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セカンドアルバム『幕の内ISM』インタビュー(前編)

パスピエはなぜ変化し続けるのか? 成田「既存のものにプラスアルファの違和感を乗せていきたい」

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 6月18日にセカンドフルアルバム『幕の内ISM』をリリースする若手ポップロックバンド・パスピエ。昨年リリースした『演出家出演』が若いリスナーを中心に高い評価を獲得し、一気に頭角を現したバンドだ。さらに今夏に全世界で同時公開される映画『APPLESEED ALPHA』の挿入歌として「トーキョーシティ・アンダーグラウンド」の英語バージョンが抜擢されるなど、世界的なブレイクも視野に入っており、若手バンドのなかでも今一番勢いがあるという声も少なくない。今回リアルサウンドでは、バンドの中心人物であり、作曲を手掛けているキーボードの成田ハネダと、パスピエの特徴の一つであるアートワークや歌詞を手がけるボーカルの大胡田なつきにインタビューを実施。前編では2人の視点から見た現代のライブシーンや、バンドを取り巻く環境、そして彼らの今後を見据えた戦略について大いに語ってもらった。

「色んな人を常にいい意味で“裏切りたい”」(成田)

――昨年は『演出家出演』のリリースとワンマンツアーの成功があり、大きく飛躍した1年だと思います。今作『幕の内ISM』はテンポの速い楽曲もありつつ、しっとり聴かせる楽曲があり、パスピエの全体像がはっきりと見えるバラエティに富んだアルバムになっています。現在のシーンではライブに力を入れるバンドが多いなかで、パスピエは音源にも力を入れている印象ですが、ご自身ではバンドの立ち位置をどう捉えていますか?

大胡田:そうですね……どっちとも言いづらいところがありますけど。同世代のライブ寄りなバンドのなかで、カルチャー寄りバンドなのではないかなと思ってます。

――前作はそのカルチャー寄りの立場から、意図的にバンドシーンにぶつけるアルバムを作ったわけですよね? 客層も大きく変わりましたし。

成田:自分たちの物差しとして、ライブに来てくれるお客さんを直で見ることでしか測れないのですが、そこに来てくれる人たちの層は大きく変わった気はしますね。意図的に肉体的なアルバムを作ったことに関しては…音楽って様々なものがあって自由でいいはずなんですけど、バンドっていう括りで出ていくときに、「そういう限られた場所で戦っていかないといけないんだな」って感じていて。「だったらそのシーンに対抗出来る音楽をやらないと」と思ったんですよね。

――近年だとそのシーンから“抜け出す”という表現も多くなってきていますね。

成田:僕の場合は、シーンに入るどうこうよりも、流れの中で作ったという感じですね。これまでのアルバムとしてライブに向けたものであったり、音楽の密度に向けたアルバムがあって、今回は自分たちが持っているものを多く見せることができるバランスの良いアルバムとして、『幕の内ISM』が完成しました。お客さんから見て、第一印象が大事だというのも分かるし、そのためにフックの強い曲が重要だっていうのも理解できるんですけど、対人関係にも例えられるように、その時々によって会った相手の印象って変わるじゃないですか。僕はバンドとしてそうあった方が楽しいなって思うんです。だから、自分の方でスイッチを変えるということよりも、自分たちが「ライブに向けて音楽を作りたい」という欲求だったからそう作った。今回はこういう欲求だったから『幕の内ISM』が出来たっていう、流れの中のことではあるんですけどね。

――その流れの中で今後こうなっていきたいという理想などはあるのでしょうか?

大胡田:音楽だけではなく、私が絵を描いているからというのもあるのかもしれないですけど、絵とか映像とか、いろんな面から見てもらえるようなバンドになりたいかもしれないです。カルチャーの内の一つとして「パスピエ」というジャンルがあるみたいな。

成田:僕は自由にやったことがこれからも認めてもらえればいいなって。今までも自由に作っていて、結果的にこうして少しずつお客さんが増えたり、知ってくれる人が増えたりしているので。

 あと、色んな人を常にいい意味で“裏切りたい”って考えていて。今って何でもカテゴライズされやすい状況だと思うんですが、僕はそれが決して悪いことじゃないと考えています。情報がありすぎるが故に、カテゴライズしないと吸収できないんじゃないかと思うので。パスピエがこれまでやってきたことって、何かにカテゴライズされたときに「じゃあその逆を行こう」っていうスタンスでいつも進んできたんです。『ONOMIMONO』の段階で「こういう知的なバンドなのかな」と見て頂いた方が多かったので、「じゃあフィジカルの方に向けてみよう」と思って『演出家出演』を作ったりとか。そうするとライブもだんだんフィジカルなお客さんが増えてきたので、「じゃあまた改めて知的に見せてみようか」と、常に逆に展開しているんです。

 物をカテゴライズするのは、情報を吸収するうえですごく有効な手段だと思うんですけど、同時にやっぱり先入観も植え付けてしまうものだと感じるので。それはやっぱり、自分たちが音楽を発信し続けていく上で、どんどん出口が狭くなってしまうことですから…。5年後、10年後にも自由にやっていく布石を打っているというか。そういう風にやっていくのが音楽をする上で一番健康的かなという意識で活動しています。

――自由とはいえ、前作の逆を行くという制約を付けたことで苦労したことはありますか?

成田:微調整というか、「ここはこうだったらな~」という風にブラッシュアップしたことはありますけど、作るのが苦しかったらやってないと思うんですよね(笑)。でも、歌入れをしていて大胡田のボーカルが映えなかったり、「パスピエらしくないな」と思ったらバッサリ切り捨てていきますね。

――多面的な中にもある程度の基準があるわけですね。ではお二人が「これはパスピエらしくない」と思う瞬間を教えてください。

成田:僕の場合は、メンバーが演奏している画が見えないときですかね。過去にカバーさせてもらってる楽曲も含めて「パスピエのやってる音楽」と想像できるか否かが基準です。

大胡田:私は…よくわかんないなあ(笑)。5人で何かしていればすべてパスピエだとゆるーく思っているので。

――逆に成田さんは「パスピエらしさ」って何だと思われますか?

成田:「既存の持っているイメージに付加価値として違和感が付いたもの」がパスピエかなと。僕らが作っている音楽や絵って、全く見たことがない景色ではないと思っているんですよ。みんな、何かしらからインスパイアを受けたものを出しているわけだし。これまで見たり聞いたりした要素ですけど、僕らがやることによって、既存のものにプラスアルファの違和感が乗っているという感覚がパスピエなのではないかと思います。

――違和感といえば、昨年からライブでの共演相手が大胡田さんの言う「カルチャー寄り」ではないバンドになっていることが増えてると思うんですが、そのライブパフォーマンスに影響を受けて、パスピエのライブで変化したことなどはありますか?

成田:少しずつ「このバンドのこういう部分は出来るかもね」っていうのは、話が上がったらやってみようと思うんですけど…。ただ、やっぱりそのアクションはそのバンドがパフォーマンスしてるからカッコいいというのはあるので。でも、色んなバンドマンと話して感じたのは、あくまでも「このバンドのライブの感じってこうだよな」っていうのは、リスナー側が思っていることなのだと。お客さんに対して「こういうアクションをしてほしい」という意味ではなく、演者側が見ようとしている景色って、どういうジャンルでも意外とみんな一緒なのかなと感じました。それをお客さんが「こういうバンドだ」って認識付けをして自分なりの楽しみ方をするのが健全なのかもしれないですね。

     
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