欅坂46のブレイクと“Zeppツアーの壁”ーー2017年のアイドルシーンを占う

 AKB48のブレイクを引き金として、2010年に巻き起こったアイドル戦国時代。あれから早くも7年が経過し、今年で8年目。アイドルシーンの活況は、ピークポイントは過ぎたと言われつつも、いまだに続いている。

 では2017年のアイドルシーンはどうなって行くのか。2016年の動きを振り返りつつ、占って行こう。

乃木坂46と欅坂46 2016年に躍進したアイドル

 2016年に躍進したグループといえば、乃木坂46と欅坂46の“坂道系”と呼ばれるグループが挙げられるだろう。乃木坂46は11月にリリースしたシングル『サヨナラの意味』が自己最高のセールスを記録。初動でミリオンを突破し、同曲で年末の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に2年連続で出場を果たした。欅坂46は『サイレントマジョリティー』が女性アーティストのデビューシングル初週売上として歴代1位を獲得。デビューからわずか8カ月で『NHK紅白歌合戦』に初出場した。また、年末には初単独公演をキャパ約1万人の有明コロシアムで2日間に渡って開催、全3公演を合わせて約2万7000人を動員した。

 AKB48は2016年のオリコンシングルセールスランキングの1位から4位を独占。その他の48系グループや、ハロプロ系も人気は高い。そしてももいろクローバーZ、私立恵比寿中学、チームしゃちほこなどのスタダ系や、でんぱ組.inc、BABYMETALといった“ブレイク済み”のグループたちの人気も、いまだ健在だ。

 ここで注目したいのは、これらのグループ以降、例えば動員規模で言えばアリーナ及び武道館クラスで単独公演を行い、さらにそれを定期的に行えているような「世間的にもブレイクした」といえるアイドルが登場していないことだ。BABYMETAL、でんぱ組.inc、チームしゃちほこのブレイクを2014年あたりとするなら、2年以上この状況が続いていることになる。世界最大のアイドルの祭典『TOKYO IDOL FESTIVAL』の 2014年の動員数は2日間で4万1282名、1日平均が2万641人。2015年は2日間で5万1481人、1日平均が2万5740人。2016年は3日間で7万5978人、1日平均が2万5326人。1日の平均来場者数の伸びが、2016年になって落ち着いていることが分かる。来場者数=アイドルファンの総数、というわけではないが、出場者のほとんどがブレイク以前のアイドルである『TIF』の1日の平均来場者数の推移は、少なくともそれを推し量る目安にはなるはずだ。つまり、“ブレイク済み”のシーンは活況だが、“ブレイク以前”のシーンは停滞気味。これが2016年のアイドルシーンの状況だった、といえる。

ブレイク済みor以前のアイドルの境目は「Zeppツアー」

 “ブレイク済み”のアイドルと“ブレイク以前”のアイドルの境目はどこにあるのだろうか。立場により様々な見方ができるが、ここではそれを「Zeppツアーの壁」にあると仮定しよう。

 1年に1、2回のメモリアルな単独公演でなら、キャパ2、3000人程度のZepp TokyoやZepp DiverCityを埋めることはできる。が、その規模の会場を使った全国ツアーや高い頻度での公演で成功を収め続けるのは難しい。2017年現在、人気の出始めたライブアイドルが直面するのは、この壁だ。それぞれにとって目指しているものが違うが、外形的な面だけを見れば、BELLRING少女ハート(現・There There Theres)、lyrical school、夢みるアドレセンス、ゆるめるモ!といったグループが、大体このゾーンに位置している。この壁を越えたところでブレイクの可能性が見えて来る、そういう地点だ。

 そしてこの約2、3000人が、48系やハロプロ系、スタダ系などの専オタではない「熱心に現場に通うタイプのライブアイドルDD」の総数ではないだろうか。ライブアイドルDDであるなら、毎週末の普段のライブには通わなくとも、「メモリアルな単独公演なら観に行きたい」と考える。ライブアイドルがブレイクするためには、まずはそこを総動員できるほどの人気を得たうえで、さらにその人気をアイドルシーンの外部へと繋げて行く必要がある。

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