unBORDEヘッド鈴木竜馬氏インタビュー(前編)「まずはクラスの端っこの子たちに届けたい」

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「1台1台個性のあるバイクや車かどうかが重要」

――なるほど、暴走族のほうが多様性があると(笑)。その「族」をより機能させることはレーベルヘッドの役割でもあるかと思いますが、活性化させるには何が重要ですか。

鈴木:日本最大の暴走族になる必要はなくて、単車が500台あればいいわけではありません。1台1台個性のあるバイクや車かどうか、ということが僕の、アーティストとワンアンドオンリーでやれるかどうかのディールのポイントです。だから、少しずつunBORDEというレーベルが業界内でも浸透してきているけれど、それでも多少の出入りはあるにせよ、だいたい10アーティストくらいです。50アーティストいたらどうなのかは、やったこともないので想像できませんけれど、今やっているのは国内の端っこで不良チームをやっている、くらいの気持ちでいます。A&Rもちょっと変わった、ネジが2、3本外れたような奴ばっかり(笑)。でもその方が定石とは違った方向だから、化ける可能性があると思っています。

――A&Rの方に求められる資質も、通常とはやはり異なりますか。

鈴木:もちろん届け方で突拍子もない面白いことができればいいと思いますけれど、暴走族はやっぱりかっこいいバイクや車に乗っていなきゃいけません。つまり良い音源が大前提なんだけど、その着飾り方として、良いCDジャケットを羽織らせてあげて、良いミュージックビデオを履かせてあげるのはレーベル側の仕事です。その上で時代に合わせた届け方をしてあげる、と。YouTubeの是非についてはともかく、そこで良いミュージックビデオを届けて「あのチームの特攻隊長のバイクかっこいいな。あのバイクどうなってるんだろう?もっとよく見たい!」となったときに聴いてもらうのがアルバムです(笑)。そこまで細かいことは置いておいて、レーベルの傘のもとで個々がアイデンティティを発揮できる、というのは、「暴走族理論」で考えるとわかりやすいと思います。

――ネットの普及以降、アーティストとリスナーが直に結びつく傾向は強まっていると思いますが、その中でレーベルというチームに価値を置き、実際に成果を出しているのは新鮮でもあります。

鈴木:ミクロな方向から見ると、さっき言ったような、暴走族理論や竹槍のたとえにつながります。ユーザー目線から見た話をすると、自分自身の音楽体験として、僕が子供の頃、エピックというレーベルにすごくレーベルカラーというものを感じていました。ストリートスライダーズ、佐野元春、渡辺美里、というように、それぞれのアーティストの個性は違うけれど、何となくそこの安心感はありました。そういうものが最近はないので、供給する側、入ってくる人への見せ方としては、安心感を与えたい。だからハズレを作らないためにもやみくもに増やしたくないんです。レーベルで見せていることのひとつの意味合いにはそういう感覚があります。僕が日本で一番リスペクトしているレーベルとして高垣さんが作られた(ビクターの)SPEEDSTARがあります。SPEEDSTARはジャンルとしてもずっとロックで一気通貫しています。もちろんサザンオールスターズという素晴らしいアーティストがいたからこそですけど、揺るがないぶっとい柱があり、斉藤和義やくるりがいる。そうなると彼らがいるから入りたい、このアイデンティティのレーベルに入りたいと思うアーティストも出てきます。ミュージシャンにもそう言ってもらえるレーベルになりたいし、いわゆる音楽リスナーの人たちにも安心感を与えたいです。それを具体的に見せているのがクリスマスのライブで、チームしゃちほこのライブを見に来てくれた子が高橋優のライブにも来てくれるようになったり、ということが現実的に起きてくるための手法としては、まぁまぁやれているのかな、と思います。

――チームしゃちほこの参加は、レーベルカラーにおいてはチャレンジだったのでは?

鈴木:僕にはクラスの大勢が聴くものはわからなくて、クラスの端っこが聴くものはわかるから、得手不得手で言うと得手なことだけをやっているんです。アイドルはわからないことだらけなんだけれど、ももクロのような「好きこそものの上手なれ」と端っこから攻めていくグループのことは分かったんです。その意味でしゃちほこは絶好調で、わかるし面白いです。それに、僕が直接ディレクションして音楽を作っているわけじゃないけれど、作品が素晴らしい1曲1曲の顔がきちんとあって、そのトータルでアルバムができあがっています。レーベルアイデンティティとして、恥ずかしくない音楽を作れています。うちのA&Rも良い仕事をしましたが、マネジメントさんと僕らも相性がいいですね。

――彼女たちはかなり成長スピードが早いですね。

鈴木:それはお陰様で、市場の状況などもあって、クラスの端っこから始めても「それいいな」と隣の子が聴き始めるのが早いんです。その点はきゃりーも共通していますね。「あのくらい好き勝手やっていんだ」と、溜まっていたものを吐き出したい子たちがぐわっと来てくれたんでしょうね。(後編【マイノリティに勇気を与える作品を】に続く)

(取材=神谷弘一/撮影=下屋敷和文)

■公演情報
「unBORDE Xmas PARTY 2014」
開催日:2014年12月23日(火・祝)
開場12:00/開演13:00(終演予定:21:00)
会場:Zepp Tokyo
料金:1F立見 \5,500(税込)  ※ドリンク代別 ※クリスマスプレゼント付
出演アーティスト:
・androp
・indigo la End
・きゃりーぱみゅぱみゅ[NEW!]
・ゲスの極み乙女。
・神聖かまってちゃん
・高橋優[NEW!]
・チームしゃちほこ
・tofubeats
・RIP SLYME[NEW!]

イベントオフィシャルHP http://unborde.com/xmas/ 

【unBORDEについて】
2010年12月21日に”時代感”と“エッジ”をテーマに、日本のみならず海外にも発信していくことを目指し発足。
androp、indigo la End、CAPSULE、きゃりーぱみゅぱみゅ、Q;indivi+、ゲスの極み乙女。、神聖かまってちゃん、高橋優、チームしゃちほこ、tofubeats、パスピエ、THE PRIVATES、RIP SLYMEが所属。

label official site http://unborde.com/
WARNER MUSIC JAPAN http://wmg.jp/

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