原作ゲームに匹敵する評価を獲得したアニメ3選 『シャニマス』『ライザのアトリエ』のアニメ化発表を機に考える
原作に匹敵する評価を獲得したゲーム原作のアニメ3選
ゲーム・アニメという2つの文化のあいだには、多くの人気作品が相互にメディアミックスされてきた歴史がある。両分野に造詣の深い人ならば、誰しもがいくつかの例に思いいたるはずだ。両者のあいだには、「映像における表現である点」「時間のフォーマットが長く、より細密に物語を描ける点」など、多くの共通項がある。特に、表現に時間的制限がないゲームからすると、同分野に匹敵するだけの“時間的余裕”を持つ映像媒体はほかにない。メディアミックスの観点では、きわめて相性のよい媒体のひとつであるといえるだろう。
そのような背景から古今東西、ゲーム作品はアニメ作品以上に、もう一方へと移植されてきた。直近で言えば、『NieR:Automata』を原作とするアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』が制作・放送され、話題を集めていることも記憶に新しい。
しかしながら、歴史を振り返るとそこには、数々の成功と失敗が積み上げられてきた過去もある。メディアミックスが“新たな接点”とはなり得たものの、原作と同様の文化的価値を示せなかった作品の例は枚挙にいとまがない。
そこでこの項では、原作に匹敵する評価を獲得したアニメ化作品を紹介する。まだ観たことのない人がいたら、ぜひこれをきっかけに手に取ってみてほしい。
『STEINS;GATE』
『STEINS;GATE』は、2009年に5pb.(現MAGES.)が開発・発売したSFアドベンチャーゲームだ。舞台は、2010年の東京・秋葉原。プレイヤーは、発明サークル「未来ガジェット研究所」を創設した主人公・岡部倫太郎と、同サークルのメンバー「ラボメン」のまわりで巻き起こる不思議な出来事を、主人公の目線から追体験していく。
同作はリリースから約1年半後の2011年にテレビアニメ化。緻密に描かれたシナリオや、作画・アニメーションの美しさなどが評価された。放送当時、Xbox360とPCのみでしか展開されていなかった原作だったが、その後、PlayStation PortableやiOSへと移植。アニメに対する評価とプラットフォームの拡大の相乗効果により、原作への支持が拡大した。
2023年3月現在、アニメは各ストリーミングサービスで視聴可能となっている。原作は完全版『STEINS;GATE ELITE』として、PlayStation 4、Nintendo Switchなどでプレイできる。
『Fate/stay night』
『Fate/stay night』は、2004年にTYPE-MOONが開発・発売した伝奇活劇ビジュアルノベルだ。主人公・衛宮士郎はふとしたことがきっかけで、あらゆる願いを叶えると言われる「聖杯」をめぐる戦い“聖杯戦争”に巻き込まれていく。プレイヤーは彼の目線から、その戦いの日々を追体験する。
同作はリリースから2年後の2006年、テレビアニメとして放送された。アニメーション制作はスタジオディーンが担当。独特の世界観やシナリオが評価を獲得した。
発売当初、PCのみでの展開だった同作だが、その後、PlayStation 2などへ移植。ここ数年はモバイルゲーム『Fate/Grand Order』が人気となったこともあり、同シリーズのアニメ・映画化も多く行われている。
2023年3月現在、アニメはABEMAなどで視聴可能。原作ゲームはAndroid/iOSでプレイできる。
『ef-a tale of memories.』
『ef-a tale of memories.』は、2007年に放送されたテレビアニメ。『化物語』シリーズや、『魔法少女まどか☆マギカ』、『3月のライオン』などの作品で知られるシャフトがアニメーション制作を担当した。
『ef-a tale of memories.』に描かれているのは、男女6名の高校生による群像・恋愛劇だ。せつない設定とシナリオ、映像表現の巧みさなどが、感度の高いアニメフリークに評価された。
原作は、『ef - a fairy tale of the two.』というPC向けのノベルゲーム。同作はアニメの好評を経ての2010年、PlayStation 2に移植されている。また余談だが、原作のOPアニメーションは、いまや説明不要の有名アニメーション監督・新海誠が担当している。こちらにある美麗な映像表現もまた、コアなファンたちのあいだでは語り草となっている。
2023年3月現在、ゲームは原作や移植版に触れるほかないが、アニメはdAnime Store for Prime Videoで視聴可能となっている。
アニメ化に期待したいゲーム原作作品は?
アニメ化されるゲーム作品は数あれど、原作に匹敵する評価を獲得したものは一握りだ。本稿で触れた以外にも、『CLANNAD -クラナド-』(2007年)や、『ひぐらしのなく頃に』(2006年)、『リトルバスターズ!』(2012年)といった人気作品がある。
ここからわかるのは、アドベンチャーゲーム・ノベルゲームとの相性のよさだ。世界観やシナリオ、設定に対する作り込みの面で優位性があるものと想像できる。その点を踏まえると、アニメ化に期待したい作品もいくつか頭をよぎる。独断と偏見で選ぶとすれば、その筆頭は『十三機兵防衛圏』だろう。
今回話題となった『シャニマス』『ライザのアトリエ』は、それぞれ育成シミュレーション、RPGと、鉄板の組み合わせには該当しない。はたして両作はファンの期待に応え、歴史に名を残すような“原作超えの名作アニメ”となれるだろうか。今後の動向を見守りたい。