藤巻亮太が明かす3年半の苦悩、そして新しい創作の日々「“木を育てる”ように曲を作った」

藤巻亮太はどう苦悩を乗り越えたか

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「音楽は苦しい感覚を消してくれる、消しゴムになり得るもの」

ーー「回復魔法」や「夏のナディア」なども含め、今作はご自身でも捉えきれない何かが出てきた作品かもしれません。チームとして制作する過程では、どんなことを考えましたか。

藤巻:今回は、アレンジを一緒にしてもらったりする過程で、“お願いします”をできるだけ減らそうと考えました。自分自身でジャッジが分からなくなって、周りの優秀な方に“お願いします”と任せることで、作品が正解に近づき、よくなることもたくさんあるんですけど、そこで自分の中の何かが途絶えたり、思考停止になってしまうことがあって。だから、大変でもセルフプロデュースというかたちで“最後まで見届ける”ことにしたんです。全然正解じゃなくて、音楽的に破綻していたり、文章的に意味が通っていなくても、その中にある本質的な部分を大事に育てて、自分で完成させたかったというか。

ーー歌詞の面では、より日常的、現実的なモチーフが描かれています。「Weekend Hero」だと、藤巻さんと同世代くらいの社会人生活を連想させるフレーズもありますね。

藤巻:歌詞についても、自分自身が素直になることだと思ったんですよね。例えば、「Weekend Hero」の歌詞でいうと、週末にみんなでフットサルをしているのが楽しい、という感覚。みんなそれぞれに悩みを抱えながらも、フットサルをしているときはただボールを蹴っているのが楽しくて。「落ち込むことでもあったらさ、飲みに行こうよ」って、軽く言えたりもする(笑)。僕そのものなんですけど、こういうことって、普通にみんなあるんじゃないかと思うんですよね。「おくりもの」なんかは、ディレクターさんと「20代で親のことを歌にするのってなんか照れくさいけど、30代になって、もう一度親のことを考えて歌えることもあるんじゃない?」って話したことがきっかけでできた曲です。

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ーー音楽を作るときのモチベーションのあり方も、20代の頃とくらべて変化していますか。

藤巻:むしろ、“音楽を作る”ということに出会ったころに戻っている感覚かもしれません。例えば18、19のころは、自分のエネルギーが全部内側に向いていたんです。自分が何者でもないことが怖かったり、誰かと比較して劣等感でいっぱいになったり。そうすると、病んでいきますよね。それが音楽を作ることで、エネルギーが外側に向くようになって、すごく癒やされたんですよ。今回のアルバムは一曲作るごとに癒やされた、というお話をしましたけど、やっぱりそれが表現の原点にあるんじゃないかなって。

ーー例えば、“神社時代”に戻ったような。

藤巻:そうかもしれないですね。あのころの感覚に近いところがあるんじゃないかな。過去にも未来にも生きず、今を一生懸命に生きる――やっぱり「日日是好日」という言葉に集約されている気がします。その気持ちが、アルバムを作る原動力になっていったんじゃないかなって。

ーーやはり今作は「日日是好日」という言葉に集約されていると。

藤巻:そうですね。そんななかで、日々誰もが“こうしなさい”と言われたことを守っていたり、“こうするべきだ”ということに従って生きていたりするんだけれど、それが自分の人生を苦しめていることもあるかもしれないじゃないですか。音楽は、そういう苦しい感覚を消してくれる、消しゴムになり得るもので。僕自身がそれをあらためて体験したことで得た感動が、素直にのっているアルバムだと思います。

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