『マリオ』における“味方”としてのクッパの魅力と意外な軌跡 『マリオ+ラビッツ ギャラクシーバトル』新情報を機に振り返る
任天堂とユービーアイソフトのコラボレーション作品で、国内では独特なCMソングも注目されたシミュレーションアドベンチャーゲーム『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』。
その続編で、2021年6月に発表された『マリオ+ラビッツ最新作(仮称)』改め、『マリオ+ラビッツ ギャラクシーバトル』の新情報が6月28日放送の「Nintendo Direct mini ソフトメーカーラインナップ 2022.6.28」にて発表。今冬発売予定であることが明らかになった。
あわせて、ゲームの最新映像も公開。ウリのターン制シミュレーションバトルを始め、様々なシステムが前作から大きくパワーアップしていることも発表されている。
また、マリオにラビッツたちといった仲間キャラクターも増え、そのひとりとしてクッパが加入することも明らかになった。
マリオの宿敵であるクッパが仲間で登場すると聞き、「おっ!」となった人もいるのではないだろうか。というのも、クッパがマリオの味方として登場する作品は、普段とはひと味異なる展開を楽しめるのが醍醐味であるからだ。さらにシリーズファンの間において、クッパが味方で登場する作品は“名作”との呼び声が高い傾向にある。
普段は物語の舞台であるキノコ王国の平和とピーチ姫を巡り、対立する両者。そんな2人が手を組む時点で、すでに熱い展開なのだが、改めてそれがどのタイミングで生まれ、プレイヤー間で語り草になるほどの強い印象を残してきたのか。
今回の『マリオ+ラビッツ ギャラクシーバトル』の新情報発表を機に振り返ってみたい。
『スーパーマリオRPG』を機に誕生した“味方”としてのクッパ
マリオとクッパ。
その”腐れ縁”の始まりは1985年発売の『スーパーマリオブラザーズ』だ。
キノコ王国を襲撃し、姫君のピーチを誘拐する悪行を働いたクッパは、以降の続編『スーパーマリオブラザーズ2』、『スーパーマリオブラザーズ3』などにも継続して出演。己の野望を果たすため、しぶとくキノコ王国の襲撃とピーチ姫の誘拐を繰り返す宿敵にして、マリオ屈指のライバルキャラクターとして立ちはだかり続けた。
一時期、マリオにはブラッキー(『レッキングクルー』)、タタンガ(『スーパーマリオランド』)、マムー(『スーパーマリオUSA』)、そしてワリオ”様”(『スーパーマリオランド2 6つの金貨』)といったライバルも登場したが、多くは一時限りで出番を終了。ワリオに至っては、後に(事実上の)ヒーロー側へと転向している。
反面、クッパは宿敵としての立場を一貫し、多くの作品で大ボス(ラスボス)として出演。気が付けばその歴史は35年以上も積み重なり、いまやマリオシリーズにおいては「ラスボスはクッパ」というネタバレが定番化してしまっているほどだ。
そんなクッパの役割に一石を投じたのが、1996年発売の『スーパーマリオRPG』だった。
この作品でも、クッパはピーチ姫をさらう十八番を本編開始間もなく仕出かし、マリオとの直接対決を演じる。しかし、その最中に新たな敵「カジオー」の配下で巨大な剣の「カリバー」が襲来。クッパの城へと突き刺さり、その衝撃でマリオとピーチ姫共々、遠くへと吹き飛ばされてしまう。
以降、残された手下たちと共に城を目指すが、色々あってクッパは孤立。その最中に各地を旅していたマリオ一行とバッタリ出会ってしまい、一時はそこから立ち去るも、行き詰まっているマリオたちの元へと参上。力押しでその問題を解決した後、「マリオたちを軍団に入れる」という理由から仲間として加入し、以降はマリオたちと一緒にカジオーの配下たちとの戦いを繰り広げていくのである。
いままで宿敵として登場したクッパが味方になるこの展開は、マリオシリーズにとって歴史的とも言える出来事だった(※余談だがゲーム以外、漫画では味方になる展開が描かれた作品がこれより前に存在していたりする)。複数のキャラクターでパーティを編成する、ロールプレイングゲーム(RPG)の枠組みだからこそ実現したとも言える。
また、RPGと言えば、ストーリーをきちんと描写できるのも強みである。そのおかげでクッパ本人の内面も掘り下げられる形になった。しかも、実は結構ナイーブで、逃げ出した部下を責めずに許すという、心優しい一面を持っていることが明らかになったのだ。
『スーパーマリオRPG』のクッパ自身、コミカルさが強調されている面もあるが、この試みによってイメージは著しく一新。普段は強敵だが、味方になれば頼もしく、時に笑わせてもくれる3枚目なキャラクターという魅力あふれる存在になった。
また、クッパが味方なら当然、敵対する大ボスも新しいキャラクターに置き換わる。そんな共通の敵に対し、マリオとどう力を合わせて立ち向かうのか?
そんな熱い展開と、先が気になるストーリーが実現可能になるのも『スーパーマリオRPG』は実証していた印象だ。いつもはクッパにさらわれるピーチ姫がどんな形で関わるのか、もまた然り。ちなみに『スーパーマリオRPG』では彼女もマリオの仲間として後々に加入し、これまたシリーズ初ともいえるクッパとの共闘を実現させている。
そうした刺激的な見所満載だったこともあり、『スーパーマリオRPG』は発売から25年以上が経過した現在もなお、名作として語り継がれる作品になっている。そして、以降もRPGのマリオシリーズでのクッパは、従来とは異なる立場で登場するのがお約束のようになった。
クッパが味方として登場した後の作品としては、『マリオ&ルイージRPG』、『スーパーペーパーマリオ』、『マリオ&ルイージRPG3』がある。
その中でも『マリオ&ルイージRPG3』は、クッパの大魔王としての強さ、大規模な軍団を率いる長としての風格と威厳を見せつけた、象徴的傑作といってもいいだろう。特に最終決戦はその決め台詞、戦闘曲も相まって、嫌でもクッパにほれ込んでしまうシーンに完成されている。もしかすると、これを機にクッパのファンになったという人も少なくないかもしれない。
他の作品でも協力したはずが、散々な目に遭う、身を挺してマリオたちを守ろうとするなど、従来のマリオシリーズでは拝めない活躍が描かれている。いずれも強く印象に残ってしまうのは、本家本元であるアクションゲームのマリオシリーズでは、一貫してクッパが宿敵を務めている”お約束”が確立されている影響もあるのだろう。
いつもは敵だが、立場が変わればこれ以上なく頼もしくてカッコいい。
さながらテレビアニメ版、劇場版とで著しく変わる『ドラえもん』のジャイアン(剛田武)である。そう言った活躍が見れることから、クッパが味方という設定は、新たな展開を実現させる期待を抱かせるものへと昇華されていった感じだ。
ところが意外にも、ここしばらくはクッパが味方で登場する作品が減少傾向にあった。