LiSAが語るデビュー後の葛藤、そして表現への自信「いろんなLiSAの音楽を楽しみたい」

LiSA、インタビュー初登場

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「外の人にも広められる音楽を今、できてるかもしれない」

──自分の好きなものは自分だけがわかってればいいと思ったのは、単なるこだわりというよりも、他人からああだこうだ言われたくなかったからですか?

LiSA:そうですね。きっとわかってもらえるわけないと思ってたし。それは私がバンドをやってた頃からそうで、「どうせ女でしょ?」って男の人とたくさん比べられてきたのも大きくて。その後にアニメの作品と関わるようになったことで、今度はその世界の人たちのことをいろんなふうに言う人たちもいた。だから、だんだんと「私はこの人たちのことを守るぞ!」「大丈夫、ここにいれば安全だよ!」って閉鎖的になっていったんです。だけど「ここにこんなにすごいものがある!」と胸を張って言いたい自分もいて、私はそれを言える立場ではいたけど、一方で「どうせ今の世の中じゃわかってもらえないな」っていう寂しさも持っていました。

──その意識が変わったのはなぜですか?

LiSA:自分に自信が付いたからですね。自分の周りの人たちがいいと言ってくれたからこそ武道館にも立てた。そして外の人たちも「いいじゃん」と言ってくれるようになったことで、「外の人にも広められる音楽を今、私はできてるかもしれない」と『ROCK IN JAPAN』や『COUNTDOWN JAPAN』に出させてもらったことが、今の自信になったんです。

──今年はアジア圏での単独ツアーもありました。現地の皆さんはLiSAさんの曲を日本語で歌うわけですよね。

LiSA:そうなんですよ。アニメ作品から日本語を勉強したという人がたくさんいて、みんな日本語を喋れるんです。だから私が向こうの言葉をカンペを見ながら喋っていても「日本語でいいよ!」って言われちゃう(笑)。そういうやり取りがあるぐらい、日本のことを好きでいてくれる。そのきっかけになったのがアニメなんだなって。アニメが好きになった人が日本のことを好きになって、日本のことを勉強したいと思って、私のライブにまで遊びに来てくれるのってすごいことだと思います。しかも日本語で歌も歌ってくれるし。それって私が好きなグリーン・デイやアヴリル・ラヴィーンが日本でライブをするのと一緒なんですよね。

──確かにそうですよね。グリーン・デイが来日したら、僕らはみんな「Basket Case」を英語で合唱するわけですし。

LiSA:すごい幸せなことですよね。だって私、現地のステージで「私、今アヴリルみたい!」って言いましたもん(笑)。

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「その日の感情によってどんどん変化していく曲」

──再びニューシングル『Empty MERMAiD』の話題に戻りましょう。表題曲は夏のライブやイベントで先行披露していたんですよね。

LiSA:そうなんです。「Empty MERMAiD」はライブですごく育つ曲なんじゃないかと思って、まず発売前にライブでやりたいなと思ったんです。その日の感情によってどんどん変化していくだろうし、これまでとは違った楽しみ方ができるんじゃないかなって。

──例えばコール&レスポンスがある曲だと、そのやり取りの中で曲が育っていくというのもあると思いますが、「Empty MERMAiD」は歌い手のその日その日のコンディションで毎日違うものが出てくる曲ですよね。

LiSA:はい。あと、これまではみんなと遊ぶ方法を最初から提案していたんですけど、この曲ではみんながそれぞれの楽しみ方を見つけてほしいなと。それが同じ楽しみ方だったらより気持ちいいだろうし。

──そういう意味じゃ挑戦の1曲ですね。タイトルの「Empty MERMAiD」というワードもすごく意味深で、謎めいたものがありますが。

LiSA:マーメイドはエンプティ(空っぽ)なんです………ふふふ(笑)。

──今「……なるほど」ってスルーしそうになりましたが(笑)。

LiSA:しっぽの中身は空っぽとか身が詰まってない魚とか、ということではなくて(笑)。これは女の毒みたいなもの、普段出せない秘めてるものを表現したくて書いていたんですけど、私は歌っていて気持ちいい言葉を並べたくなる傾向があって。歌詞にある「アーメン ブリリアントアイズ」もそうですけど、そういう発声が気持ちいい言葉が先に出てくるんですよね。で、そこで出てきたのがマーメイドだったから、じゃあ寂しさや秘めた思いをマーメイドにつなげて書けないかなと思って。人魚は王子様を他の人に取られて泡になって死んでしまうんですけど、その満たされない感じというか、愛されたいのに愛されない、そのみんな持ってるけどなかなか表立って言えない感情を私が言葉にしてあげられたら、同じ気持ちの人が聴いたときに「自分だけじゃないんだ」と思えるんじゃないかなって、この歌詞を作ったんです。

──なるほど。全体的に言葉の響きをすごく重視した作風ですよね。

LiSA:メロディが洋楽っぽくて、日本語をはめるのが大変だったんですよ。実は最初に日本語で半分ぐらい書いてから、「あ、これは英語だな。半分ぐらいカタカナだな」って思ったくらいで(笑)。それも歌っていて気持ちいい、どっちかっていうと言葉の意味が伝わることよりも、まずは言葉の響きを楽しんで、後から歌詞を読んでもらえたらなって。この曲はMVもそうなんですけど、説明しすぎずに余白を残してある。だから誰にでも色を付けられるんです。色を付けるのはみんな自身だし、中身を入れていくのもみんな自身。だから「Empty MERMAiD」というタイトルなんです。

──そういう遊び心が、このモダンでラウドなサウンドに合ってる気がします。ここにカップリング曲の「リスキー」や「虚無」みたいな物語性の強い歌詞が乗ると、また違う気がしますし。

LiSA:そうなんですよね。これは感覚的なもので説明が難しいんですけど、きっと自分の中にルールができてるんでしょうね。曲を聴いたときに、どのルールに当てはまるのかが決まるんだと思います。

──歌詞は曲を聴いてから書くんですか?

LiSA:はい、アレンジまでできた後に書きます。「Empty MERMAiD」の場合も作曲のUPLIFT SPICEさんにまず「思いっきり好きな曲を作ってください」とお願いして。彼らの音楽がすごく好きだったし、毒がある曲が歌いたかったので思いっきりやってくださいと伝えてこの曲を作っていただきました。そこからアレンジのakkinさんに「超攻め攻めにお願いします!」と伝えたら、こうなった。で、そこからで何を書こうかとなったときに、歌詞も攻めるというよりも、逆にちょっと空っぽな感じの方が似合うなと思ったんです。

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