クイーンが40年以上も“トップ洋楽バンド”である理由 リスナーを魅了する独自性と一般性とは?

 一方、今年9月には『ライヴ・アット・ザ・レインボー’74』が、CDとDVD及びブルーレイでリリースされた。初期の若々しいクイーンのステージを収録したもので、74年の映像をみると、メンバーは4人とも長髪で細身である。フレディは、まだ髭を生やしていない。また、日本で女性ファンが多かったドラムのロジャー・テイラーは、当時は痩せており美しいルックスだった。彼は1994年にX JAPANのYOSHIKIとコラボしたソロ・シングル「フォーリン・サンド」を制作したが、70年代のクイーンには、ヴィジュアル系的でアイドル的な人気があったのだ。それが「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットなどを経て広いファンを獲得し、本人たちも風格を身につけていった。

 『ライヴ・アット・ザ・レインボー’74』は、ほぼ共通した内容だった75年の初来日公演を長年のファンに思い出させ、未見の人々に追体験させるものになっている。そして、今年、アダム・ランバートをヴォーカルに起用して久しぶりに来日したクイーンが、夏フェスのサマーソニック出演で1曲目に披露したのは、74~75年のツアーと同じく「ナウ・アイム・ヒア(誘惑のロックンロール)」だった。

 クイーンについては、フレディの死後にいったん解散し、後に再結成したと思っている人もいるが、そうではない。残されたメンバーのうち、ベースのジョン・ディーコンはやがて音楽活動から引退してしまったが、ギターのブライアン・メイとロジャー・テイラーは2人でクイーンを名乗り、イヴェントなどの機会を選んではゲスト・ヴォーカリストを入れて往年の曲をしばしば演奏してきた。2000年代には、フリーやバッド・カンパニーなどで活躍したポール・ロジャースと組んで日本を含むライヴ・ツアーを行い、新作も制作した。最近では、オーディション番組「アメリカン・アイドル出身」のアダム・ランバートとライヴ活動を展開している。

 クイーンの強みは、独自性と一般性が両立しているところなのだと思う。キーボードにも近い特徴的な音色を響かせるブライアンのお手製ギター(「レッド・スペシャル」)、多重録音によるギター・オーケストレーションと分厚いコーラス、そしてフレディのキャラクター。このバンドには特徴的な要素が多く、このメンバーでしか出せないサウンドがある。ところが同時に、誰が歌っても成立してしまうような楽曲の強さもある。

 クイーンは、スタジオで作りこんだサウンドをライヴでそのまま再現しようとはせず、曲の骨格を演奏した。ステージでは喉への負担が大きいため、フレディが高音部分を歌い変えることも少なくなかった。しかし、濃い個性を持つ彼のショーマンシップによって観客を乗せ、大合唱や手拍子を巻き起こすことで曲を成り立たせたのである。クイーンにしか出せないサウンドが、ライヴではみんなで歌える曲に変わる。これが、彼らのマジックだった。

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