『マリオ』における“味方”としてのクッパの魅力と意外な軌跡 『マリオ+ラビッツ ギャラクシーバトル』新情報を機に振り返る

『マリオ』における“味方”としてのクッパの魅力

2010年代は本来の宿敵としての立場に徹するしかなかった……?

 元々、RPGのマリオシリーズでは、必ずしもクッパが味方で登場する訳ではない。『スーパーマリオRPG』の続編に当たる『マリオストーリー』のように、明確に宿敵として登場し、悪事を働いた作品も存在する。

 ただ、前述の『マリオ&ルイージRPG3』以降は、そんな宿敵としての登場がRPGシリーズでも定番化するようになってしまった。そもそも、2010年代に発売された新作の大半は、悪役としての出演に終始している。

 なぜ、そのようになったのか?

 明らかなのは、2012年発売の『ペーパーマリオ スーパーシール』にて実施された路線変更だろう。それによって『ペーパーマリオ』シリーズはRPGから、アクションアドベンチャーへとジャンルを刷新。あわせて仲間システムが廃止されてしまった。さらに登場キャラクターも既存のマリオキャラクターたちが中心となり、オリジナルの新キャラクターの総数を大きく制限する措置も取られている。

 それによってクッパも従来の宿敵に定義されることになり、味方としての登場はなくなってしまった。まさに「ラスボスはクッパ」の体現である。

 一応、暴走状態で我を失っている、なぜか全身が黒く染まっているという工夫こそされてはいたが。しかし、伝統的な展開を踏襲するようになったのもあり、味方としてのクッパを堪能できる機会は急速に失われてしまった。

 それは路線変更もなく、RPGであり続けた『マリオ&ルイージRPG』も同様だ。2010年代に発売された『マリオ&ルイージRPG4』、『ペーパーマリオ』とのコラボレーション作品『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』の新作2作では、いずれも悪役として出演。マリオたちと敵対する立ち位置になっている。

マリオ&ルイージRPG3 DX 紹介映像

 さらに『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』以降、シリーズは過去作のリメイクを出す展開へと移行。完全な新作が発売されなくなる。

 一応、発売されたリメイク2作はクッパが味方で登場するものなのだが、いずれも元が元だけに、新たな活躍が描かれたというには際どかった。

 次の新作ではまた敵なのか、それとも味方で出るのか。動向が注視されていた中、2019年、シリーズの開発を担ってきたアルファドリームが破産。

 その後、『マリオパーティ』シリーズのように制作体制を一新して新作が発売されることもなく、2022年現在も事実上の凍結状態に陥ってしまっている。

 こうした様々な事情が重なってか、気が付けば2010年代にはクッパが味方で登場する新作はひとつも登場していない。

 特に『ペーパーマリオ』シリーズでは『スーパーシール』の次の『カラースプラッシュ』、さらには『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』と連続で大ボスを務めたことから、これからは宿敵の立場に徹させる意向のようなものが見え隠れしていた。

 それは仲間システムが存在する『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』も同様である。詳しい展開は伏せるが、この作品でもクッパは大ボスとして登場する。マリオたちの味方にはならず、従来の立場を一貫した。

 RPGどころか、他の仲間システムが存在する別のタイトルでも大ボス。もはや、クッパは全ジャンルのマリオシリーズで悪役としての立場を一貫する方向性に収まったのか……と思われても仕方がないものがあった。

 ところが、2020年代に移ってからその流れに変化が起きた。2020年発売の『ペーパーマリオ オリガミキング』にて、久しぶりに味方として登場したのである。特殊ながら、構図的に協力し合っていたオリジナル版『マリオ&ルイージRPG3』から数えると、なんと11年ぶり。『ペーパーマリオ』シリーズに限れば、13年ぶりの味方としての登場だった。

 肝心の中身も、味方の設定だからこその展開や体験が設けられたものに完成されている。出番こそ少なめではあるが、決める所では決める頼もしさとカッコよさには、改めて単なる悪役ではないクッパの魅力を再認識させられたプレイヤーも少なくないかもしれない。

 そんな『ペーパーマリオ オリガミキング』が記憶に新しい中、『マリオ+ラビッツ ギャラクシーバトル』でも味方で登場するとの知らせだ。また頼もしいクッパが見れる、先の読めないストーリーが繰り広げられるかもしれないということから、期待してしまうのは自然な流れと言えるだろう。また2020年代を迎えてから、早くも次の味方で登場する作品が出てきたのも興味深い。

 現に2000年代には、味方で登場する作品が相次ぐ流れがあった。そのことから2020年代も同じ流れ、2010年代には見れなかった頼もしいクッパを体験できる機会が増すのではないのだろうか。味方としての活躍が描かれた『ペーパーマリオ オリガミキング』が大ヒットし、語り草になっている状況を思うと、かつての傾向の復活に期待してしまうのである。

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