坂本龍一『スコラ』で日本の伝統音楽を語る「あえて不自由な音にするのは他の国にはない」

 音楽を体験しながら学ぶ「スコラ・ワークショップ」では、古代の楽器が作られた過程を、関根秀樹を迎えて解説。参加したのは5年生、6年生の小学生だ。子供たちに石笛を見せ、「これは何に使われるものでしょう?」と尋ねると、「飾りつけに使うもの」という答えが返ってきた。そこで関根は「楽器だよ」と、石笛を使ってみせると、子供たちは口をぱっくりあけて驚愕する。実際に楽器を作ってみようという事で、イタドリや篠竹という石器で削りやすい植物を使って、子供たちも竹笛を制作した。竹笛は切断する際に、長く切れば低音、短く切れば高音となる非常にわかりやすいものだという。竹を好みの長さで切り、口元を斜めに削るだけで笛になった。ワークショップの最後では、作成した色々な長さの竹笛を使って、音の高低と長短で、演奏の掛け合いをさせた。

 後半では、太古から現代まで、列島に通ずる音の響きを考察した。小島は、現代の楽器と古代の楽器の通ずる部分の一例として、「岩笛は能管のひしぎの音に通じる」と語った。伝統芸能の能に使われる能管には、「喉」といわれる筒があり、これがあることにより、音程は楽器の個体によりバラバラになり、音色も鋭いものになるのだという。坂本は「わざわざ不自由な音にするというのは他の国にはないのでは。三味線のサワリなどもそうだが、あえて一種のノイズ成分をいれて、音を多様化させている」と分析した。
 
 番組の最後には、坂本のピアノとコンピューター、関根の石笛と蟲笛による演奏が披露された。坂本の生ピアノとコンピューターを通して変調させた音を合わせたり、弦を叩くなどのパフォーマンスに対し、関根はアフリカ呪術に使われる、振り回すことによって音が鳴る道具をもとに作られた楽器である蟲笛や、石笛を鳴らす。儀式のようで、どこか神聖な音を近代楽器と民族楽器のコラボレーションで見事に演出した。

 日本の伝統音楽について、深く解説した同番組。次回、2月13日の放送では「雅楽と声明」について講義する予定だ。
(文=中村拓海)

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