WEAVERが挑戦する新たな3ピースサウンドとは? シングル「こっちを向いてよ」を楽曲分析

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映画『百瀬、こっちを向いて。』では、元ももいろクローバーの早見あかりが主演を務めている。

「Aメロ『何もない』も、Bメロ『遠くの』も、同じメロディで始まります。それだけでなく、半分以上のフレーズが『シ』で始まります。この『シ』は何かというと、歌いだしのA9(「ラ ド# ミ」という通常のAに7度と9度「ソ# シ」を足したもの)というコードの中の緊張感のある9thの音です。

 リフレインやループの発想の重要な要素ですが、変わる部分と変わらない部分の対比を見せることが、変わる部分のドラマ性を強調します。要するに単に『繰り返すと気持ちいいね』ではなく『繰り返している中で少しずつ変わっていく部分があるね』が気持ちいいのです。この場合、メロディ進行の中でひとつの音階を軸に置き、リズム的にもリフレイン要素を作って『変わらない部分』を提示することで、Bメロのねっとりと半音ずつ上がっていくコード進行がAメロと自然につながりつつ、変化としてドラマチックに聞こえます。

 また、そこには『抑制』という大切な役割があります。メロディが常にシを起点にしていることで、緊張感を保ちながらも静的な展開になります。これはもちろんサビが動的に聞こえるためです。考える順番を変えると、『サビを動的に聞かせたいが、他のセクションでコードを動かさないのは退屈である。コードを進行し美しく聞かせながらもサビの開放感に至るまで緊張感を維持して、抑制的な物語の進行ペースにするためのメロディライン』ということですね」

 同曲ではベースとドラムにも、展開をスムーズにする効果があると同氏。

「アレンジでも楽曲の向かうサビまでの展開をよくサポートしています。ポイントだけ書くと、ドラムが本格的なフレーズを叩き始めるのがBメロからであることは、Bメロの転換性をより強調しています。ベースはAメロの2回し目から入ってきますが、はじめはピアノの左手が低い音で8分音符を刻み、ベースはゆったりとしています。サビ以降8分音符を刻むのはベースですが、そこまでの間、ベース・ラインを担う役割をピアノの左手からベースへと自然に移行させているので、セクションごとに盛り上がっていくのに唐突さがありません。

 3ピースバンドとして考えるとベースとドラムは、音色もアレンジも柔らかく目立ちません。自分のパートの音を主張せず、楽曲の伝えたいポイントを表現することに徹する渋いアレンジですね」

 若手バンドでありながら理知的に楽曲を作り込み、耳に馴染みが良くもドラマチックな曲展開を生み出すWEAVER。そうした方向性を上手く昇華させた『こっちを向いてよ』は、同バンドの個性が表れた一曲といえそうだ。
(取材・文=編集部)

■リリース情報
『こっちを向いてよ』
発売:2014年5月7日
価格:¥1,200(税抜)

〈収録曲〉
1.こっちを向いてよ 〈映画「百瀬、こっちを向いて。」主題歌〉
2.夢を繋いで 〈TBS駅伝テーマソング〉
3.Time Will Find A Way (with Instinct ver.) 〈TBS「Find the WASABI!」テーマソング〉
4.Time Will Find A Way(Original ver.)

『ID』
発売:2014年6月11日
価格:初回盤 ¥3,400(税抜)CD+DVD+初回盤特典
通常盤 ¥2,600(税抜)CD

〈収録曲〉
M1.66番目の汽車に乗って
M2.トキドキセカイ
M3.白朝夢
M4.レイス
M5.管制塔
M6.僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手をつなぎたいだけの愛だから~
M7.Hard to say I love you ~言い出せなくて~
M8.キミノトモダチ
M9.Shine
M10.偽善者の声
M11.Shall we dance
M12.Free will
M13.Just One Kiss
M14.夢じゃないこの世界
M15.こっちを向いてよ
M16.Hope~果てしない旅路へ~ *未発表曲

Music Video一覧(初回盤のみ)
M1.白朝夢
M2.レイス
M3.トキドキセカイ
M4.2次元銀河
M5.Hard to say I love you ~言い出せなくて~
M6.僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手をつなぎたいだけの愛だから~
M7.管制塔(Live ver.)
M8.66番目の汽車に乗って(Live ver.)
M9.キミノトモダチ(Short ver.)
M10.『あ』『い』をあつめて
M11.Shine
M12.Shall we dance
M13.REPLAY~Medley of Handmade~
M14.偽善者の声(Short ver.)
M15.笑顔の合図
M16.夢じゃないこの世界
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