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香月孝史が東京女子流の年末ライブを分析

東京女子流の2014年は“ネクストステージ“への助走期間だった? グループの長期戦略を読む

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 もっとも、夜公演の『CONCERT*06 ~STEP UP TO THE NEXT STAGE~』が、これまでの東京女子流に馴染まない目新しさのものだったわけではない。今年7月からの5ヶ月連続赤坂BLITZ公演夜の部の統一テーマにしていた「HARDBOILED NIGHT」で披露してきた楽曲や、近年に発表されたシリアスサイドの楽曲を核に用いたセットリストもまた、これまでの東京女子流が確実に活動の幹に据えてきたものの反映といえる。「カワイイ」を卒業してより成熟に向かう意思を見せた時、それが無理な背伸びに見えないのは、長期的な視点でメンバーの成長を見込んだ楽曲制作が行なわれているためだろう。それらの楽曲パフォーマンスは確かにこれまでの東京女子流が自らの特徴にしてきた一側面であるが、昼公演に比べるとファンとの往還を減らして、よりタイトに「ダンス&ボーカルグループ」としてライブパフォーマンスのみで見せる構成を目指していた。その意味で、夜公演のタイトルに付された「STEP UP TO THE NEXT STAGE」とは、まったく新たな何かを模索するものではなく、長いスパンに立った時にグループが目指す方向性により純化していく宣言だったといえるだろう。

 このような方向のシフトはもちろん、急に思いついたものではないはずだ。振り返れば今年は、東京女子流の活動にとっての「ネクストステージ」を開拓する試みが多く見られた。春に行なわれた4thツアーではタイトルを、グループの楽曲制作のシンボルである松井寛の代名詞を冠した「Royal Mirrorball Discotheque」とし、ディスコ/ハウス路線に振り切って、セットリストも曲間をミックスして繋ぐ形式をとった。それに応じて振付も再度アレンジされ、トータルとしてノンストップのパフォーマンスで見せる割合を強めた試みを行なっている。また映像制作面では、『5つ数えれば君の夢』『学校の怪談 呪いの言霊』の二本の主演映画公開、あるいは「HARDBOILED NIGHT」で上映されたドラマなど、本格的に演技をする映像作品が印象的だ。これまで公式Ustreamを中心に東京女子流の映像コンテンツは、メンバーのオン/オフの姿をドキュメンタリー的にファンに提供するなど、アイドルシーンの標準ともいえるパーソナリティ提示路線が目立っていた。メンバーが作りこんだ演技的パフォーマンスを通じて映像と関わる機会が増えたこともこの一年の試みだったといえる。そして先月まで行なわれていた5ヶ月連続BLITZ公演では、昼の部に過去アルバムの振り返り、夜の部にグループの大人っぽさ、クール面を前面に出した構成でライブを組み立てている。12月20日の昼夜公演もまた、その延長線上にある志向と考えることができる。2014年は東京女子流にとって、ごく自然に「ネクストステージ」に歩を進めるための年だったのだろう。

 もちろん、「ダンス&ボーカルグループ」として見た時、まだ実力が高水準で5人整っているわけではないが、年末の節目のライブに触れるにつけ、成長の度合いが確認できる。今年は圧倒的な総合力で中心に立つ新井ひとみの独走が際立った年でもあったが、ボーカルを後ろから支える中江友梨は歌唱力を一段と安定させ、新井らに比べると歌が弱く感じられた山邊未夢、庄司芽生も確実に力を底上げしてきている。もともと強い歌声を持つ小西彩乃はまだ本調子ではないはずだが、その中でも復調を模索し、その成果を12月10日発売のシングル『Say long goodbye』で見せつけた。そうしたそれぞれのスピードでの成長も、おそらくは10年単位の長期的な視野で制作を行なっている東京女子流運営だからこそ、落ち着いて見守ることができる。この日、リーダーの庄司がMCで強調したのは、この先グループとして「自分たちで音楽を発信する」という意思表明だった。制作中の来年3月11日発売シングルでは作詞を山邊が手がけることが発表されているが、このような楽曲制作への参加度合いの増加も、その意思表明の中には含まれているのだろう。結成5年をかけて次の段階への門を開くことを明示した東京女子流。「ネクストステージ」もまた、変わらぬ着実な速度で実力を積み上げていってほしい。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

      

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