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矢野利裕のジャニーズ批評

A.B.C-Zが紡ぎだす、ジャニーズの音楽史ーー新作に引き継がれた“50年前の夢”とは?

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 音楽をノンストップでつないでいくDJの営為は、大文字の音楽史とはまったく別に、個人的な音楽史を紡ぐ行為と言える。ヒップホップがしばしば、サンプリングという手法によって過去の音楽とみずからの音楽との連続性を示すように、DJミックスには少なからず、音楽の歴史を紡ぐ意志がある。その意味で言うと、このメドレーに、アソシエーションの「Never My Love」が収録されていることは、やはり意義深い。というのも、この全米トップの曲は、もともと初代ジャニーズのために作られた楽曲である。初代ジャニーズのアメリカ進出のために、ドン・アドリッシとディック・アドリッシの兄弟によって作られ、レコーディング段階まで行って頓挫したのが、「Never My Love」だ。1966年のことである。これは、A.B.C-Zがカヴァーしたことでよく知られるエピソードとなったが、それまではまったく知られていなかった。筆者などは、初代ジャニーズのメンバーでもあるあおい輝彦が、ソロのライブで「Never My Love」をめぐるいきさつを何気なく披露していたのを知り、半信半疑で覚えていた程度だ。しかし、いまやこのエピソードは、大事なジャニーズの歴史の一部である。重要なことは、そんな「Never My Love」をA.B.C-Zがカヴァーし、さらにメドレーに入れられることで、ありえたかもしれない全米1位という偽史が紡がれていることである。ジャニーズの正統は、初代ジャニーズ~少年隊~A.B.C-Zのような、舞台のうえで歌って踊れるグループだ。

 そういえば、思い出す。かつて少年隊が、『PLAYZONE ’96 RHYTHM』のステージで、「Never My Love」を歌っていたことを。全米1位という、50年まえに成し遂げられなかった夢は、A.B.C-Zに引き継がれているのかもしれない。「A.B.C-Z Title Songs Medley」で、「Never My Love」のイントロが流れたとき、そんなジャニーズの物語を夢想して、ちょっと泣きそうになった。だって、直前ではこんな歌詞を歌っているのだもの。

「夢と夢をつなげ 終わらぬストーリー生まれるよ/誰かが夢を見る限り続いてく伝説」(「Legend Story」)

■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

      

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