藤巻亮太が明かす3年半の苦悩、そして新しい創作の日々「“木を育てる”ように曲を作った」

藤巻亮太はどう苦悩を乗り越えたか

 藤巻亮太が、3年半ぶりとなるオリジナルアルバム『日日是好日』を3月23日にリリースした。パーソナルな色彩の強かった初ソロアルバム『オオカミ青年』のリリースとツアー後、藤巻は今後どのように音楽と向き合うべきかを長期間模索したという。そのなかで「日日是好日」という言葉に出会い、音楽の持つ力を再認識した藤巻は、ダイナミックなバンドサウンドへと向かう。今回のインタビューでは、今作が完成するまでの葛藤から、音楽創作に対する考え方、さらにはこれからの展望についてもじっくりと語った。(編集部)

「縛っているものをひとつずつ消していく」

ーー2ndアルバム『日日是好日』は1stアルバム『オオカミ青年』よりもバンド的なサウンドが主体となり、外に向かっていく力を感じさせる作品ですね。

藤巻亮太(以下、藤巻):まず『オオカミ青年』で、ある意味、レミオロメンで貯金したエネルギーをすべて使って、かつバンドではかけないくらいドロッとしていたり、エッジのある部分を表現できたんですよね。そこで衝動を出し尽くしたことで願いが“成就”出来てしまった。その後は悩みが深くなって、まずは空っぽの状態からスタートしました。

ーーシングルとミニアルバムを挟みつつ、フルアルバムまでに3年半の時間がかかりました。

藤巻:きっと“ソロらしさ”という固定観念に縛られていたんですね。こうあるべきだとか、期待に応えなきゃいけないとか、自分の心の中に、すごくたくさん線が引かれている状態だったと思うんです。その時はもう窮屈で苦しくてしょうがなくて、逃げたいとも思うようになっていて……。そこから始まって、自分を縛っているものをひとつずつ消していくという作業が、このアルバムにつながったのかもしれません。

ーー「ソロらしさ」の呪縛を一つひとつ解いていったと?

藤巻:そうですね。そしてそれは、“レミオロメンらしさ”の呪縛だったかもしれません。自分が作ってきたものに縛られて、“レミオと違うものを作らなきゃいけない”と思ってしまう。ただその悩みは現在のものではなく、過去(レミオロメン時代)と未来(今後のソロとしての活動)に向けられたものだと気づいて。そんなときに、アルバムタイトルにした“今”をとても大切にする言葉――「日日是好日」に出会ったんですよね。どうあがいても昨日という日には戻れないし、過去のことは考えてもしょうがない。未来についても、前借りして今から悩んでいたって仕方がない。昨日のことや明日のことを気にしすぎないで、今できることを純粋に楽しんでやればいいじゃないかと。そう思えたときに、すごく気持ちが楽になったんですよ。レミオらしさとか、ソロらしさとか、そういうものにとらわれず、今の自分が楽しくて、ワクワクして、ドキドキすることに対して素直になろう、というマインドに変わりました。

ーーその心境の変化のあとに生まれた曲はどれでしょう?

藤巻:昨年の12月にリリースした『大切な人/8分前の僕ら』というシングルに「wonder call」という曲が入っていて。その曲くらいから抜け出しましたね。3年半も悩んでいたのに、うわっと、すごいカーブを描きながら楽曲が自由になっていきました。自分が作る楽曲に癒やされていくというか、救われるというか、1曲作るごとに、自分の世界を細切れにしていた線が一つ消えて、空間が広くなっていく感じがあって。あらためて音楽の力ってすごいなと思いました。

ーー「日日是好日」のアレンジは、レミオロメンともソロ第一作とも違う、ダイナミックなバンドサウンドが印象的でした。

藤巻:そうですね。メロディーや歌詞も含めて、アルバムに収録する曲を作るというのは、“木を育てる”みたいなところがあると思うんです。つまり、アルバムという森をどうやって豊かにしていくかを考えると、いろんな木があったほうがいいじゃないですか。そんな感覚を大事にして、自由に作っていった結果、音もこういうものになりました。“こんな木が生えていてもいいじゃないか!”って(笑)。

ーー例えば「春祭」は、アルバムの中でも振れ幅の大きな曲ですよね。日本のお祭り囃子的なノリを取り入れた曲ですが、これはどんな経緯で?

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藤巻:アルバムの最後にできたんですけど、この曲こそ本当に自由に、何も考えずに作りました。音楽を作っていると、無意識のうちに、なぜか分からないけれどメロディーや言葉が出てくる瞬間があって、そういうものにはアタマを使って考えたものでは到達できない凄みがあるんですよね。「春祭」の歌詞には何の意味もないんですけど、そこに何かが宿っているというか。

ーー藤巻さんは理知的に音楽と向き合っている方だと思いますが、それを超えた音楽も大事にしているということですね。

藤巻:そうですね。こうやって話しているとどうしても理屈っぽくなりますけど、音楽は自分でもよく分からない、無意識から出てきたスゴいものと遊べるから楽しいんですよね。今回の制作を通じて、そのことを思い出したというか。やっぱり人って、意識している世界より、無意識の世界のほうが圧倒的に広いし豊かだと思うんですよね。そして、そのチャンネルを失っちゃうのが、表現者としていちばん怖いことなんです。

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