円堂都司昭が「カバーされ続けるバンド」の魅力解説
クイーンが40年以上も“トップ洋楽バンド”である理由 リスナーを魅了する独自性と一般性とは?
ハード・ロック、フォーク、オペラ、ゴスペル、ファンク、ソウル、エレポップなど、クイーンの音楽は多くの要素を吸収していた。4人のメンバー全員が曲を書き、ヴァラエティに富んだ作品が生まれた。それらの多くに共通するのは、基本的なメロディやサビがわかりやすくキャッチーなことである。
ファンが合唱するだけでなく、クイーンの曲は、各国のアーティストにカヴァーされ続けている。彼らの曲調は幅広いため、多くのジャンルのアーティストがとりあげている。クイーンの曲は、それぞれのやりかたで歌っていいものとして開かれているのだ。
最近の日本では、一昨年にCMでも流れた手嶌葵「手をとりあって」の透明感のあるカヴァーが印象に残っているし、木村カエラは昨年発表した洋楽カヴァー集『ROCK』に「愛という名の欲望」を斉藤和義とのコラボで収録していた。
そもそも本家のブライアンとロジャーが、ブルース・シンガーの体質を持つポール・ロジャースと組んだり、ポップス感覚で歌うアダム・ランバートをフロントに立てたり、いろいろ性格の異なる歌い手を招いて、曲を再演している。今後もクイーンの音楽は、様々な形で楽しまれていくだろう。
とりあえずファンとしては、まだ残っているフレディとマイケルのセッション音源や未発表ライヴの発売を望みたい。また、アダム・ランバートは、ソファに寝そべったり王冠をかぶるなど、同じくゲイだったフレディに通じるユーモア感覚で見事なパフォーマンスを披露していたので、この編成のライヴ映像も商品化してほしいと思う。
■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。