懐かしのデスクトップ画面で飛んで跳ねて…『MainFrames』はITリテラシー(初級)が身につくアクションパズルだ

わたしたちはフロッピーを知っている。しかしフロッピーくん自身は自分が何者か知らない。これはフロッピーくんが世界崩壊の危機に立ち向かう、「保存マーク」誕生の物語である。
『MainFrames』はパソコンの中が舞台のアクションパズルだ。デスクトップ画面のウィンドウを足場に見立てて飛び跳ねつつ、その足場となるウィンドウも操作してステージクリアを目指す。トレーラーで目にしたとおり、プレイヤーのITリテラシーを試してくるのが面白い。
本作の魅力はなんといってもパソコンに関する“懐かしコンテンツ”だ。30年前のWindows 95を思い出させるパソコン画面にほほが緩む。べったりついた指紋や映り込んだ室内でブラウン管モニターの雰囲気を出したのもいい。DOS/Vマシンが普及しだした時代を覚えているなら本作の対象年齢だ。その点においてアラフィフ向けゲームといえる。

ならばこそ、パソコンに苦手意識を抱くゲーマーにも本作をおすすめしたい。当時を体験した人がノスタルジーにひたれるほど、パソコンの操作や歴史をアクションゲームとして楽しめるからだ。遊ぶだけでITリテラシー(初級編)が身につくと請け合おう。
仕事ができるデスクトップ画面の作り方
『MainFrame』は主人公とステージを同時に操作する、クセが強いアクションパズルを直感的に遊べるよう工夫した。「デスクトップ画面の操作法」を知っていれば何となく答えが思いつく、既視感めいた体験が心地よい。ステージを踏破できるように足場を作る。これが「仕事しやすいデスクトップ画面を作る」につながるのだ。

プレイヤーは主人公フロッピーくんを操作し、ウィンドウ内の足場を飛び渡ってステージクリアを目指す。空中ダッシュ・壁つかまり・崖のぼりなど、基本操作に慣れたところで「カーソル」が登場する。デスクトップ画面で動かす、あの矢印アイコンだ。ジャンプが届かない場所でも、カーソルがあればウィンドウを動かして足場にできる。

ウィンドウ移動があるということは、他のウィンドウ操作も当然ある。ウィンドウサイズの変更。アクティヴウィンドウ。ウィンドウのタブ切り替え。ウィンドウ操作そのものは簡単だが、ジャンプアクションを同時にこなすステージでは「デスクトップ画面がゲームになった」感がグッと増す。主人公とステージの操作に変調を加えたミニゲームが多数あるのも好感だ。ひらめきのバリエーションが多彩で遊びごたえがある。

ステージ攻略の要点は「どのウィンドウで何をするか」だ。この考えはWindowsやMac OSのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を習得するのにとても役立つ。本作をクリアするころにはパソコンへの苦手意識を克服できているだろう。「あれ? あのアイコンどこにいった?」の答えをゲームとして楽しめば、もう、デスクトップ画面に尻ごむことはない。
パソコンにワクワクした時代の追体験
これは筆者の経験談だが、ITリテラシーが低い職場でパソコン係を担当すると「どこでパソコンを学んだの?」と聞かれる。前職で身につけた。学校で覚えた。体裁がよい答えは複数あるが、本当の答えは「学んだのではなく遊んだ」だ。そう、あのころのデスクトップ画面は楽しいものだった。

デスクトップ画面がステージの『MainFrames』では、物語もパソコンの中身で繰り広げられる。パソコンの中に小人が住んでいるなら、その小人たちはパソコンをどう見ているだろうか。デジタル世界のファンタジーにちりばめた、パソコンあるあるが笑いを誘う。

初心者向けのネタがモチーフのミニゲームにはクスリとさせられる。アテにならない天気予報や、ボリュームのつまみがわからないスピーカーなど、誰もが体験した内容であろう。一方、中級者向けネタはゲーム世界のフレーバー程度にとどめてある。パソコンの住人はデモン(Daemon)という種族で、カーネル役にペンギンが登場し、OSがLinuxだと匂わせてからWindows 3.1起動音(ジャジャーン!)が出たのは笑えた。――笑いどころがわからなくても支障がないストーリーなので安心されたし。

フロッピーくんはさまざまなパソコンを渡り歩き、パソコンの世界がいかに生まれたか、住人にはそれぞれ役目があると知る。ならば、自分には何ができるだろうか。自分は何のために生まれてきたのだろうか。フロッピーくんが抱く自問はクライマックスで昇華し、プレイヤー自身もプレイヤーの役目を知ることになる。ゲームを終えたあとに「現代のパソコン」へ戻ると、変わったものと変わらないものに気付くかもしれない。

デスクトップ画面の操作を楽しみ、パソコンの歴史に思いを馳せる。パソコンをゲームとして遊ぶ。そこが『MainFrames』の推しポイントだ。解きごたえがあるアクションパズルと心温まるストーリー、そしてパソコンに触る楽しさを3時間程度のボリュームに詰め込んだ。エンディングまで遊びきったなら、もうデスクトップ画面は怖くない。
速さを求め、ディテールにこだわる18年ぶり新作『首都高バトル』 早期アクセス版に見る“走りの原点”とは?
『首都高バトル』が早期アクセスを1月23日に開始。初日には同時接続プレイヤー14000人を突破し注目度と話題性の出だしは好調だが…