BRAHMAN・TOSHI-LOWが語り尽くす、言葉と格闘した20年 「あざとい考えが頭に出てくる前に、先に歌が出るような体にならないと」

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「なんかもう終わるんだろうな、とは思ってた」

一一そういう初期を経て、1stアルバム『A MAN OF THE WORLD(以下A MAN〜)』になるとメロディがくっきりしますよね。歌うこと、人に聴かせることへの意識が変わったんだと思うんだけど。

TOSHI-LOW:……どうだろうね? でも俺の中では初期のミニアルバムと『A MAN〜』までは全部一緒。境界線がない。『A MAN〜』以降は明確な境界線があるけど。だってまだバンドが始まって3年くらいか。

一一ブラフマンが最も多作だった時代(笑)。

TOSHI-LOW:そうそう。毎晩のようにライブ行ってたし、他の人からの影響もすごく受けた。で、『A MAN〜』がメロディアスっていうのは時代への反発もあるの。3人バンド=メロディックって言われるものが多くて、それは俗に言う西海岸っぽい感じのメロディライン。俺らはそうじゃないところでメロディを付けたい。鍵盤で言うと黒鍵を使うマイナー感というか。メロディアス=西海岸じゃなくて、哀愁だってメロディアスになる。そういうことを、自分たちの武器として考え始めた時期だと思う。

一一なるほど。そしてセカンドの『A FORLORN HOPE』。はっきり境界線があると言ったけど、平たく言うと一番暗い時期ですよね。

TOSHI-LOW:これは……閉ざしてたね。そう、ほんと暗かった。

一一過去に何度も聞いたのは「突然売れて騒がれて、訳もわからずAIR JAM系と呼ばれて、こんなはずじゃないと思い出した」っていう発言ですけど。それ以外に理由ってないんですか。

TOSHI-LOW:年齢だと思う。トイズ(ファクトリー)に入ったのは99年だし、制作期も含めると25歳くらいか。そこで一回、男としての電池が切れたの。

一一男として? そういうものなの?

TOSHI-LOW:これ持論かもしれないけど、でも人に話すとわかってくれる男がけっこういる。ほら、“男は25の朝飯前まで背が伸びる”って言うけど、あれは何を表してるんだろうってずっと考えていて。たぶんね、体内に、生きてくための電池みたいなものがあるとするじゃん。そこには謎の力もいっぱいあって、それこそ10代は「俺ってすげぇ!」とか言えちゃうの。だからこういうバンドも始めるし、いろんなことで叩きのめされても平気で、手柄もないのに自信だけはあったりする。それは全部、もともとお母さんから充電された電池をもらってるからだと思うの。でも25歳になると、それが一回カラッポになるんだよね。そこからは自分で生きてく意味とか生き甲斐を見つけて、自分でチャージしていかなきゃいけない。

一一いよいよ子供じゃない。もう自家発電するしかないと。

TOSHI-LOW:そうそう。で、俺はそん時に完全に切れたの。生きてく電池……いや、男としての電池が切れて。すべてのものに対して「あれっ?」って思った。力も出ない。ほんと「何だこれ?」っていう感覚なの。青春は完全に終わってしまったし、自分が否定していた大人になってしまっている、その入り口にいる感じ? 精神的にも肉体的にも悪くなる要素が揃ってた。

一一苦しかったでしょうね、もともとの性格を考えると。

TOSHI-LOW:ははは。よく死ななかったよね、と思う。

一一それ、たぶん冗談で言ってないですよね。

TOSHI-LOW:だってリハも行けなかったもんね。状況はすごくいいはずなのに。トイズ入って、アルバム出せばオリコン2位とかになってて。なのに……何していいかわかんなかった。家から出る気もなくなってた。そこで音楽じゃないものを探そうとしてたフシもあるの。たとえば原宿(のアパレル)に入り浸ってみたりとかさ。でも自分をちゃんと捨ててないから、自分探しにもなってないんだけどね(苦笑)。

一一その中で、ブラフマン解散、という選択肢も考えましたか。

TOSHI-LOW:………なんかもう終わるんだろうな、とは思ってた。ライブやってもみんなピリピリしてたし、楽屋戻ったらテーブルガシャーン!みたいな。俺だけじゃなくてね。他のメンバーは優しいからそうしないだけで、でも納得いかない空気はみんなから出てたと思う。で、そんなの関係なくオーディエンスは興奮してて、それでこっちは逆にイライラするし。まぁ……凄かったよね。いろんなものが相反してた。

一一カラッポになった電池が、まただんだん動き出すのは?

TOSHI-LOW:いや、ずっとカラッポだったと思うよ? だけど今度は20代後半で結婚して、しかもそれは全然思い描いてなかった世界で。『FORLORN HOPE』までの景色は、求めてなかったけども、なんとなく思い描けたものではあったの。ライブハウスにあった夢として、大勢の人がワーッてなってくれる風景は考えられた。でもここから先は青写真も何もない。一回一回びっくりしながら受け入れていく必要があって。

一一ただ、拒絶はしなかったですよね。初期のTOSHI-LOWくんなら、結婚して子供ができるなんて自分でも許せなかったはずで。

TOSHI-LOW:あぁ……完全に心が弱ってたんじゃない? 反発できる力もなかった、っていうのが正解だと思う。だけどその後は普通の生活が、自分が否定してた生活が始まるわけ。やっぱり子供ができれば朝起きるようになるし、奥さんも仕事してるから面倒見るわけじゃん。したら子煩悩なわけだよ、自分が(笑)。びっくりするぐらい(笑)。

一一「いや、俺の本来の価値観は…」とか言ってられない。

TOSHI-LOW:そうなんだよ。子供可愛いしさ。だからバンドであれ他のことであれ、今まで格好つけて何かをしてたのに、全然格好つけてないところから「あぁ幸せだな」「楽しいな」っていう感情が出始めているのは事実で。今度はそこだよね。今まで用意してなかった心のスペースに、どうやってその感情を置いていけばいいのか。子供の存在だとか、家族とか、父親として生きてる自分とか。もちろん最初はうまくバランス取れないんだけど。

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