木村カエラが新作で見出した創作スタンスとは? 「沈んだ時の世界もちゃんと温めてあげたい」

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 木村カエラが、12月17日にアルバム『MIETA』をリリースする。デビュー10周年を記念した横浜アリーナ2デイズ公演を成功させたうえで制作した本作は、彼女の持ち味であるポップとロックの両面をそれぞれ突き詰め、アルバム全体として非常に勢いを感じさせる作品に仕上がっている。今回リアルサウンドでは、木村カエラ本人にインタビューを実施。アルバム制作時や10周年記念ライブで生じたという心境の変化に加え、ポップアイコンであることの矜持、ティム・バートンとの対面が作品に及ぼした影響などについて語ってもらった。

「プレッシャーが大きすぎて一回押しつぶされそうになった」

――8thアルバムの『MIETA』は、10月24日、25日、26日の横浜アリーナ公演でも提示されていたポップとロックの両サイドが、アルバム全体として融合されたような作品だと感じました。非常に幅広い楽曲が入っていますが、まずは制作のプロセスを教えてください。

木村カエラ(以下:カエラ):10周年のアルバムを作る話になったときに思ったのは、いろんなイベントがあるこの10周年企画を、まずは一つ一つクリアしていこうと決意したことでしたね。横浜アリーナでのライブもこれから準備という段階だったし、自分の視野をクリアにしなければいけない状態だったので、はじめは「クリア」という言葉をタイトルに考えていました。でももっともっとポジティブな言葉にしたいなとだんだん思って。

――10月の横浜アリーナライブは大成功でしたけど、事前にクリアにしなければならない状況があったと。

カエラ:ライブが近づいてくるとプレッシャーがありますよね? いつもはそれを自分の中でポジティブな方向に持っていって、良い緊張でライブ当日を迎えるんですけど、今回はそのプレッシャーが大きすぎて一回押しつぶされそうになったんです。良いものを作りたいという思いがあるのにリハーサル中に歌が歌えなくなって、耳が聴こえなくなったんです。そんなことは初めてでした。元々私は自分の中で何か不具合があっても、あんまりそれを人に言わないんです。解決してから「あれはヤバかった」とか人に言うんですけど、今回はそんな状況じゃなくて症状に出ちゃったので、無理かもしれない、と。歌えないことが明らかになってきて、リハーサル中に涙が出てきちゃって、そうしたら周りのバンドメンバーやスタッフが集まってきて、「どうすればいいか」と話し合ってくれてすごく力をくれたんですね。

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『KAELA presents GO!GO! KAELAND 2014-10years anniversary-』10月26日公演より(写真=ミヨシツカサ)

――バンドメンバーやスタッフからはどんな言葉があったのでしょうか。

カエラ:バンドメンバーは10年間一緒にやっている人たちです。スタッフにも10年間変わらずやっている人たちがいて、みんなが力をくれて「今日はリハーサル止めますか?」「歌いやすいようにギターの音色変えようか?」「イヤモニを変えてみようか?」と、時間もないのにいろんなことを試してくれたんです。セットリストを一度も通せない状態だったのに、皆が落ち着いて私にパワーをくれたときに、「私は何をしていたんだ」とすごく思ったんです。それまで、だんだんと一人ぼっちな感じになっていって、自分で何もかも背負っていく意識になっていたんだと思いました。「木村カエラとしてこんな人になっていきたい」という自分の理想を突き詰めていくがゆえにそうなっていったんだ、と。

――周囲のサポートで発想の転換があったわけですね。

カエラ:バンドメンバーに感謝するべき10年、応援してくれた人たちに感謝すべき10年なのに、自分だけのことにしか目を向けないでプレッシャーに負けて、何を私は自分だけで背負い込もうとしてたんだろう、って思った瞬間にすごく心が軽くなりました。しかもバンドメンバーに「カエラちゃんは完璧をやろうとしてるでしょ?カエラちゃんは完璧じゃないよ」って言われたんです。「カエラちゃんが楽しくないとお客さんも楽しくないよ」とホントにそうだよなって思うことを言われたり、いろんな言葉を掛けてもらったりしました。そうしたら段々と自分の気持ちと心が軽くなって、どこかで気持ちが変わって違うところに向ける意識が芽生えた瞬間に、「アルバムのタイトルは『MIETA』にしよう」って思いました。

――アルバムタイトルには、この10年で築いた表現者としてのあり方や、それを支えるチームの存在が込められていたのですね。サウンド的には、ロック寄りの楽曲とポップな楽曲がとてもスムーズに共存していて、一気に聞ける作品になっています。

カエラ:「次は激し目の曲がいいな」「次はかわいい曲がいいな」と、今まで意識しないでロックとポップのジャンルをやってきました。それを改めて(横浜アリーナの)ライブで表現した時に、「私ってこんなに両極端なんだ。こんなに普通がなくてロックとポップの両極端に分けられる人っていないな」って自分で再確認したんですね。それは今まで意識していなかったのですごく気付かされたことだったんです。なので、それに気づいたことによって、すごく自信になりました。10年間続けることは、ある意味デビュー当時の夢でもあり、目標でもあったんですけど、10年後にロックとポップの境目が見えたこともあって、それをもっと突き詰めていきたい、私にしかできないことがあった、ということで、この先の自分が楽しみになりましたね。

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