ポリゴン・ピクチュアズ 塩田周三代表に聞く、コロナ時代の新しいワークフローとアニメ業界の今後

ポリゴン・ピクチュアズ 塩田周三代表に聞く、コロナ時代の新しいワークフローとアニメ業界の今後

 各業界のキーパーソンに“アフターコロナ”に向けての見通しを聞く、特集「コロナ以降のカルチャー テクノロジーはエンタメを救えるか」。第4弾は、『シドニアの騎士』や『空挺ドラゴンズ』などの3DCGアニメ作品で知られるポリゴン・ピクチュアズの代表、塩田周三氏へのインタビューをお届けする。

 ポリゴン・ピクチュアズでは、4月8日から全社員リモートワークを実施。全作業工程をワンフロアに集約し、緊密なコミュニケーションをはかる体制での製作を特色としていたポリゴン・ピクチュアズは、この未曾有の状況にいかに対応したのか。同社代表の塩田周三氏に、リモートワークでの生産性、新しいワークフローの実現、そしてアニメ業界の今後などについて話を聞いた。(杉本穂高)

リモートワークで生産性はどう変化した?

ーー4月8日から全社員のリモートワークを実施されていますが、生産性はどのように変化しましたか。

塩田周三(以下、塩田):僕のところに届いている数字では、平均して70〜80%の生産性を実現できています。あくまで平均値なので、職種やプロジェクトによっても異なりますし、中にはオフィス勤務の時と比べて100%を超えている人もいれば、70%に達していない人もいます。

 弊社は以前から、より多様な働き方を支えられるワークフローの設計を進めていて、今年中にロールアウトしようと思っていた矢先にコロナウイルスの感染拡大で全社員リモートワークに突入することになりました。我々のようなデータインテンシブな作業をする業態で、一斉に300人近いスタッフがリモートワークになることは想定していなかったので、これだけの生産性が出せたことは良い意味での驚きでした。我々のような制作ビジネスで20%の効率ダウンは業績に対して決して小さくない影響ですが、一方この状況下でもきちんと仕事ができるのは感謝しています。

ーー職種ごとに生産性のバラつきがあるとのことですが、100%を超えているのはどの部署なのですか。

塩田:100%と言いましたが、生産性をはかる上で100%を超える数値を測定する術を現在持ちあわせていなく、まだ模索段階なのであくまで感覚値です。リモートワークで仕事がはかどっているのは主に研究開発部門ですね。

 しかし、その要因も色々あって、ある部門の生産性が100%超えることが絶対的に良いことかというと必ずしもそうではありません。例えば、弊社のオフィスは全ての作業工程をワンフロアに集約しており、ちょっと問題があればすぐにコンタクトを取れるようにしているわけです。しかし、今は物理的に離れてしまっていますから、すぐに質問に行けません。これが管理者や前後の工程とのやり取りが多い人にとっては厳しい状況なわけです。逆にそうやって質問に時間を取られることがないから生産性が上がった人もいるので、今後はここで発見できた課題やメリットをしっかり業務に活かしていきたいと思います。

ーー新しいワークフロー開発のために前々から準備していたものが、今回力を発揮してくれたような感じでしょうか。

塩田:そうですね。本来なら、もう少し余裕を持って出す予定だったものを早めないといけなくなったわけですから、本当にシステム部が頑張ってくれました。僕の独断で、いきなり全員リモートでやるなんて判断は絶対にできなかったです。

 ーーCG会社は、扱うデータ量も大きいと思いますが、トラフィックに関して大きな問題も起きていないのでしょうか。

塩田:データの圧縮技術が相当進化していますので、今回のことが2020年に起きたことは救いになったと思います。相変わらずマシンの計算力は必要ですが、会社のワークステーションにリモートでアクセスして計算させ、その差分を自宅のPCに送るという形で、ほとんどレイテンシーなく、セキュリティも担保できる体制を整えました。実際300人が一斉にぶら下がっても大したデータ量じゃなかったんですよ。一時期のピークでも数百メガくらいだなんて、数年前では考えられなかったことです。

 それよりもパフォーマンスに影響するのは、各アーティストの自宅のネット環境です。日本は幸いにも一般家庭のネット環境は良い方ですが、それでも集合住宅やシェアハウスに住んでいる人だと、時間帯によって作業スピードが落ちることがありました。

ーー平均70〜80%の生産性は、慣れてきたらもっと向上する手応えはありますか。あるいは全員リモートではこれ以上は難しいという感触でしょうか。

塩田:それは細かい分析をしてみないとわかりません。技術的な問題でこれ以上生産性があがらない部門もあるでしょうし、逆にもっと上げられる部門もあると思います。僕らとしては、せっかくここで壮大な実験をさせてもらったので、追求しがいのある新しい働き方については、セキュリティを担保しながらやっていこうと思っています。

 幸運なことに今までで最大の仕事のバックログを持ちながら今年を迎えることができたのですが、仕事の量に対して業務スペースが足りず、会議室をいくつか潰して作業スペースにすることも考えていたんです。しかし、一部リモートでできることがわかったので、リモートと物理的なオフィスを併用しながら、多様な働き方でアーティストのリソースを活かしていきたいと思っています。

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