「スーパーマリオとスポーツゲームの歴史」 遊びやすさとマリオらしさを両立させた約40年の歩み

マリオとスポーツゲームの歴史

 4月15日にNintendo Switch Online(サブスクサービス)加入者向けに配信予定の『マリオゴルフ64』をご存知だろうか。タイトル名の通り、こちらは任天堂が世界に誇る人気キャラクター「マリオ」を冠するスポーツゲームである。本作はマリオ・ルイージ・ピーチ・ヨッシーなどのマリオファミリーがゴルフクラブを片手にベストスコアを競い合うわけだが、こうして振り返ってみると、マリオ関連のスポーツゲームの意外な多さに驚かされた次第だ。

 ゴルフをはじめ、テニスやサッカーに野球、はたまたストリートバスケなど、有名どころはおおよそ手をつけているようにも思えるマリオファミリーたち。そこで今回は、任天堂がこれまでに手掛けてきたマリオ関連のスポーツゲーム(マリオ系スポーツゲーム)にフォーカス。ファミコン時代にまでさかのぼり、ルーツとなったタイトル及びほかタイトルと一線を画す“マリオらしさ”について掘り下げていく。

前期:ベーシックなスポーツゲームとして産声を上げる

 まずはファミコン時代のマリオ系スポーツゲームについて見ていこう。任天堂のスポーツゲームに初めてマリオが出演したのは『テニス』。と言っても選手側ではなく、プレイヤー及びCPUのプレイをコート側で見守る審判として登場していた。外見も白のオーバーオールとキャップという、いかにも審判らしいルックスなのがポイント。特定の台詞などもなく、プレイヤーの得点やペナルティに合わせて声をかける(吹き出し)というモブキャラクターに過ぎなかった。

TENNIS(FC版)
TENNIS(FC版)

 そこから約3年後、ファミコンのディスクシステム向けに発売された『ゴルフJAPANコース』にて、マリオはゴルファー(プレイヤーキャラクター)としてデビューを果たす。こちらの作品は任天堂の『ゴルフ』を踏襲したシステムを採用しており、1P側はマリオ、2P側はルイージを使うことができた。また、ユーザーインターフェースおよびビジュアルデザインを大きく刷新した次作『ゴルフUSコース』でも同様、マリオとルイージがメインキャラクターに抜擢されている。

 2作のゴルフゲーム発売後、任天堂はついにマリオの名を冠したスポーツゲーム『マリオオープンゴルフ』(ファミコン)をリリース。前作に引き続きマリオ&ルイージが主役に選ばれているほか、彼らを支えるキャディー役として、ひっきりなしにさらわれることでお馴染みの「ピーチ」、ゲームボーイ用ソフト『スーパーマリオランド』からのニューヒロイン(当時)である「デイジー」が登場した。

 とは言え、際立ったキャラ付けも皆無に等しく、全体的な作りはまだまだ普通のゴルフゲームという印象。現在のマリオ系スポーツゲームのように発展していったのは、1990年代の後半からだった。

任天堂公式HPより

中期:遊びやすさの追求とマリオらしさの確立

 オーソドックスな内容に留まっていたマリオ系スポーツゲームも、1990年代の後半に差し掛かると大きな変化を迎える。その前兆とも言えるのが、バーチャルボーイ用ソフト『マリオズテニス』だ。こちらはマリオを冠したテニスゲーム、かつ『スーパーマリオカート』に参戦したマリオファミリー(クッパ以外)が使える作品だったものの、バーチャルボーイが思うように普及しなかったのか、ファミコン時代のゴルフゲームと比べると売上は芳しくなかったようだ。

 しかし、題材を再びゴルフへと戻した任天堂は1999年、本格的なマリオ系スポーツゲームの原点『マリオゴルフ64』を開発する。登場キャラクターが大幅に増えたのは冒頭でも触れた通りだが、操作方法、ゲーム内グラフィック、さらには収録コース等がNINTENDO64(当時の現行ハード)に合わせて格段に進化しており、キャラクター数の増加に合わせて能力面もしっかり差別化。荒削りな部分も見られたが、マリオ系作品の世界観を生かした”らしさ”の確立に繋がった。

任天堂公式HPより

 翌年に出た『マリオテニス64』では、登場キャラクターがすべてマリオ系作品の出演者(ワルイージの初登場タイトル!)となったほか、「マリオカート」シリーズでお馴染みのアイテムボックスを活用したミニゲームモードも実装されている。このように出演キャラクターの顔ぶれや作中の収録コースを見ると、マリオ系スポーツゲームは2000年代に入って転換期&成長期を迎えたようだ。ちなみに「マリオゴルフ」および「マリオテニス」シリーズは、その人気の高さを裏付けるかの如く、現時点で20近いタイトルがリリースされている。

 個人的に興味深く感じたのは、2000年以降のマリオ系スポーツゲームでよく見られる各キャラクターの”必殺技”。上記動画は『マリオテニスGC』のスペシャルショット集だが、「巨大ハンマーでボールを打ち返す」(マリオ)、「タル大砲から飛び出してボールにぶち当たる」(ドンキー)……など、ベーシックなショットの打ち分けに留まらず、マリオファミリーの面々がそれぞれの特性に応じた必殺技を使えるようになったのだ。

 『スーパーマリオストライカーズ』(サッカー)や『スーパーマリオスタジアム』(野球)でも同様、戦況をひっくり返す&優位をさらに築くための必殺技がゲームシステムとして組み込まれている。こうした仕様に並び、初心者(そのスポーツに詳しくない)やライトユーザーでもとっつきやすいゲームシステムの追求、ストイックとカジュアルの両立が、この時代の目立った特徴と言えるだろう。

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