ら自身がやりたかったことだと思うんです。だから来年またヨーロッパに行く機会があったら、このアルバムを持っていって、そこで演奏したときの反応が本当の意味でのハードルなのかな。
HAYATO:そうですね。
──むしろこの先に、本当の意味でのハードルが待ち構えてると。
HATATO:もちろん。向こうの方々に聴いてもらって、それがどうなるのかですね。
樫原:ショックだよね、ウケなかったら。
HAYATO:いやあ……実は、ちょっとやっちゃったんですよ(笑)。今年フランスに行ったときに、日本より先に初出しした曲があって。「TASOGARE」と「Tears」を演奏したんですけど……めっちゃウケたんですよ。セーフでした。
HIRO:それこそフジロック並みの盛り上がりで。
HAYATO:新曲でもガンガン騒いでくれて、それは正直すごく嬉しかったです。