スチャダラパーが語る“味”ありきのヒップホップ論「カッコよくするだけだったら誰でもできる」

「もうSHINCOがラップするぐらいじゃないと驚いてもらえない」(Bose)

ーーつまりアルバムとして出す必要性も感じていなかったし、レコード会社とやるのも制約が多いからやる気もなかったけど、アルバムという形で出さないと世間の認知みたいなものがなかなか…。

Bose:なかなかね…自分らとしてはそれまで出してたミニ・アルバムみたいなものでいいし、なにも変わらないんだけど、でも「出てることになってない」みたいな感じだもんね。

ーーライブ会場とスチャのホームページのみの販売だと、ライヴに通う熱心なファン以外にはなかなか広がっていかないですよね。

Bose:それもあるね。(一般には)売ってないしね。それも問題なんだよね。地方にいくと「普通にレコード屋で売ってるCD出してください」って言われるし。ライヴで売ってると言ってもフェスやイベントは出演は多いけど、ワンマンは東京や大阪みたいな大都市中心だからね。

ーーなるほどね。となると、今作はこの6年のスチャの活動の抜粋・報告というか、ベストみたいな感じ。

Bose:そうだね。ベスト・プラス新曲4曲。

ーーまとめるにあたって考えたことは?

Bose:特にこれと言ってないよね。最近ライヴでよくやってるような定番曲、自分たちで気に入っている曲を並びがいいように選んだという。

ANI:12曲にしようというのはあった。

Bose:タイトルが『1212』だしね。

SHINCO:前のアルバムが『11』だったから。

Bose:よく言ってるしね。「ワンツー・ワンツー」って。のちに気づいたのは、ANIの結婚記念日が12月12日で、こないだ12回目だったんだっけ? そういうのがぴたっと…。

ーーじゃあ12月12日に出さなきゃ(笑)。

Bose:そうなんですよ!(笑)。そこが詰めの甘いところで…(笑)。

SHINCO:12月12日にマスタリングしてた(笑)。それでスタッフが「ANIさんケツがありますんで」「何?」「結婚記念日なんで(奥さんと)メシがあるんです」(笑)。

Bose:なのでマスタリングの最後にいなかったっていう(笑)。そういうユルさが…。

ーースチャですねえ(笑)。新曲はどれなんですか?

Bose:タイアップ絡みの曲がそうですね。「ゲームボーイズ2」(『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』CF曲)「中庸平凡パンチ」(テレビ東京系ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』主題歌)「恋のペネトレイト」(WOWOW NBAイメージソング)ですね。

ーーなるほど。つまり強いアルバム・コンセプトがあったわけではない、と。でも統一性なんか考えてなくても、ちゃんとスチャダラパーらしい作品になってますね。

Bose:まあねえ。例えば「哀しみturn it up」って曲があって、ライヴ用にシングルで出したんですけど、全然(それまでのスチャと)違うものにしようと思ったんですよ。ANIの歌もので昔のエレクトロ風、っていう時点でギャグとしてレベル高いなと思ったんですけど、やってみたらスッと収まっちゃったという(笑)。そんな想定外じゃないというか、こんなの前もなかったっけ、みたいな感じになっちゃった。

ーースチャって今までも制約なくいろんなことを自由にやってきたから、何をやっても驚かれないっていうか、すんなり受け止められちゃうのかもしれませんね。

Bose:そう。だからそうやっていつも外してるつもりでも…。

SHINCO:やりそう、って言われる。

Bose:前にやってそう、って。やってなくて、けっこう挑戦したつもりだったのに(笑)。チャットモンチーとやってるやつも(スチャットモンチー「M4EVER」)我ながらヘンだなーと思うんだけど、やってみたら「前にやってなかったっけ?」って言われる(笑)。清水ミチコさんと(「Off The Wall」)だって、やったことないんだから…。

ーーあれ、やってなかったっけ?

Bose:ないですよ!(怒)

ーーそれは失礼しました(笑)。自分たちとしては常に新しいことをやって切り拓いてるつもりでも、みんなスチャはなんでもアリだと思ってるから、何をやっても新しいとは思ってくれないと。

Bose:あるかもしれないですねえ。25年もやってると。

ーーANIの歌でも驚かれないから…。

Bose:もうSHINCOがラップするぐらいじゃないと驚いてもらえないかも(笑)。

SHINCO:アカペラで…。

Bose:ハモリの…。

一同:(乾いた笑い)

ーーそこまでいくともうラップじゃない(笑)。

Bose:でもまあ、自分たちとしては毎回、ちょっとずつはみ出していってる感じはあるんですけどね。

ANI:でも自分たちが思うほどはみ出してないのかも。

Bose:ああ、もっともっといかないとね。

ANI:あとまあ、好みみたいなのが決まってきてますからねえ。今の新しいヒップホップの感じとかあるじゃないですか。

Bose:それに挑戦!みたいなのはないもんなあ。すごい速い曲をやったり、オートチューン使ったり…。

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