『マリオパーティ スーパースターズ』にみる「パーティゲーム」の決定的条件

『マリパ』新作と「パーティゲーム」の条件

 パーティゲームとは、なんだろうか。

 具体例を挙げれば、トランプやすごろく、人狼ゲームなどが思いつくだろう。あえて定義するならば「実力に関わらずゲームへの参加がかんたんで、誰にでも勝利の可能性がある程度保障されているゲーム」となるだろうか。

 では、「じゃんけん」や「ビンゴ」をパーティゲームと呼ぶだろうか。どちらも先の定義には当てはまりそうだが、これらをパーティゲームとは呼ばない。とりわけビンゴは「パーティ」でおこなわれる「ゲーム」には違いないが、パーティゲームではないだろう。

 それではパーティゲームとは何なのだろうか。

『マリオパーティ』から考える「パーティゲームが上手いやつ」

 2カ月前の10月、「マリオパーティ」シリーズ最新作『マリオパーティ スーパースターズ』がNintendo Switch専用ソフトとして発売された。シリーズ第1作の『マリオパーティ』(Nintendo 64、1998年)から歴代シリーズの要素を包摂する、これまでの集大成のような作品だ。

 同シリーズは最大4人のプレイヤーがマリオやヨッシーといったおなじみのキャラクターたちを操作して「すごろく」をおこなう「パーティゲーム」である。すごろくで言う「ゴール」には「スターマス」が設定されており、そこで手に入れられる「スター」を一番多く獲得したプレイヤーが勝者となる。ただしスターを得るには一定枚数の「コイン」を引き換えとしなければならず、このコインを集めるためにプレイヤーたちは「ミニゲーム」と呼ばれるアクション要素を取り入れた対戦やさまざまなイベントをこなしていく。

 このミニゲームこそが、同シリーズを単なる「すごろく」と差別化する最も大きな特徴であり、そして長年の人気の秘密だ。ミニゲームには、例えばタイミングに合わせてAボタンを押すことで4人のプレイヤーが大縄跳びで争う「なわなわピョンピョン」など、単純な操作ながら独特なネーミングセンス(*1)で名付けられたものが、シリーズごとに数十~100種類以上収録されている。基本的には4人のプレイヤーがバトルロイヤル形式で争うシンプルなルールが採用されるが、場合によっては「2対2」「1対3」などチームに分かれて対戦することもある。

 ただいずれの場合にしろ、基本的にはプレイヤーの操作精度がストレートに試される、(すごろくに比べれば圧倒的に)競技性を持ったイベントである(*2)。そして当然のことながら、このミニゲームに長けているプレイヤーほど「『マリオパーティ』が上手だ」ということになる。そしてそんな「『マリオパーティ』が上手い人たち」にとってうってつけなゲームモードが、今作では実装された。

 それがミニゲームのランクマッチである。今作では、オンラインで見知らぬプレイヤーとの対戦が可能となり、その勝率が高まれば高まるほど自身の「ランク」が上昇していく。要するに、かつてはなんとなく単に「『マリオパーティ』が上手いやつ」と認められていたプレイヤーたち(たいていの場合ほかのゲームも上手い)の実力が、可視化されるわけだ。

 もちろん、あくまでも同シリーズのメインモードは「すごろく」であるため、ミニゲームが上手いからといってそれがただちに勝利に結びつくわけではない。しかし、ミニゲームでの勝率がある程度「すごろく」の勝率に関わっていることは確かである。

 このように、いわば「運ゲー」としてのすごろくと「競技」としてのミニゲームがはっきりと二分されていることもまた、同シリーズの大きな特徴である。

 というよりも、そうした「運ゲー」要素と「競技」要素の混在こそが、「パーティゲーム」を最も特徴づける要素の一つなのかもしれない。例えば「人狼系ゲーム」において相手の発言の論理的矛盾を指摘するための思考力は実力でカバーできる部分であるが、「なんとなく気にくわないから」という理由でたまたま自身が「処刑」されることは珍しくない。あるいはUNOをプレイしているときに、あるカードをいつまで持ち続けるかといった判断には実力が反映されるかもしれないが、山札の順番だけはどうしようもない「運ゲー」である。一般的に「パーティゲーム」と呼ばれるゲーム群には、こうした「運ゲー」と「競技」の混在がみられないだろうか。

 そうであるならば、「運ゲー」でしかない(実力を反映させる場面がまったくと言っていいほど存在しない)じゃんけんやビンゴが、パーティゲームには当てはまらないことにも納得できるだろう。逆に、ほぼ平等な「競技」である(運要素がほぼ介在しない)格ゲーや近代スポーツ、将棋やチェスなどのボードゲームをパーティゲームと呼ぶこともまた、ない。

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